出来高×ボラティリティで読む暗号資産の短期売買:再現性の高いエントリー設計と検証手順

テクニカル分析

本記事では、出来高(Volume)とボラティリティ(Volatility)を組み合わせて、暗号資産の短期売買における再現性の高いエントリーとエグジットを設計する方法を解説します。短期売買に必要な指値・成行・逆指値・OCOの使い分け、スリッページやスプレッド対策、ATRを用いた損切り・トレーリングの設計、簡易な検証方法までを、初心者でも運用できるレベルで具体化します。

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この手法の狙い

価格の大きな変化は「出来高の急増」と「ボラティリティの拡大」が同時に起きる場面で発生しやすいです。出来高は市場参加者の本気度、ボラティリティは値幅の伸びしろを示します。両者を同時に観察することで、だましを減らし、伸びる波だけを選別する狙いがあります。

必要な準備(チャート設定)

  • 時間軸:デイトレは5分足〜15分足、スイングは1時間足〜4時間足を推奨します。
  • 出来高:標準の出来高(Volume)を表示し、出来高移動平均(20本)を重ねます。
  • ボラティリティ:ATR(14)を下段に表示します。単位は価格と同一スケールです。
  • トレンド把握用:移動平均線(SMA20 / SMA50)を表示します。方向性の確認に使います。

指標の定義と閾値

出来高スパイク:直近20本平均(出来高MA20)の1.8倍以上を暫定基準とします。
ボラ拡大:ATRが過去20本の平均ATRを1.2倍以上上回る状態を基準とします。

上記は初期設定です。資産や時間軸で最適値は変わるため、後述の検証で調整してください。

3つの代表的なエッジ

  1. ブレイクアウト+出来高スパイク:直近レンジ上限/下限を出来高急増とともに突破。伸びやすい波に乗る設計です。
  2. スクイーズ→エクスパンション:ATRが低下(スクイーズ)した後に出来高が伴って急拡大。値幅が出やすい局面です。
  3. フェイク否定の反転:ブレイク直後に一度失敗(だまし)→すぐに反対方向へ出来高を伴って再転換。損切りの巻き込みで加速します。

エントリーの具体設計(デイトレ想定)

通貨ペアは流動性の高い主要銘柄(例:BTC、ETH)を想定します。

  1. レンジを引く(直近30〜60本の高値・安値でゾーン化)。
  2. 出来高スパイク(>=1.8×MA20)と、ATR拡大(>=1.2×過去平均)を同時に監視。
  3. 上抜け候補:レンジ上限+数ティックに逆指値買い(Stop)を置き、約定後は直近スイング安値−0.8×ATRを初期ストップ。
  4. 下抜け候補:レンジ下限−数ティックに逆指値売り(Stop)を置き、約定後は直近スイング高値+0.8×ATRを初期ストップ。
  5. 利確は1.5×ATR3.0×ATRの分割。半分利確後は残りにATRトレーリング(1.2×ATR)を適用。

成行よりも逆指値の自動執行を基本にし、OCOで利確・損切りを同時に出しておくと管理が簡便です。

スイング版:ETHのトレンドフォロー例

  1. 1時間足でSMA20>SMA50の上昇トレンドを確認。
  2. 押し目の底付近で出来高スパイクを伴う陽線包み足が出現したら、直近高値+数ティックに逆指値買い。
  3. 初期ストップは押し目安値−1.0×ATR。第一利確は2.0×ATR、残りはトレーリング1.5×ATR。
  4. 出来高が失速し、ATRが縮小してきたら反発失速の可能性。残ポジにタイトなトレーリングを適用。

指値・成行・逆指値・OCOの実務的な使い分け

  • 指値:期せずに逆行しても拾いたい水準で待ち構える。スプレッドの狭い時間帯で有効です。
  • 成行:出来高スパイクの瞬間に乗る際に用いるが、スリッページ悪化に注意。イベント直後は避けます。
  • 逆指値:ブレイク確認後に自動執行。だまし回避に有効。基本はこれを中核にします。
  • OCO:利確と損切りを同時に置く。感情の介入を減らし、ルール通りの撤退を徹底できます。

スプレッドとスリッページ対策

  • 板が薄い銘柄を避け、出来高の多い主要銘柄・主要時間帯に集中します。
  • イベント直後は成行・逆指値ともに滑りやすいです。直後1〜3本は待つ選択肢を持ちます。
  • 指値はレンジ内のフェアバリュー近辺に置き、約定優先度を上げるために階段状に分割配置します。

損切りとトレーリングの数式

初期ストップ:
ロング=エントリー価格 − k1 × ATR、ショート=エントリー価格 + k1 × ATR。初期値は k1=0.8〜1.2 を推奨。

トレーリング:
ロング=直近高値 − k2 × ATR に更新、ショート=直近安値 + k2 × ATR に更新。初期値は k2=1.2〜1.5 を推奨。

ポジションサイジング(資金管理)

1トレードあたりの許容損失を口座残高の0.5%〜1.0%に固定します。
数量=許容損失額 ÷(初期ストップ距離) で算出し、常にリスクを一定化します。

検証手順(簡易バックテスト)

  1. 任意の銘柄・時間軸で、過去3〜6か月分のチャートを用意します。
  2. 出来高スパイク(≥1.8×MA20)とATR拡大(≥1.2×過去平均)が同時に出たバーを抽出。
  3. レンジ上限/下限を基にエントリー条件を機械的に適用。OCO(利確1.5×ATR・3.0×ATR、損切り0.8〜1.2×ATR)で管理。
  4. 各トレードでR(リスクリワード)を記録し、勝率、平均R、期待値(=勝率×平均勝ちR − 敗率×平均負けR)を算出します。
  5. k1、k2や出来高・ATR閾値を微調整し、過剰最適化を避けるために直近相場をアウトサンプルとして評価します。

よくある失敗と回避策

  • 出来高が薄い時間帯でのエントリー:スプレッド拡大で不利。主要セッションに限定します。
  • イベント直後の成行エントリー:スリッページが拡大しやすい。1〜3本待つか逆指値に統一します。
  • ストップを後ろ倒し:計画外の含み損拡大に直結。初期ストップは機械的に置き直し禁止。
  • 利確の一括化:分割利確を採用し、含み益の一部を早めに確定して心理的安定を得ます。

実装チェックリスト

  • 出来高MA20とATR14を表示している。
  • 出来高スパイク≥1.8×、ATR拡大≥1.2×の同時判定。
  • 逆指値エントリー、OCOで利確・損切りを同時設定。
  • 初期ストップ=0.8〜1.2×ATR、利確=1.5×ATRと3.0×ATR、残りは1.2〜1.5×ATRでトレーリング。
  • 1トレードのリスクを口座残高の0.5〜1.0%に固定。
  • 主要時間帯・主要銘柄に限定してスプレッドとスリッページを抑制。

まとめ

出来高とボラティリティの同時監視は、だましの多い暗号資産市場でも有効に機能します。明確なルールで逆指値とOCOを活用し、ATRで損切りとトレーリングを定量化すれば、感情に左右されにくい戦い方ができます。小さなロットで検証を重ね、自分の時間軸・銘柄に最適化してからサイズを段階的に拡大していきましょう。

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