相場の天井や大きな押し目を、できるだけ「落ち着いて」捉えたいと思ったことはありませんか。RSIは代表的なオシレーターですが、そのまま使うとノイズが多く、ダマシに振り回されやすいという弱点があります。そこで有効なのが、RSIに平滑化をかけてノイズを抑えた「スムーズドRSI」です。
スムーズドRSIは、一般的なRSIと同じように「買われ過ぎ・売られ過ぎ」を示しつつ、余計なギザギザをならしてくれるため、初心者でも落ち着いてシグナルを判断しやすい指標です。株・FX・暗号資産のどの市場でも使える汎用的なツールでありながら、日本語の情報は意外と少ないです。
この記事では、スムーズドRSIの仕組みから具体的なパラメータ設定、株・FX・暗号資産での活用例、注意点まで、実際のトレードをイメージしやすい形で詳しく解説していきます。
スムーズドRSIとは何か
スムーズドRSIは、その名のとおり「平滑化されたRSI」です。ベースとなるのは通常のRSIで、一定期間の上昇幅と下落幅の平均から、相場の強弱を0〜100のレンジで表すオシレーターです。RSIそのものは非常に有名ですが、短い期間設定(例:RSI 7期間など)ではチャートの上下動に敏感に反応しすぎて、シグナルがチカチカと頻繁に点灯します。
この問題を緩和するために、RSIの値そのものに移動平均などの平滑化処理を施したものがスムーズドRSIです。基本的な考え方はシンプルで、
- 通常のRSIを計算する
- そのRSIに対して、EMA(指数平滑移動平均)やSMA(単純移動平均)をかけて滑らかにする
という二段構えになっています。あくまで「RSIの動きを整える」ための加工なので、元のRSIと同じく0〜100の範囲で推移しますが、急な上下の振れが少なくなり、トレンド方向と極端な過熱感が視覚的に把握しやすくなります。
スムーズドRSIの計算イメージとパラメータ設定
スムーズドRSIの計算式はツールによって表記が異なりますが、代表的なイメージは次のようなものです。
まず、通常のRSI(期間N)を計算します。よく使われるのはN=14ですが、短期トレードではN=7や9もよく使われます。次に、そのRSIに対してM期間の移動平均をかけます。例えば、
- RSIの期間:14
- 平滑化の期間:5
- 平滑化の種類:EMA(指数平滑移動平均)
といった組み合わせです。この場合、「RSI(14)を5期間EMAで平滑化したもの」がスムーズドRSIとなります。TradingViewなどのチャートサービスでは、インジケーター名として「Smoothed RSI」や、ユーザー作成の「RSI + MA」といったスクリプトが公開されていることもあります。
パラメータ設定のポイントは、「どこまでノイズを削りたいか」と「どのくらいのスピード感でトレードしたいか」のバランスです。短期スキャルピングで1分足・5分足を狙う場合、RSI期間も平滑化期間も短くすることで反応速度を優先します。一方、4時間足や日足でスイングトレードを行う場合は、RSI期間14〜21、平滑化期間5〜9など、やや長めに設定してダマシを減らす考え方が有効です。
スムーズドRSIが有利になる局面
スムーズドRSIが特に威力を発揮するのは、「方向感は出ているが、短期の上下動が激しい相場」です。例えば、株で急騰銘柄に乗ったあと、押し目をどこで拾うか迷う場面があります。通常のRSIだと、押し目のたびにRSIが急落・急反転し、「まだ強いのか、もう終わったのか」が判別しづらいことが多いです。
スムーズドRSIであれば、押し目の揺さぶりをある程度ならしてくれるため、
- RSIが高止まりしているうちは強い上昇トレンド継続
- RSIがゆっくりと50を割り込んでくるとトレンドが一段落
といった判断を落ち着いて行いやすくなります。特に「強いトレンド相場の押し目買い」「トレンド終盤の手仕舞い判断」には相性が良いです。
FXでも同様で、ドル円やユーロドルなど流動性の高い通貨ペアは短期的な乱高下が頻繁に起こりますが、4時間足や日足にスムーズドRSIを重ねると、「まだトレンドに乗り続けて良いのか」「一度ポジションを軽くすべきか」を判断する材料として役立ちます。
株式の押し目買いに使う具体例
ここからは具体的な使い方をイメージしやすくするために、株式の押し目買い戦略を例に解説します。仮に、日本株の成長銘柄A社が上昇トレンドに入っており、日足チャートに以下の設定を行ったとします。
- スムーズドRSI:RSI期間14、平滑化期間5(EMA)
- 価格チャートには20日移動平均線(SMA)を表示
トレードの狙いは「強いトレンドが続いている間に、20日線付近の押し目で買っていく」というイメージです。このとき、スムーズドRSIを次のように読み取ります。
- スムーズドRSIが60〜80のゾーンに滞在している間は、基本的に上昇トレンドとみなす
- 株価が20日線まで下押ししたタイミングで、スムーズドRSIが50〜60付近で反発し始めたら押し目買いの候補
- スムーズドRSIが50を明確に割って、40以下に沈み込んだまま戻らない場合はトレンド一服と判断し、ポジションを軽くする
たとえば、実際のチャートで「株価が20日線にタッチ → スムーズドRSIが55から再び上向き → 翌日陽線」といった動きが出た場面では、押し目買いとしてエントリーする根拠になります。このように、スムーズドRSIを「押し目の質」を見極めるフィルターとして使うことで、感情的なナンピンや早すぎる手仕舞いを減らす狙いがあります。
FXでトレンドフォローに使う具体例
次に、FXの4時間足チャートでの活用例を考えます。例えばドル円が中長期で上昇トレンドにあるとき、短期の押し目ごとに「どこまで戻りを許容するか」を決めるためにスムーズドRSIを使います。
設定例として、
- スムーズドRSI:RSI期間14、平滑化期間9(EMA)
- チャートには200期間移動平均線(4時間足)を表示
とします。ここでの考え方はシンプルで、
- スムーズドRSIが常に50以上で推移している間は「押し目買いゾーン」と判断
- スムーズドRSIが一時的に40台まで落ちても、すぐに50を回復するならトレンド継続とみなす
- スムーズドRSIが40を割り込み、戻ってきても50を明確に超えられない状況が続く場合は、一度トレンド終了を疑う
実際のトレードでは、「スムーズドRSIが40台から50台へ戻るタイミング」で押し目買いを検討し、損切りラインを直近安値の少し下に置く、といった運用がイメージしやすいです。4時間足という比較的落ち着いた時間軸に、平滑化されたRSIを組み合わせることで、チャートを見過ぎて疲弊することを避けつつ、トレンドに長く付き合いやすくなります。
暗号資産のボラティリティに合わせた応用
暗号資産は株やFXに比べてボラティリティが高く、通常のRSIやストキャスティクスではシグナルが出すぎてしまうことが多いです。ここでは、ビットコインを例に、日足と4時間足でスムーズドRSIを組み合わせる考え方を紹介します。
まず日足では、
- スムーズドRSI:RSI期間14、平滑化期間9(EMA)
- スムーズドRSIが60以上で推移しているかどうかで、中長期の上昇トレンドか否かを判断
次に、エントリーには4時間足を用い、
- 4時間足のスムーズドRSI(RSI期間7、平滑化期間5)
- 4時間足でスムーズドRSIが40台から50を超えるタイミングを押し目買いの候補とする
といった形で、時間軸を分けて使います。日足で「大きな流れが上向き」であることを確認し、4時間足で「スムーズドRSIが売られ過ぎゾーンから回復してきた瞬間」を狙うことで、ボラティリティの高い暗号資産市場でも、ある程度ルールベースで押し目を拾うことができます。
もちろん、暗号資産はニュースや市場心理で短時間に大きく動くため、スムーズドRSIだけに依存するのではなく、出来高やサポート・レジスタンスラインと組み合わせて判断することが重要です。
スムーズドRSIとダイバージェンスの組み合わせ
スムーズドRSIはトレンドの勢いを滑らかに見せてくれるため、「ダイバージェンス」を見つける際にも使いやすいです。ダイバージェンスとは、価格が高値更新を続けているのに、オシレーターは高値を切り下げているような状態を指し、トレンドの勢いが弱まっているサインとして知られています。
通常のRSIでもダイバージェンスは確認できますが、ノイズが多いと小さなギザギザに目を奪われてしまい、明確なパターンを見逃すことがあります。スムーズドRSIであれば、
- 価格は高値更新をしているものの、スムーズドRSIは80 → 75 → 70と高値を切り下げている
- 価格は安値更新を続けているのに、スムーズドRSIは20 → 25 → 30と安値を切り上げている
といった形が視覚的にわかりやすくなります。これを利用し、
- 上昇トレンド中の弱気ダイバージェンス → 利確やポジション縮小のサイン
- 下降トレンド中の強気ダイバージェンス → 逆張りを狙うきっかけ
として活用できます。ただし、ダイバージェンスはあくまで「勢いの変化の兆し」であり、必ずトレンド転換するとは限りません。価格がトレンドラインや重要なレジスタンスに近づいているかどうか、出来高がどう変化しているかなど、他の要素と組み合わせて判断することが重要です。
よくある失敗パターンとスムーズドRSIの使い方のコツ
スムーズドRSIは便利な指標ですが、使い方を間違えると期待した効果が得られません。よくある失敗パターンとして、
- スムーズドRSIが70を超えたからといって、自動的に「売り」と決めつけてしまう
- スムーズドRSIが30を割れたからといって、ひたすら逆張りで買い向かってしまう
- トレンドの有無を確認せず、レンジ相場とトレンド相場で同じルールを使ってしまう
といったものがあります。スムーズドRSIは、トレンドがある程度続いている局面では、70〜80の高いレベルに張り付いたまま推移することも珍しくありません。そのようなときに「70超え=即売り」と考えると、強いトレンドの序盤で売ってしまい、伸びしろを逃す原因になります。
コツとしては、
- まず移動平均線(例:50日線や200日線)などで、大まかなトレンド方向を確認する
- トレンド方向に沿った押し目・戻りをスムーズドRSIで探す(順張りの方向性を優先)
- ダイバージェンスは「ポジション調整のきっかけ」として使い、1本のシグナルだけで逆張り全力エントリーをしない
といった点を意識すると、無理な逆張りを減らしやすくなります。特に初心者のうちは、「トレンドの方向」と「スムーズドRSIの位置」の2つをセットで見る癖をつけると、感情に流されにくくなります。
シンプルな売買ルールの例
最後に、スムーズドRSIを使ったシンプルな売買ルールの例を示します。ここでは株式の日足チャートを想定し、長期トレンドに逆らわない押し目買い戦略を考えます。
設定
- スムーズドRSI:RSI期間14、平滑化期間5(EMA)
- 50日移動平均線(SMA)
買いルール
- 株価が50日移動平均線より上で推移している
- スムーズドRSIが一度50を割り込んだあと、再び50を上抜けたときに買いエントリー
- 損切りは直近安値の少し下に設定する
利確・手仕舞いルール
- スムーズドRSIが70〜80のゾーンから下向きに転じたら、ポジションの一部を利確
- スムーズドRSIが50を明確に割り込み、しばらく戻ってこない場合は残りも手仕舞い
このようなシンプルなルールでも、感覚任せで「そろそろ天井かもしれない」と売買するより、はるかにブレが減ります。重要なのは、このルールをそのまま正解とみなすのではなく、自分が扱う銘柄や時間軸に合わせてRSI期間や平滑化期間、利確幅・損切り幅を調整していくことです。
まとめ:スムーズドRSIは「落ち着いて相場を見る」ための補助線
スムーズドRSIは、通常のRSIに平滑化を加えることで、ノイズを減らしつつ相場の強弱を把握しやすくするインジケーターです。株・FX・暗号資産といったあらゆる市場で使うことができ、特に次のような場面で役立ちます。
- 強いトレンド相場で、押し目買い・戻り売りのタイミングを見極めたいとき
- ダイバージェンスを使って、トレンドの勢いの変化を穏やかに捉えたいとき
- 通常のRSIやストキャスティクスではシグナルが出すぎて疲れてしまったとき
一方で、スムーズドRSIだけですべてが判断できるわけではありません。移動平均線やサポート・レジスタンス、出来高など、他の情報と組み合わせて「総合的に」判断することが大切です。
まずは、自分がよく見る時間軸(例:株の日足、FXの4時間足、暗号資産の日足など)にスムーズドRSIを表示し、過去チャートで「どのような局面で有効に機能していたか」を確認してみてください。そのうえで、自分なりのルールを少しずつ整えていくことで、感情に振り回されにくいトレードスタイルに近づいていけます。


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