- この記事で扱う「CPI発表直後の指数スキャル」とは
- なぜCPI直後は「儲かるチャンス」ではなく「優位性の偏り」なのか
- 対象商品をどう選ぶか:初心者が触って良い順番
- 前提:この手法は「発表前の予想当て」ではない
- 準備1:発表時刻と“同時刻に動くもの”を固定で把握する
- 準備2:発表前の「基準値」を作る(ここが勝敗の半分)
- 準備3:その日の「入って良い日」と「見送る日」を決める
- エントリーの型:発表直後の“最初の5分”で見るべきもの
- ステップ1:最初の30〜60秒は何もしない
- ステップ2:方向判定は「価格」ではなく「戻りの弱さ/強さ」で決める
- ステップ3:エントリーは「レンジブレイク+リテスト」か「VWAP回復/割れ」に限定する
- 損切りと利確:CPIスキャルは「損小利小」より「損小利中」が現実的
- 具体例1:強いインフレ(想定より強い)→ 金利上昇 → 指数下落の型
- 具体例2:インフレ鈍化(想定より弱い)→ 金利低下 → 指数上昇の型
- 板読み(歩み値)で精度を上げる:見るのは「連続約定」と「板の復活速度」
- 時間フィルター:勝負は「発表後5〜15分」だけに絞る
- やってはいけない典型パターン:負け方のテンプレを潰す
- 運用のコツ:小さく始め、ログで改善する
- チェックリスト:本番前に毎回これだけ確認する
- まとめ:CPIスキャルは「待つ技術」が全て
この記事で扱う「CPI発表直後の指数スキャル」とは
米国のCPI(消費者物価指数)は、発表の瞬間に金利・ドル・株価指数が同時に大きく動く代表的な経済指標です。発表直後は、アルゴリズムの成行連打と指値の引っ込みが重なり、値段が「滑る(スリッページ)」一方で、方向が決まると数分で一気に伸びることがあります。
ここで言う指数スキャルは、発表直後の最初の数分〜十数分に限定して、“初動の方向”が確定した後だけを短期で取る手法です。逆に、方向が決まらない「往復ビンタ」局面では一切触りません。やることは少なく、やらないことを増やすのがコツです。
なぜCPI直後は「儲かるチャンス」ではなく「優位性の偏り」なのか
CPIは市場の想定(コンセンサス)と結果のズレで動きます。さらに重要なのは、ヘッドライン(総合)とコア(食品・エネルギー除く)など複数の数値、そして前月比・前年同月比が同時に出る点です。数字の解釈が割れると一度乱高下し、その後に“市場が採用した解釈”へ収束します。
この「収束が始まった瞬間」は、短期的に片側の注文が優勢になりやすいです。つまり、普段よりも優位性(片側に偏る時間)が出る可能性がある。ただし、その代償として、逆方向に刺さった時の損失も普段より大きくなります。だから、入る条件と撤退条件を先に固定しておく必要があります。
対象商品をどう選ぶか:初心者が触って良い順番
初心者がいきなり最も荒い商品を触ると、手法以前に執行で壊れます。順番は以下の考え方が安全です。
第一候補は、板が厚く約定が滑りにくい米国の主要指数先物(例:S&P500系、Nasdaq系)です。次に、米国の動きに連動しやすい日経225先物。個別株は、CPI直後の指数連動が強すぎて個別要因が消えるため、この手法の対象から外します。
現物ETF(指数ETF)でも可能ですが、発表直後はスプレッドが拡大しやすく、約定が不利になりがちです。先物に慣れていない場合は、まずはデモ環境や少額・最小枚数から始め、約定の感覚を掴んでください。
前提:この手法は「発表前の予想当て」ではない
CPIを当てに行くのは別ゲームです。ここでの狙いは「発表後に市場が選んだ方向」に乗ることです。したがって、発表前にポジションを持つことはしません。発表の瞬間に飛び乗ることもしません。最初の混乱が落ち着き、方向が確定してからだけ入ります。
準備1:発表時刻と“同時刻に動くもの”を固定で把握する
CPIは米国時間で発表されます。日本時間では季節により時刻が変わります。ここは毎回必ず確認してください。加えて、同時刻に大きく動くのは株価指数だけではありません。米10年金利、ドル円、VIX系、金などが同時に走ります。
指数スキャルでは、指数そのものに集中しますが、金利の方向はフィルターとして使えます。ざっくり言えば、金利急騰はグロースに逆風、金利急落はグロースに追い風になりやすい。発表直後に指数が上下へ振れても、金利が一方向に走っているなら、後から指数が追随することがあります。
準備2:発表前の「基準値」を作る(ここが勝敗の半分)
発表直後はチャートが歪みます。だからこそ、発表前に基準を決めます。具体的には以下の3つです。
①直前30分の高値・安値(レンジ)
②直前30分のVWAP、または出来高が集中した価格帯
③発表前に何度も反応した水平ライン(前日高値・安値、ラウンドナンバー)
この基準を作っておくと、発表直後の動きが「レンジブレイク」なのか「レンジ内往復」なのか判定できます。初心者が負けやすいのは、レンジ内のノイズをトレンドと勘違いすることです。
準備3:その日の「入って良い日」と「見送る日」を決める
全部のCPIを同じように扱うと破綻します。見送りやすい日を条件化します。
・直前からすでに指数が一方向に走り、ボラが高い(発表後に“出尽くし”になりやすい)
・重要イベントが連続している(例:同日にFOMC議事要旨、主要企業の決算、地政学ヘッドラインが重なる)
・板が薄い時間帯、祝日絡みで流動性が落ちている
・前回CPIの直後に超乱高下(急反転を連発)しており、マーケットの耐性が低い局面
「見送る」という意思決定を先に入れておくと、発表直後の熱量に流されません。
エントリーの型:発表直後の“最初の5分”で見るべきもの
ここからが手順です。発表直後にやることは多くありません。見るものを固定します。
ステップ1:最初の30〜60秒は何もしない
発表直後は、価格が瞬間的に上下へ飛び、スプレッドが広がり、指値が消えます。この時間帯に成行で入るのは、プロでも事故が起きます。初心者はなおさらです。
「最初の30〜60秒は絶対に触らない」をルールにしてください。これだけで負けが減ります。
ステップ2:方向判定は「価格」ではなく「戻りの弱さ/強さ」で決める
発表直後の1本目のローソク足が陽線だったから買い、陰線だったから売り、は危険です。大事なのは、その後の戻りが弱いか強いかです。
例えば上に飛んだ後、いったん押しても発表前レンジ上限を割らず、買い戻しがすぐ入るなら上方向が採用されつつあります。逆に、上に飛んだ後にレンジ内へ戻り、戻り売りで再び押されるなら、上方向は否定されやすいです。
ステップ3:エントリーは「レンジブレイク+リテスト」か「VWAP回復/割れ」に限定する
初心者が再現しやすいのは2パターンです。
パターンA:発表前レンジをブレイク → いったん戻る(リテスト)→ 再度ブレイク方向へ
この時、戻りの局面で出来高が減り、再加速で出来高が増えるなら理想です。エントリーは“再加速の始まり”です。戻っている最中に買うのではなく、戻りが止まったことを確認してから入ります。
パターンB:発表直後の乱高下が一巡 → VWAPを明確に回復/割れ → 5分足終値で確定
VWAPは短期の参加者が意識しやすい基準です。発表直後にVWAPを跨いで上下に振れるのは普通ですが、どちらかに“戻れなくなった”瞬間が出ます。そこがエントリーの根拠になります。
損切りと利確:CPIスキャルは「損小利小」より「損小利中」が現実的
発表直後は値幅が大きいので、極端に小さい損切りはすぐ刈られます。逆に損切りを広げすぎると一撃で致命傷になります。おすすめは「直前の小さなスイング高安+数ティック」を損切りラインにし、目標はレンジ幅の1〜1.5倍をまず置く設計です。
利確は一発で当てにいかず、分割決済が合理的です。例えば、最初の目標で半分を落とし、残りは建値付近まで逆指値を引き上げ、伸びるなら伸ばす。伸びないなら建値撤退。これで「当たったのに負ける」を避けられます。
具体例1:強いインフレ(想定より強い)→ 金利上昇 → 指数下落の型
ケースとして、結果が市場想定より強く、金利が跳ねた場面を想定します。発表直後、指数は一度上に跳ねることがあります。これはショートの買い戻しや瞬間的な誤読です。
この時の狙いは、上への跳ねを追わないことです。上へ跳ねた後に発表前レンジへ戻り、レンジ下限を割ってきたら“下方向採用”の可能性が上がります。エントリーは、レンジ下限割れ後の戻りが弱く、再度売りが入った瞬間です。
損切りは、戻りの高値を上抜いたら撤退。利確は、発表前レンジ幅の1倍をまず取り、残りは金利が上げ止まる兆候が出るまで追う。金利が上げ止まっても指数が戻らないなら、まだ弱い可能性が残ります。
具体例2:インフレ鈍化(想定より弱い)→ 金利低下 → 指数上昇の型
逆に、結果が弱く金利が落ちた場合、指数は上に走りやすいです。ただし、発表直後の一発目の上げは滑りやすいので追いません。狙いは、発表前レンジ上限をブレイクした後のリテストです。
レンジ上限まで押してきたのに割れず、出来高が落ち、再び買いが入り始めたらエントリー。損切りはレンジ上限を明確に割れたら撤退。利確はレンジ幅1倍、残りは“高値更新が止まった最初の5分足”で落とすなど、機械的な条件で降ります。
板読み(歩み値)で精度を上げる:見るのは「連続約定」と「板の復活速度」
発表直後は板が消えます。重要なのは、その後に板が戻ってくるスピードです。戻りが早く、スプレッドが縮み、同じ方向に連続して約定が出るなら、短期参加者が同方向へ揃い始めています。
ここで初心者がやりがちなのが「大きい約定が出たから追う」です。大口は逆方向の吸収であることも多い。見るべきは、同サイズの成行が連続して出ること、そして反対側の板が“すぐに補充されない”ことです。例えば下落局面で、買い板が置かれてもすぐ引っ込み、売り成行が連続するなら下方向が強い、と判断しやすいです。
時間フィルター:勝負は「発表後5〜15分」だけに絞る
CPI直後は、最初の数分で方向が決まり、10〜15分で一旦落ち着くことが多いです。落ち着いた後は、次の材料(要人発言、別指標、株式市場オープンなど)を待つゲームになります。ここに居残ると、手法の前提が崩れます。
したがって、発表後15分で強制終了、もしくは“最初の1トレードで完結”を推奨します。勝っても負けても、次のチャンスはまた来ます。CPIだけで稼ごうとしないことが、長期的には最も利益に直結します。
やってはいけない典型パターン:負け方のテンプレを潰す
この手法の失敗は、ほぼパターン化できます。
・発表の瞬間に成行で飛び乗る(滑って損切りが遠くなる)
・最初の1分の上下振れをトレンドと誤認する(レンジ内で往復ビンタ)
・損切りを入れず「戻るはず」で耐える(ボラが高いので致命傷になりやすい)
・利確が遅れて、最初の大きい利が消える(CPIは反転も速い)
・同日に複数回トレードして、勝ちを吐き出す(熱量に飲まれる)
この5つを禁止ルールにするだけで、成績は改善します。
運用のコツ:小さく始め、ログで改善する
CPI直後は特殊環境です。まずは最小ロットで、手順通りに執行できるかを優先してください。結果よりも「ルールを守れたか」を評価します。
ログは最低限で十分です。発表前レンジ、エントリー根拠(ブレイク+リテスト or VWAP回復/割れ)、損切り位置、利確位置、入った時のスプレッド、滑りの有無、撤退理由。この6点を毎回残すと、次の改善点が見えます。
チェックリスト:本番前に毎回これだけ確認する
最後に、当日の作業をチェックリスト化します。
①発表時刻(日本時間)を確認
②直前30分の高値・安値、VWAP、重要水平線を引く
③見送る条件に当てはまらないか確認
④最初の30〜60秒は触らないと決める
⑤エントリーは「ブレイク+リテスト」か「VWAP確定」以外は禁止
⑥損切りは直前スイング高安+数ティック、利確はレンジ幅1倍を基準
⑦15分で終了、または1トレードで終了
このチェックリストを守るだけで、CPI直後の“危険なボラ”が“管理可能なボラ”に変わります。
まとめ:CPIスキャルは「待つ技術」が全て
CPI発表直後は、派手に動くので魅力的に見えます。しかし、勝てる人は「当てる」ではなく「待つ」をやっています。最初の混乱をやり過ごし、方向が確定した瞬間だけを短期で取る。これを徹底できれば、初心者でも再現性を持てます。
重要なのは、勝ち筋を増やすことではなく、負け筋を消すことです。ルールを固定し、記録し、同じ失敗を繰り返さない。その積み上げが、CPIのようなイベント相場でも安定した運用につながります。


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