出来高ドリブン売買:VWAP・OBV・ボリュームプロファイルで掴む“負けにくい”エントリー

テクニカル分析

価格は気まぐれに見えますが、出来高は常に正直です。この記事では、仮想通貨・FX・株に共通する「出来高ドリブン」の売買設計を、VWAPOBVボリュームプロファイルの3本柱で組み立てます。単なる用語解説ではなく、具体的なエントリー/イグジット規則、執行手順、期待値計算、バックテスト手順まで落とし込みます。

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出来高が効く理由:流動性とインパクトコスト

相場が「動く」には約定が必要です。約定には相手方の流動性が必要で、流動性が薄い価格帯では少量の成行でも価格インパクトが大きくなります。
出来高は、どの価格帯に参加者が密集し、どの方向に圧力が加わったのかの痕跡です。価格だけでは読めない圧力の持続性が、出来高の偏りから推定できます。

現物・先物・FX:出来高データの前提差を理解する

現物・先物(取引所)

現物や先物は取引所ごとに出来高が確定します。暗号資産は取引所分散のため、出来高は取引所依存であり、総合判断には複数所の情報やインデックスを参照します。

FX(店頭・OTC)

多くのFXチャートが使うのはティックボリューム(価格更新回数)です。実出来高ではありませんが、相関は高いとされ、戦略構築は可能です。

指標①:VWAP(出来高加重平均価格)

VWAPは、ある期間における「総取引金額/総出来数量」。機関投資家の執行ベンチマークとして広く使われます。
価格がVWAPより大きく乖離すると、平均回帰圧力または遅延追随のどちらかが働きやすくなります。

VWAP回帰ショート(逆張り)の一例

  1. 時間足:5分または15分。セッションVWAP(当日)を採用。
  2. トリガー:価格がVWAPから+1.5〜2.0σ超乖離(σはVWAPバンドの標準偏差)。
  3. 確認:直近3本で出来高がピークアウト(減速)。長い上ヒゲが望ましい。
  4. エントリー:次足の戻りで指値ショート。永続先物なら調達金利が正(ロング優勢)時に優位性が上がる傾向。
  5. 損切り:直近高値の上に固定幅(ATR0.5〜0.8)。
  6. 利確:VWAPタッチで50%利食い、残りはVWAP-1σまで。

VWAPトレンドフォロー(順張り)の一例

  1. トリガー:出来高拡大を伴うVWAP上抜け(上昇)/下抜け(下落)。
  2. エントリー:VWAPへの戻り(プルバック)を待ち、反発/反落の初動で。
  3. 損切り:VWAPの反対側に抜けたら即時撤退。
  4. 利確:直近の高出来高帯(後述:HVN)または直近高値/安値。

指標②:OBV(On-Balance Volume)

OBVは「上昇足の出来高を加算、下落足の出来高を減算」して累積する指標です。価格の高値更新に対し、OBVが高値更新できなければダイバージェンス(勢いの鈍化)を示唆します。

OBVダイバージェンス逆張り

  1. 設定:時間足は15分〜1時間。ノイズを減らすため平滑化(MA)を重ねてもよい。
  2. トリガー:価格は高値更新、OBVは高値更新できずに下向き。
  3. エントリー:反転足の次足で成行または浅めの指値。
  4. 損切り:直近極値の外。
  5. 利確:VWAPまたは直近の低出来高帯(LVN)まで。

指標③:ボリュームプロファイル(価格帯出来高)

一定期間における価格帯別の出来高分布を可視化したもの。
主要概念:
POC(Point of Control)=最も出来高が多い価格帯。
HVN(High Volume Node)=出来高が厚い帯。価格が留まりやすい。
LVN(Low Volume Node)=出来高が薄い溝。価格が抜けやすい。

POCリバージョン(平均回帰)

  1. 価格がPOCから±1〜2%離れ、出来高が減少している。
  2. POC方向へ回帰する押し目/戻りを待ってエントリー。
  3. 利確:POCタッチで半分、残りは反対側HVN。

LVNブレイク(モメンタム)

  1. 狭いレンジの上端/下端がLVNに重なる。
  2. 出来高急増でLVNを突破した方向へ追随。
  3. 失敗時は即撤退(LVNに再侵入で撤退)。

3指標を束ねる売買ルール(現物/先物/永続先物)

以下は「逆張り」と「順張り」を明確に分けた統合ルールです。

逆張り(平均回帰)セット

  1. 前提:トレンド弱・ボラ拡大後の失速。
  2. 条件:VWAP±1.5σ以上の乖離かつ出来高減速/上ヒゲ。プロファイルではPOC回帰余地がある。
  3. エントリー:指値(ポストオンリー)。スプレッドの狭い時間帯を選ぶ。
  4. 決済:VWAPタッチで半分、POC手前で全決済。トレーリングはATR×0.8。

順張り(モメンタム)セット

  1. 前提:イベントやブレイクで出来高急増。
  2. 条件:VWAP上抜け+出来高増、またはLVN突破。
  3. エントリー:VWAP・LVNへのプルバック待ち。
  4. 決済:直近HVN/前回高値で部分利確、残りはトレーリング。

執行(Execution):スプレッドとスリッページを最小化

期待値を削る最大要因は執行コストです。

  • 指値優先:Post-Onlyでメイカー手数料を取りに行く。板が薄い時はアイスバーグ(小口分割)。
  • 成行は条件付き:LVN突破など「速度が価値」の局面に限定。スリッページ上限(例:0.05%)を設定。
  • 約定管理:部分約定を前提にポジションサイズを分割。
  • 時間帯最適化:スプレッドが狭い時間帯(仮想通貨は重複セッション、FXはロンドン/NY)に集中。

リスク管理:損切り・利確・トレーリング

  • 固定幅+構造の併用:ATR基準の固定幅に、直近極値の外側を重ねる。
  • ポジションサイズ:1トレード当たり口座の0.5〜1.0%のリスクに制限。
  • 連敗ガード:連続損切りが一定回数(例:3回)に達したら当日停止。
  • ヘッジ:永続先物の資金調達が偏る時は、逆サイドの短期ヘッジを検討。

期待値の簡易算定と勝てる場面の絞り込み

期待値E=勝率p×平均利益R−(1−p)×平均損失L。
例えば逆張りセットの過去検証で p=0.48, R=1.2R(リスクリワード比1.2)L=1.0Rなら、E=0.48×1.2−0.52×1.0=+0.024。
小さいが、手数料とスリッページを0.02R以内に抑えればプラスは残ります。執行最適化がカギです。

バックテスト手順(TradingView/Python)

  1. データ:暗号資産は取引所別、FXはティックボリューム。株は取引所出来高。
  2. 指標:VWAP(セッション)、OBV、ボリュームプロファイル(期間固定)。
  3. ルール実装:上記逆張り/順張りセットをコード化。
  4. コスト:片道手数料、メイカー/テイカー差、平均スリッページ。
  5. 検証:期間分割(ウォークフォワード)。過学習を避ける。

よくある落とし穴

  • ニュース急変時のVWAP逆張り:イベント主導のトレンドでは逆張りが焼かれやすい。
  • FXのティックボリュームを絶対視:実出来高ではないため、確認指標として使う。
  • 暗号資産の取引所偏り:単一所の出来高で判断しない。インデックスや複数所の合算を意識。
  • プロファイル期間の恣意性:期間を固定(例:直近20日、当日セッション)してルール化。

チェックリスト(印刷・保存推奨)

  • 今日のボラは?(ATR、イベント)
  • VWAPとの距離は? バンド±1.5σ以上?
  • 出来高は加速/減速? OBVは価格に追随? 乖離?
  • POC/HVN/LVNはどこ? どこで止まりやすく、どこが抜けやすい?
  • 指値で入れるか? 成行が必要な局面か? スリッページ上限は?
  • 損切りは極値+ATRの外側に置いたか? サイズは口座の1%以内か?

まとめ

出来高は、値動きの「中身」を照らすファンダメンタルです。
VWAP・OBV・ボリュームプロファイルを組み合わせ、平均回帰とモメンタムの局面を切り分けることで、再現性のある売買が可能になります。最後に勝敗を分けるのは、執行の精度とコスト管理。ルール化と検証を徹底しましょう。

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