三法連続とは何か
三法連続は、日本のローソク足分析で用いられる「トレンド継続」を示唆するパターンです。強い上昇トレンドや下降トレンドの途中で、一時的な調整をはさみながらも、最終的に元のトレンド方向へ再び大きく動く形を示します。
具体的には、次のような構成になります。
- トレンド方向への大きなローソク足(親波)
- その値幅の中に収まる小さなローソク足が複数本(調整局面)
- 再びトレンド方向へ親波と同じ向きの大きなローソク足
この「大きな足 → 小さな足が数本 → 再び大きな足」という三段構成から「三法連続」と呼ばれます。三法の「法」は、値動きの三つの段階(動き・休み・再開)と捉えると理解しやすいです。
このパターンは、株式・FX・暗号資産など、時間軸とローソク足がある市場であればどこでも応用できます。特定の銘柄に依存しない「値動きそのものの特徴」を捉えているため、汎用性が高いのが強みです。
上昇三法連続と下降三法連続の違い
三法連続には、上昇トレンド中に出る上昇三法連続と、下降トレンド中に出る下降三法連続の二種類があります。
上昇三法連続の典型パターン
上昇三法連続の基本形は次のとおりです。
- 強い上昇トレンドの途中で、長い陽線が出る(1本目)
- その陽線の高値と安値の範囲内で、小さな陰線や陽線が2〜3本程度出る(2〜4本目)
- 最後に再び長い陽線が出て、最初の陽線の高値を明確に上抜ける(5本目)
ポイントは、小さなローソク足が「最初の陽線の値幅からはみ出さない」ことです。これは、強い上昇のあとに利益確定売りや短期の逆張りが出ているものの、大きな売り圧力にはならず、あくまで「一時的な休憩」にとどまっていることを意味します。
下降三法連続の典型パターン
下降三法連続は、上昇三法連続の逆です。
- 強い下降トレンドの途中で、長い陰線が出る(1本目)
- その陰線の高値と安値の範囲内で、小さな陽線や陰線が2〜3本程度出る(2〜4本目)
- 最後に再び長い陰線が出て、最初の陰線の安値を明確に下抜ける(5本目)
こちらも、小さなローソク足が「最初の陰線の値幅からはみ出さない」ことが重要です。下落トレンドの途中で一時的な戻り買いは入るものの、本格的なトレンド転換ではなく、売り圧力が優勢なままであると解釈できます。
なぜ三法連続が機能すると考えられるのか
三法連続が投資家にとって有用なのは、「強いトレンドに乗りつつ、押し目や戻りを利用してエントリーする」タイミングを視覚的に示してくれるからです。
市場心理の観点から整理すると、次のような流れになります。
- 大きな陽線・陰線が出る:トレンド方向に強い注文が一気に集まり、多くの参加者が「方向感が出た」と認識する。
- 小さなローソク足が続く:利益確定や逆張りが出て一服するが、値動きは親波の範囲内に収まり、売り買いが拮抗した休憩時間になる。
- 再び大きな陽線・陰線が出る:休憩中に待っていたトレンドフォロー勢が一斉に参入し、元のトレンド方向に再加速する。
このように、三法連続は「強いトレンドの順張りエントリーを、比較的リスクを抑えながら狙えるポイント」を示してくれます。逆張りではなく、あくまでトレンド方向にポジションを取る前提で使うのが基本戦略です。
実際のチャートでのイメージ(株・FX・暗号資産)
ここでは、具体的な銘柄名や通貨ペア名は挙げず、あくまで一般的なイメージとして解説します。
株式市場の例
ある成長企業A社の株価が、好決算をきっかけに強い上昇トレンドを形成しているとします。決算発表直後に長い陽線が出て、その後2〜3日間は小幅な陰線やコマ足が続きます。ただし、これらの小さな足は最初の陽線の中に完全に収まっており、大きな売り崩しにはなっていません。
その後、あるニュースや需給の偏りをきっかけに再び買い注文が優勢となり、長い陽線が出て、過去数日の高値を一気に更新します。これが典型的な上昇三法連続であり、トレンドフォローのエントリーポイントとして機能しやすい場面です。
FX市場の例
主要通貨ペアBが、金融政策の方向性の違いから長期の下降トレンドに入っているとします。重要な経済指標をきっかけに長い陰線が出た後、数本の小さな陽線が現れます。この小さな戻りは、短期トレーダーのショートカバーや押し目買いによるものですが、値幅は最初の陰線の範囲内にとどまっています。
やがて新たな売り材料が出て、長い陰線が再び現れ、安値を更新します。これが下降三法連続となり、戻り売りを仕掛けるタイミングとして活用できます。
暗号資産市場の例
暗号資産Cが、市場全体のリスクオン局面で急騰しているとします。大きな陽線で上抜けした後、数本の小さな陰線・陽線が続きますが、その値動きは大陽線の値幅の中に収まっています。この間、市場参加者は「一度落ち着いたが、まだトレンドは終わっていない」と見ています。
その後、再び買いが入り、長い陽線で直近高値をブレイクすると、上昇三法連続が完成します。暗号資産のようにボラティリティの高い市場では、このような継続パターンが短時間足でも頻繁に現れます。
エントリー戦略の組み立て方
三法連続をトレードに活用する際には、「どこで入るか」「どこで切るか」をあらかじめルール化しておくことが重要です。
1. ブレイクエントリー
もっともシンプルな方法は、最後の大きなローソク足が「親波の高値(上昇三法)または安値(下降三法)」をブレイクしたことを確認してからエントリーするやり方です。
- 上昇三法連続:最終陽線の高値を上抜けたタイミング、または確定後に成行・指値で買いエントリー
- 下降三法連続:最終陰線の安値を下抜けたタイミング、または確定後に成行・指値で売りエントリー
ブレイクエントリーはダマシに巻き込まれるリスクもありますが、「トレンドが再加速していることを確認してから入る」という意味で、初心者にも分かりやすいアプローチです。
2. プルバックエントリー
もう一段、リスクリワードを意識したい場合は、ブレイク後の軽い押し目・戻りを待ってからエントリーする「プルバックエントリー」が有効です。
- 上昇三法連続:ブレイク後に、最終陽線の半値付近や、短期移動平均線までの押し目を待って買いエントリー
- 下降三法連続:ブレイク後に、最終陰線の半値付近や、短期移動平均線までの戻りを待って売りエントリー
プルバックを待つことで、エントリー価格が有利になり、損切り幅を比較的狭くできます。ただし、押し目や戻りが浅いまま一気に伸びてしまうケースでは、エントリーチャンスを逃すこともあるため、「ブレイクで半分、プルバックで半分」といった分割エントリーも選択肢です。
損切り・利確・ポジションサイズの考え方
どれだけ優れたパターンでも、損失を完全に避けることはできません。三法連続も例外ではないため、あらかじめ損切りと利確のルールを明確にしておく必要があります。
損切りの目安
- 上昇三法連続:最終陽線の安値、もしくは親波の安値を明確に割り込んだら損切り
- 下降三法連続:最終陰線の高値、もしくは親波の高値を明確に超えたら損切り
損切り位置は、チャートパターンとして「成立が崩れた」と判断できるレベルに置くことが重要です。あまり近すぎるとノイズで刈られやすく、遠すぎると1回の損失が大きくなりすぎます。
利確の目安
利確については、次のような考え方が実務的です。
- リスクリワード比を1:2以上に設定し、到達したら一部または全部を利確
- 過去の高値・安値、明確なサポート・レジスタンス付近で分割利確
- トレーリングストップ(高値・安値更新ごとにストップを切り上げ・切り下げ)を活用
三法連続はトレンド継続を狙うパターンなので、「伸びるときはしっかり伸ばし、伸びないときは素早く切る」というメリハリが重要です。
ポジションサイズの管理
ポジションサイズは、「1回のトレードで口座資金の何%までリスクを取るか」から逆算します。例えば、1回の損失許容を口座残高の2%と決めた場合、
- エントリー価格と損切り価格の差(1単位当たりのリスク)を計算
- 口座残高の2%をその差で割ることで、取るべきロットサイズが決まる
感覚ではなく、数値ベースでポジションサイズを決めることが、長期的に資金を守りながら増やしていくうえで不可欠です。
勝率を高めるためのフィルター条件
三法連続だけに頼るのではなく、いくつかのフィルター条件を組み合わせることで、エントリー精度を高めることができます。
1. トレンドの確認(移動平均線)
単純移動平均線(SMA)や指数平滑移動平均線(EMA)を使い、次のような条件を加えると分かりやすくなります。
- 上昇三法連続:価格が中期移動平均線の上にあり、移動平均線も右上がり
- 下降三法連続:価格が中期移動平均線の下にあり、移動平均線も右下がり
こうすることで、レンジ相場でのダマシをある程度減らすことができます。
2. ボラティリティの確認(ATRなど)
平均真の値幅(ATR)などを参考に、「いつもより値動きが異常に大きすぎる・小さすぎる」場面を避けるのも一つの工夫です。極端にボラティリティが高い局面では、ストップが機能しにくく、想定以上の損失になるリスクがあります。
3. 時間帯・出来高の確認
特にFXや暗号資産では、流動性の高い時間帯(主要市場が同時に開いている時間)に絞ることで、スプレッドの拡大や急な値飛びのリスクを抑えられます。株式であれば、出来高が極端に少ない銘柄は避けるなどの基準を設けるとよいでしょう。
ダマシパターンと見極めのコツ
三法連続も万能ではなく、当然ながら「それっぽく見えて実際には機能しない」ダマシも存在します。典型的なダマシのパターンを知っておくことで、余計なトレードを減らすことができます。
1. 親波があまりに小さいパターン
最初の大きなローソク足(親波)が、実はあまり大きくなく、市場全体のボラティリティから見て平均的なサイズの場合、「強いトレンドが発生した」とは言いにくくなります。そのような場合は、三法連続としての信頼度は落ちます。
2. 調整足が親波からはみ出しているパターン
調整局面の小さなローソク足が、親波の高値や安値を明確に抜けてしまう場合、それはすでに「一旦トレンドが崩れかけている」サインかもしれません。このようなパターンは、三法連続としては扱わないほうが安全です。
3. 重要イベント直前・直後のパターン
政策金利発表や大きな経済指標の直前直後は、パターンがきれいに見えていても、ニュースによる急変動であっさり否定されることが少なくありません。重要イベント前後は、三法連続であってもトレードを控える、もしくはポジションサイズを抑えるなど、リスク管理を優先したほうがよい場面が多いです。
他のチャートパターンとの組み合わせ
三法連続は、それ単体でも有効な継続パターンですが、他のテクニカル要素と組み合わせることで、エントリーポイントの精度を高められます。
- サポート・レジスタンスライン:重要な水平ライン付近で出た三法連続は、ラインブレイクの信頼性を高める材料になり得ます。
- トレンドライン・チャネル:上昇チャネルの中での押し目、下降チャネルの中での戻りに三法連続が出ると、チャネル継続の根拠が強まります。
- オシレーター指標:RSIやストキャスティクスがトレンドフォロー向きのゾーンにいるかどうかを確認し、逆張りシグナルとぶつかる局面を避けると、無理なエントリーを減らせます。
売買ルール例のイメージ
最後に、三法連続を使ったシンプルな売買ルールのイメージを示します。実際に運用する際は、過去データを用いた検証を行い、自分の資金量や許容リスクに合わせて調整してください。
上昇三法連続・日足チャートの順張り戦略(例)
- 中期移動平均線が右上がりで、価格がその上にある銘柄・通貨を対象にする。
- 日足で上昇三法連続が出現したら、最終陽線の高値を上抜けたタイミングで買いエントリー。
- 損切りは、最終陽線の安値か、親波の安値の少し下に設定。
- 利確は、リスクリワード比1:2以上、もしくは直近のレジスタンス付近で分割利確。
- ATRなどでボラティリティが極端に高い場合や、重要イベント直前は見送り。
下降三法連続・4時間足チャートの順張り戦略(例)
- 中期移動平均線が右下がりで、価格がその下にある通貨・銘柄を対象にする。
- 4時間足で下降三法連続が出現したら、最終陰線の安値を下抜けたタイミングで売りエントリー。
- 損切りは、最終陰線の高値か、親波の高値の少し上に設定。
- 利確は、直近安値の手前、またはリスクリワード比1:2以上で分割利確。
- 流動性が極端に低い時間帯は避け、主要市場が重なる時間帯に絞る。
三法連続を使いこなすための実践ステップ
最後に、三法連続を自分の武器として定着させるためのステップを整理します。
- パターンを見分ける練習:過去チャートをスクロールしながら、上昇三法連続・下降三法連続をひたすらマーキングし、「きれいな形」と「微妙な形」の違いを自分の目で確かめる。
- 条件を言語化する:親波の長さ、調整足の本数、値幅の条件などを、自分なりのルールとして文章に落とし込む。
- 簡易バックテスト:過去チャートで、「このルールでエントリーしたらどうなっていたか」を手作業でもよいので検証し、勝率や平均リスクリワードをざっくり把握する。
- 少額での試験運用:いきなり大きなロットではなく、心理的に耐えられるごく小さなサイズで、実際の相場でルールを試す。
- 記録と振り返り:エントリー理由・損切り・利確・感情の動きをノートやシートに残し、一定期間ごとに振り返って改善点を探す。
三法連続は、派手さはないものの、きちんと定義と運用ルールを固めれば、トレンドフォロー戦略の信頼できる柱になり得るパターンです。値動きの「動き・休み・再開」というリズムを捉える感覚を養うことで、他のチャートパターンやローソク足分析にも応用が利くようになっていきます。


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