RSI(Relative Strength Index)は「買われすぎ・売られすぎ」を測る代表的なオシレーターです。ただ、RSIを30/70だけで判断すると、強いトレンド相場で延々と逆張りして焼かれます。そこで役に立つのがRSIのダイバージェンス(価格とRSIのズレ)です。これは「勢いの鈍化」を可視化できる一方、単体で売買するとだましが多いのも事実です。
この記事では、RSIダイバージェンスを“エントリーの合図”ではなく「警戒アラート」→「確認」→「実行」の3段階で扱い、初心者でも再現しやすい形に落とし込みます。株・FX・暗号資産など市場を問わず使える考え方ですが、例は理解しやすいようにローソク足の一般的な前提で説明します。
- RSIダイバージェンスとは何か:価格の更新と勢いの更新が食い違う状態
- RSIがなぜズレるのか:勢い(モメンタム)と価格は同時にピークにならない
- だましを減らす最重要ポイントは「場所」:どこで出たダイバージェンスか
- 初心者がやりがちな失敗:ダイバージェンス=即逆張りで損切り貧乏
- 実戦の基本設計:アラート→確認→実行の3ステップ
- 具体例で理解する:ベアリッシュ・ダイバージェンスの典型パターン
- 具体例で理解する:ブルリッシュ・ダイバージェンスの典型パターン
- マルチタイムフレーム(MTF)で精度が跳ねる:上位足に逆らわない
- RSIの設定は何が良いか:14期間をベースに、目的で微調整
- “だまし”の正体:ダイバージェンスが効かない3つの局面
- 資金管理を先に決める:ダイバージェンスは勝率より損失制御が命
- 検出のコツ:目視で迷わないための「2点比較」ルール
- (応用)出来高・ローソク足と組み合わせる:機関の出入りを想定する
- MQL4での検出ロジック例:ダイバージェンス候補をアラート表示する
- 検証のやり方:いきなりバックテスト最適化に走らない
- 今日から使えるチェックリスト:これを満たさないなら見送る
- まとめ:RSIダイバージェンスは「反転の予言」ではなく「優位性の芽」を拾う道具
RSIダイバージェンスとは何か:価格の更新と勢いの更新が食い違う状態
ダイバージェンスは「価格が高値(安値)を更新しているのに、RSIが更新しない」またはその逆の状態です。重要なのは、これは“反転が確定した”ではなく“反転しやすい状態に入った”という意味しか持たないことです。つまり、ダイバージェンスは予兆であり、確定シグナルではありません。
代表的な2種類(まずはこれだけ覚えれば十分)
ベアリッシュ・ダイバージェンス(下落転換の予兆):価格は高値更新(Higher High)なのに、RSIは高値を切り下げ(Lower High)。上昇の勢いが弱っている可能性。
ブルリッシュ・ダイバージェンス(上昇転換の予兆):価格は安値更新(Lower Low)なのに、RSIは安値を切り上げ(Higher Low)。下落の勢いが弱っている可能性。
「隠れ(Hidden)ダイバージェンス」はいったん忘れていい
隠れダイバージェンスは“トレンド継続”寄りの概念で、初心者が扱うとルールが複雑化します。まずは上の2種類を、だましを減らす条件とセットで使えるようにする方が勝率が上がります。
RSIがなぜズレるのか:勢い(モメンタム)と価格は同時にピークにならない
価格は最後の買い(売り)で一段伸びることがあります。しかしそのとき、買い手(売り手)の“勢い”はすでに落ちている場合が多い。RSIはその勢いの衰えを先に映すため、価格が高値更新してもRSIがついてこない、というズレが生まれます。
ただし、強いトレンド相場では「勢いが落ちてもトレンドが続く」ことが普通にあります。だからこそ、ダイバージェンスは単体で逆張りせず、“どこで起きているか(場所)”と“何が確定したか(確認)”が必要です。
だましを減らす最重要ポイントは「場所」:どこで出たダイバージェンスか
同じダイバージェンスでも、機能する場面と機能しない場面があります。初心者が最初に押さえるべきは、次の3つの「場所フィルター」です。
1)レジスタンス・サポート(水平ライン)付近
直近の戻り高値、過去に何度も止められた高値、レンジ上限など、水平ライン付近のベアリッシュ・ダイバージェンスは比較的信頼度が上がります。理由はシンプルで、そこには売り注文(利確・新規ショート)が溜まりやすいからです。
逆に、何もない空中で出たダイバージェンスは、ただのノイズになりやすい。まずは「価格が止まりやすい場所で出たか」をチェックしてください。
2)トレンドライン・チャネル上限/下限
上昇チャネルの上限でベアリッシュ、下降チャネルの下限でブルリッシュが出ると、“伸び切った場所”を示しやすく、反転や調整に繋がりやすいです。特に、チャネル上限で上ヒゲが連発するなど、ローソク足が拒否反応を見せていると信頼度が上がります。
3)ボラティリティの拡大後(急伸・急落の終盤)
急伸・急落の終盤は、短期勢の追随で値幅が出やすい一方、最後は燃え尽きやすい。そこでダイバージェンスが出ると、反転や“いったんの巻き戻し”が起きやすいです。ここで重要なのは、「急伸したから売る」ではなく「急伸の終盤で勢いが落ちたことを確認してから」にすることです。
初心者がやりがちな失敗:ダイバージェンス=即逆張りで損切り貧乏
典型的な失敗はこれです。
(1)高値更新 → (2)RSIがついてこない → (3)すぐ売る → (4)もう一段上がる → (5)損切り → (6)その後下がる
なぜこうなるか。ダイバージェンスは「勢いの鈍化」を示すだけで、“売り手が勝った”ことを示していないからです。売り手が勝ったことを確認するには、価格側のサイン(構造の崩れ)が必要になります。
実戦の基本設計:アラート→確認→実行の3ステップ
ステップ1:アラート(候補抽出)
ダイバージェンスは「そろそろ転換があり得る」という警戒です。ここではエントリーしません。候補としてチェックリストに載せます。
ステップ2:確認(構造の崩れを待つ)
ここが最重要です。初心者は“待てない”ことで負けます。確認に使える代表例は次の通りです。
・直近安値/高値のブレイク:ベアリッシュなら直近の押し安値を割る、ブルリッシュなら直近戻り高値を超える。価格の構造が変わったことを確認できます。
・移動平均(例:20EMA)を明確に割る/超える:トレンドのテンポが変わったサインとして使えます。ただし横ばい相場では機能しにくいので、MAが傾いている局面で使う方が良いです。
・ローソク足の反転パターン:包み足、長いヒゲ、はらみからの反転など。“拒否”が明確に出たものを採用します。小さいヒゲを過大評価しないこと。
ステップ3:実行(損切り位置が明確な形で入る)
確認が取れたら、エントリーは「損切りが置ける」形に限定します。損切りの基本は、ベアリッシュなら直近高値の少し上、ブルリッシュなら直近安値の少し下です。ここが曖昧だと、結局“お祈りトレード”になります。
具体例で理解する:ベアリッシュ・ダイバージェンスの典型パターン
状況:上昇トレンド中、価格が高値A→押し→高値B(Aより上)を作った。RSIはAのときのピークよりBのピークが低い。
この時点では売りません。次に見るのは「押し安値」を割るかどうかです。押し安値を割って、戻りが弱く、再度下を試すようなら、初めて“売りの優位性”が出ます。
エントリー例:
・条件:押し安値割れ(確認)+戻りが20EMAに抑えられる(再確認)
・エントリー:戻りで売り(成行でも可だが、初心者は指値で引きつける方がブレにくい)
・損切り:高値Bの少し上
・利確:直近の支持帯、またはリスクリワード1:1.5~2を目安。欲張って“底”を当てにいかない。
具体例で理解する:ブルリッシュ・ダイバージェンスの典型パターン
状況:下落トレンド中、安値A→戻り→安値B(Aより下)を作った。RSIはAのときの底よりBの底が高い。
ここで重要なのは「下落トレンドの継続を前提にしつつ、勢いが弱ったかもしれない」と見ることです。確認は“戻り高値を超える”または“下降トレンドラインを上抜く”など、上方向の構造変化です。
エントリー例:
・条件:戻り高値ブレイク(確認)+ブレイク後の押し目が崩れない(再確認)
・エントリー:押し目買い
・損切り:押し目の安値の少し下
・利確:直近の戻り高値、またはフィボ38.2%~61.8%など“戻りやすい帯”を目安に分割利確。
マルチタイムフレーム(MTF)で精度が跳ねる:上位足に逆らわない
初心者が勝率を上げる最短ルートは、MTFで“やらないこと”を決めることです。たとえば15分足でベアリッシュが出ても、日足が強い上昇トレンドで高値更新中なら、下げは「押し目」になりやすい。逆張りで利益を伸ばしにくいです。
おすすめの組み合わせ:
・エントリー足:15分~1時間(短期)または4時間(スイング)
・環境認識足:その4~6倍の上位足(例:1時間なら4時間、4時間なら日足)
ルール例:上位足が上昇トレンドなら、ブルリッシュ(買い方向)のダイバージェンスだけを採用し、ベアリッシュは見送る。これだけでも、逆張りの事故が激減します。
RSIの設定は何が良いか:14期間をベースに、目的で微調整
RSIの標準は14期間です。まずはこれで十分です。短期スキャルピングで反応を速くしたいなら9、スイングでノイズを減らしたいなら21を試す価値があります。ただし、期間を変えるとシグナル頻度とだましの性質が変わるので、いきなり最適化に走らず、固定して慣れることを推奨します。
また、30/70の閾値は「トレンド相場では機能しにくい」点が重要です。上昇トレンドでは40/80、下落トレンドでは20/60のように、トレンドの向きで閾値をずらす考え方もあります。ただし初心者は、まずダイバージェンス+構造確認を優先してください。閾値調整はその後です。
“だまし”の正体:ダイバージェンスが効かない3つの局面
1)ニュースでトレンドが加速している最中
材料で走っている相場は、モメンタムの鈍化が一時的に出ても、再加速します。特に時間外ニュース(決算、政策、規制、ハッキングなど)直後は、テクニカルが踏みつぶされやすい。ここでは「ダイバージェンスが出たら逆張り」ではなく、“荒い値動きが落ち着くまで触らない”が正解になることが多いです。
2)ボラが低くレンジが細い
レンジが狭いと、RSIの山谷が小さく、ズレが頻発します。頻発=有効ではありません。レンジ相場はレンジ上限下限の逆張りが基本で、ダイバージェンスは補助に留めるべきです。
3)上位足のトレンドが強すぎる
“強いトレンドは戻さない”が相場の基本です。上位足が一方向に傾いているとき、下位足のダイバージェンスは「押し目・戻り」になりやすく、反転として伸びにくい。MTFフィルターで弾くのが合理的です。
資金管理を先に決める:ダイバージェンスは勝率より損失制御が命
ダイバージェンスは「当たれば大きい」が、「外れると連敗しやすい」タイプの手法です。だから勝率の追求より、1回の損失を固定して、連敗しても致命傷にならない設計が重要です。
初心者向けの具体ルール:
・1回の損失上限:総資金の0.5%~1%以内
・同時保有の上限:相関が高い銘柄は1方向に偏らせない(例:ナスダック系を複数同時にショートしない)
・損切りの移動:含み益が出たら、建値付近まで早めに引き上げ、負けを小さくする癖をつける
これだけで、ダイバージェンスの“だまし”を受けても生き残れます。
検出のコツ:目視で迷わないための「2点比較」ルール
ダイバージェンスは、見ようと思えばどこにでも見えます。だから、ルール化が必要です。おすすめは「スイングの2点だけ」を比較する方法です。
・価格:直近のスイング高値(または安値)を2つ選ぶ
・RSI:その高値(安値)に対応するRSIの値を2つ選ぶ
ベアリッシュなら「価格は上、RSIは下」、ブルリッシュなら「価格は下、RSIは上」。この2点比較だけに限定すると、主観が減ります。
(応用)出来高・ローソク足と組み合わせる:機関の出入りを想定する
株式や一部の暗号資産取引所では出来高が参考になります。例えば高値更新局面で出来高が減っている(または上ヒゲが増える)と、買いの“押し上げ”が弱っている可能性が高い。そこにベアリッシュ・ダイバージェンスが重なると、反転や調整の確率が上がります。
FXは出来高が実需の出来高とは限らないので過信は禁物ですが、ティックボリュームでも“勢いの変化”は読みやすい場合があります。
MQL4での検出ロジック例:ダイバージェンス候補をアラート表示する
完全な自動売買にすると“だまし”で損が増えやすいので、ここでは「候補が出たら通知」する程度のシンプルな例にします。MTF確認や水平ライン判定などは、裁量の方が現実的です。
// RSI Divergence Alert (MQL4) - educational sample
#property strict
input int RSIPeriod = 14;
input int Lookback = 120; // bars to scan
input int Swing = 5; // pivot strength
input double MinRsiGap = 3.0; // minimum RSI difference
bool isPivotHigh(int i){
for(int k=1;k<=Swing;k++){
if(High[i] <= High[i-k] || High[i] <= High[i+k]) return false;
}
return true;
}
bool isPivotLow(int i){
for(int k=1;k<=Swing;k++){
if(Low[i] >= Low[i-k] || Low[i] >= Low[i+k]) return false;
}
return true;
}
int OnInit(){ return(INIT_SUCCEEDED); }
void OnTick(){
static datetime lastBarTime=0;
if(Time[0]==lastBarTime) return;
lastBarTime=Time[0];
// find last two swing highs and lows
int h1=-1,h2=-1,l1=-1,l2=-1;
for(int i=Swing+1; i<Lookback; i++){
if(h1==-1 && isPivotHigh(i)) h1=i;
else if(h1!=-1 && h2==-1 && isPivotHigh(i)) { h2=i; break; }
}
for(int i=Swing+1; i<Lookback; i++){
if(l1==-1 && isPivotLow(i)) l1=i;
else if(l1!=-1 && l2==-1 && isPivotLow(i)) { l2=i; break; }
}
if(h1!=-1 && h2!=-1){
double r1=iRSI(NULL,0,RSIPeriod,PRICE_CLOSE,h1);
double r2=iRSI(NULL,0,RSIPeriod,PRICE_CLOSE,h2);
// Bearish divergence: price HH but RSI LH
if(High[h1] > High[h2] && r1 < r2 - MinRsiGap){
Alert(Symbol(),": Bearish RSI divergence candidate (",TimeToString(Time[h1]),")");
}
}
if(l1!=-1 && l2!=-1){
double r1=iRSI(NULL,0,RSIPeriod,PRICE_CLOSE,l1);
double r2=iRSI(NULL,0,RSIPeriod,PRICE_CLOSE,l2);
// Bullish divergence: price LL but RSI HL
if(Low[l1] < Low[l2] && r1 > r2 + MinRsiGap){
Alert(Symbol(),": Bullish RSI divergence candidate (",TimeToString(Time[l1]),")");
}
}
}
ポイントは、ピボット(スイング)を固定の強さで定義して「比較点」を機械的に決めることです。目視の主観を減らし、候補抽出を自動化できます。実際の売買は、上位足の方向・ライン・ブレイク確認を入れてください。
検証のやり方:いきなりバックテスト最適化に走らない
初心者が最適化に走ると、過去にだけ合う“カーブフィット”になりがちです。まずはルールを固定し、次の順番で検証します。
1)スクショ検証(20~50例):ダイバージェンス→構造確認→エントリーが揃った例だけを集め、勝ち負けの原因を言語化する。
2)簡易統計:勝率より「平均損失」「平均利益」「最大連敗」を見る。資金管理の設計に直結します。
3)市場/時間軸の相性:同じルールでも、ボラがある通貨ペアや銘柄、時間軸によって機能が変わります。頻度が少なすぎるなら時間軸を下げる、だましが多いなら上げる、という調整が現実的です。
今日から使えるチェックリスト:これを満たさないなら見送る
・場所:水平ライン、トレンドライン、チャネル端など“止まりやすい位置”か
・上位足:上位足の方向と逆行していないか(逆行なら見送る)
・確認:直近の構造ブレイク、MA割れ/超え、明確な反転足などが出たか
・損切り:論理的に置ける位置があるか(ないなら入らない)
・R/R:最低でも1:1.5程度が見込めるか(無理なら見送る)
このチェックリストを徹底するだけで、“ダイバージェンスで逆張りして消耗する”状態から抜けやすくなります。
まとめ:RSIダイバージェンスは「反転の予言」ではなく「優位性の芽」を拾う道具
RSIダイバージェンスは、トレンドの終盤や転換点で強力なヒントになります。一方で、単体ではだましが多い。だから、場所フィルター+構造の確認+損切り設計をセットにし、「アラート→確認→実行」の順で扱うのが最短で勝ちやすい運用です。
最後にもう一度強調します。ダイバージェンスは“当てにいく手法”ではありません。損失を小さく固定し、当たったときに伸ばす。この設計で初めて、相場の転換点を収益機会に変えられます。


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