レンジトレード完全ガイド:逆張りで勝率を積む実装手順

取引手法

トレンドが出ない時間帯に「無理やりトレンドフォロー」しても、ストップに何度も当たって資金は削られます。一方、レンジトレードは「方向が出ないなら平均回帰を利用して利益を拾う」という設計思想です。本稿では、仮想通貨(BTC/ETH/アルト)とFXの両方で通用する具体的な手順を、検出 → 設計 → 検証 → 運用の順に落とし込みます。ルールは数値で提示し、損切り・利確・ポジションサイズ・改善の回し方まで実務的に解説します。

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レンジ相場とは何か:定義と“本質”

レンジ相場は、一定時間内で高値と安値が明確な帯(ボックス)の中に価格が滞留し、トレンド方向の優位性が低い状態を指します。統計的には「ボラティリティ縮小+方向性の指標が弱い」局面です。特徴は以下の通りです。

  • 直近の高値・安値が並行して更新されにくい(Higher High / Lower Low が出にくい)。
  • 出来高はまばらで、突発的なニュースがない限り値幅は狭い。
  • 短期の平均値(VWAPやミドルバンド)へ回帰しやすい。

本質は「需給が拮抗しており、価格が平均に吸い寄せられやすい」という事実です。この性質が、逆張り・平均回帰のエッジの根源になります。

レンジの検出方法:“条件が揃ったら”だけ攻める

無秩序に逆張りすると、トレンド初動で焼かれます。そこで、明確な検出条件を設けて、条件が揃ったときだけ執行します。代表的な検出法は次の通りです。

  • ADXが低位:例)14期間ADX < 18〜20。方向性が弱いことを数値化。
  • ボリンジャーバンド幅(BBW)の縮小:例)20期間のBBWが過去90日パーセンタイルの30%以下
  • ドンチャン・チャネルの狭小化:例)20期間の高値−安値がATR(14)のx倍以下。
  • HH/LLの不発:直近n波動で高値更新・安値更新が出ない。
  • 時間帯フィルター:仮想通貨で出来高が薄くなりやすい時間帯(例:JST早朝)や、FXでロンドン・NYの狭間。

検出は複数条件の合致(AND)で誤判定を減らします。例:ADX<20 かつ BBW低位 かつ HH/LL不発なら「レンジ」と判定。逆に、条件が崩れたら素早く撤退・戦略停止します。

戦略設計の原則:平均回帰の“トリガー”と“退出”

平均回帰の起点は「統計的に外れた位置」です。多くのトレーダーは、上端で買い、下端で売るという誤りを犯します。逆です。レンジ内では、上端では売り、下端では買うが基本です。ただし、フェイクアウトとブレイク本番は紙一重なので、撤退設計が核心になります。

  • トリガー:BB±2σタッチ、RSI(14)70/30越え、価格がドンチャン上限/下限に接触、VWAPからの乖離率が閾値越えなど。
  • 初期ストップ「外に出たら即切る」。具体例:上端ショートなら、直近スパイク高値の数ティック外側+α(ATRの0.2〜0.5倍)。
  • 利確:ミドル(ミドルバンド、VWAP)への半分利確+反対バンドで残り利確、またはR倍(例:1.2R、1.5R)で機械的に。
  • 停止ルール:トレンド転換(ADX上昇、ブレイク後のプルバック成立)でシステム停止。

具体的な運用手順(チェックリスト)

  1. 対象を選ぶ:BTC/ETHの主要ペア、レンジ適性が高いアルト、FX主要通貨。
  2. 時間軸を決める:5分足〜15分足で細かく積む/1時間足で落ち着いて積む。
  3. 検出:ADX・BBW・HH/LLの3条件でレンジ判定、時間帯フィルターも確認。
  4. 水準描画:上限・下限・中央値(VWAP/ミドル)を手書き・自動で明示。
  5. エントリー:上限タッチでショート、下限タッチでロング(ルール化)。
  6. ストップ:直近スパイクの外+ATRα。指値で事前に置く(成行で滑らないよう配慮)。
  7. 利確:半分は中央値、残りは反対端 or トレーリング。
  8. サイズ:1トレードの口座リスクを0.3%〜0.7%に固定。連敗時は逓減。
  9. ログ:理由・入出場・R・滑り・手数料・時間帯を記録し、週間で振り返り。

3つの代表戦術:状況に合わせて使い分け

① バンドタッチ逆張り

BB±2σタッチ+RSI過熱をトリガーに逆張り。乖離の極端化を狙い撃ちする王道です。利確はミドルで半分、残りは反対バンドかR固定。スパイクの再現が多い銘柄で特に効きます。

② フェアバリュー復帰(VWAP回帰)

出来高加重平均(VWAP)との乖離が一定以上になった瞬間を狙います。機関投資家の執行がVWAPを意識するため、価格は一度VWAPに戻りやすいという傾向があります。乖離率や標準化(Zスコア)で閾値化します。

③ フェイクアウト吸収(Stop-Run Fade)

上端・下端を一瞬だけ抜けてから即座に内側へ戻る「だまし」を狙う手法。抜けた瞬間に狩られた損切りの反動が燃料になります。ローソク足の戻り方(長い上ヒゲ/下ヒゲ)と成約フローの失速で判断します。

数値ルール例(BTCUSDT・5分足)

以下は一例です。コピー&ペーストではなく、自分の銘柄・時間帯に合わせて微調整してください。

【検出】
・ADX(14) < 18
・BBW(20)が過去90日の30%パーセンタイル以下
・直近30本でHH/LL更新が3回以下
・時間帯:JST 02:00〜07:00 を優先

【エントリー】
・上端(過去N=20の高値)±数ティック触れで売り、下端(過去N=20の安値)触れで買い
・RSI(14)が70超(売り)/30割れ(買い)を加点条件

【ストップ】
・ショート:直近スパイク高値の外+ATR(14)*0.3
・ロング:直近スパイク安値の外+ATR(14)*0.3

【利確】
・1st:ミドル(BBミドル or VWAP)で50%利確
・2nd:反対端 or 1.5R固定
・どちらか先に到達した方を採用

【停止】
・ADXが25超に上昇+上端/下端のブレイク後、プルバックからの再加速が成立

リスク管理:連敗を小さく、勝ちを積む設計

レンジトレードは「勝率が高め・平均利益は小さめ」になりやすい戦術です。よって、オーバーサイズは厳禁。以下を徹底します。

  • 1トレードの口座リスクは0.3%〜0.7%。勝率に自信がつくまで0.3%で十分。
  • 日次ドローダウン上限:例)−2Rまたは口座−1.5%で取引停止。
  • 連敗プロトコル:2連敗でサイズ0.7倍、3連敗で0.5倍、翌日まで待機でも可。
  • スリッページと手数料:統計に必ず内包。バックテストでも売買コストを厳しめに仮定。

ポジションサイズ計算:式と実例

基本式はシンプルです。

ポジションサイズ = (口座残高 × 許容リスク率) ÷ ストップ幅(価格)

例:口座100万円、リスク0.5%(=5,000円)、ストップ幅が1.5%(現物/先物どちらでも価格幅に換算)なら、5,000円 ÷ 0.015×価格で数量を算出。先物なら必要証拠金とレバレッジの整合を必ず確認します。

検証(バックテスト)と改善(KPI運用)

勘ではなく、事実に基づいて改善します。最低でも以下を運用してください。

  • インサンプル/アウトオブサンプル分離:過去データで最適化→直近の別期間で検証。
  • コスト内包:手数料+平均スリッページを上乗せ。成行主体なら滑りを厳しめに。
  • R分布の把握:Rマルチプルで損益を記録。平均R、勝率、最大連敗を算出。
  • 曜日・時間帯分析:どの窓で優位かを特定。悪い窓は切る。
  • 停止・再開の客観ルール:ドローダウン閾値、ADX上昇時の停止など。

よくあるミスと対処

  • “なんとなくレンジ”で入る:数値条件(ADX、BBW、HH/LL)を固定。
  • ストップが甘い外に出たら即切る。戻る“かも”は捨てる。
  • サイズ過大:勝率が高いと慢心しやすい。0.3%〜0.7%を死守。
  • ニュース無視:経済指標や大型アップグレード前は回避。薄商いでも一撃で飛ぶ。
  • 時間帯の無視:出来高の谷では逆に滑りが拡大。成行は極力避ける。

運用のコツ:微差を積む“職人的”アプローチ

  • 待つ力:条件が揃うまで待つ。トレード回数を減らしてもPFが上がることが多い。
  • 水準の明確化:上限・下限・中央値を毎回描く。視える化でミスが減る。
  • 部分利確の徹底:中央値で半分利確はメンタル負荷を減らし、PFを安定させる。
  • 市場別の最適化:暗号資産は土日も動く。FXはロンドン・NYの狭間が鍵。

ケーススタディ①:BTCUSDT(15分足)

JST深夜にBBWが急低下、ADXは15付近。上端タッチでショート、ストップは直近ヒゲ外+ATR0.3倍。VWAPで半利確、反対端で全決済。結果は+1.6R。直後にADXが上昇し始めたためシステム停止。翌日、条件再合致まで待機。

ケーススタディ②:USDJPY(5分足)

ロンドンとNYの狭間で値動きが停滞。RSIの過熱と上端タッチでショート、中央値で半利確。米指標15分前に全停止。指標後はトレンドが発生、逆張りは封印。停止ルールが資金を守る一例です。

よくある質問(FAQ)

Q1:トレーリングストップは使うべき?
A:レンジ内では利幅が小さく、トレールが早すぎるとノイズで剥がれます。中央値で半利確+残り固定Rが安定しやすいです。

Q2:どの指標が最重要?
A:ADX+BBW+HH/LLの複合です。単独指標の過信は禁物。

Q3:どの銘柄が向く?
A:スプレッドが狭く、約定品質が安定しているメジャー銘柄。手数料優遇のある取引所が望ましい。

まとめ:レンジは“拾う”、トレンドは“追う”

相場は常にトレンドが出ているわけではありません。レンジは拾い、トレンドは追うという、戦術の切替が成績を安定させます。数値でレンジを検出し、外に出たら即撤退、中央値で半利確、Rで締める——この地味な積み重ねが口座曲線を右肩上がりにします。今日から、待つ・測る・切る・積むを徹底してください。

※本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・取引の勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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