ボリンジャーバンド収縮後の急騰銘柄を狙う実践的スクリーニング術

投資戦略
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ボリンジャーバンドの収縮は「次の値幅」を予告する

株価が大きく動く前には、しばしば静かな期間があります。材料がない、出来高が減っている、値動きが小さい、投資家の関心が薄れている。こうした状態は一見すると退屈ですが、実は次の大きな値幅が生まれる前段階であることがあります。ボリンジャーバンドの収縮、いわゆるスクイーズは、この「静けさ」を数値化するための代表的な道具です。

ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心に、株価のばらつきを上下のバンドとして表示する指標です。一般的には20日移動平均線を中心線とし、標準偏差の2倍を上下に加減した線を使います。値動きが大きければバンドは広がり、値動きが小さければバンドは狭くなります。つまり、バンドの幅は市場参加者の迷い、停滞、エネルギーの蓄積を示す温度計のようなものです。

ただし、ボリンジャーバンドが狭くなっただけで買えばよいわけではありません。収縮は「これから動きやすい」というだけで、上に行くか下に行くかはまだ決まっていません。重要なのは、収縮した後にどちらへ価格が放れるのか、そしてその動きに出来高や需給が伴っているのかを確認することです。この記事では、単なる指標解説ではなく、実際に銘柄を探し、監視し、買い候補から除外するまでの具体的な手順に落とし込みます。

急騰銘柄を狙う前に理解すべき「収縮」と「拡散」

ボリンジャーバンドの基本は、収縮と拡散の繰り返しです。相場は常に大きく動き続けるわけではありません。上昇した後は休み、下落した後もいったん落ち着き、横ばいの期間を挟みます。この横ばい期間に値幅が小さくなると、標準偏差が低下し、バンド幅が狭くなります。これが収縮です。

収縮が長く続いた後に、株価が上方向へ抜け、同時に出来高が増えると、バンドは再び広がり始めます。これが拡散です。この拡散局面の初期に乗ることができれば、短期間で大きな値幅を取れる可能性があります。特に日本株の小型株や中型株では、流動性が薄い期間から一気に注目度が高まり、数日から数週間で株価水準が変わるケースがあります。

一方で、収縮後の下方向ブレイクもあります。むしろ何も考えずに収縮銘柄を買うと、下落初動をつかむ危険があります。だからこそ、収縮そのものではなく、「収縮後に上方向へ放れた事実」を重視します。値動きが小さい状態から、終値で上バンドを超え、直近高値も更新し、出来高が増えた。このように複数の条件が重なったときだけ候補にします。

まず見るべき指標はバンド幅率

ボリンジャーバンド収縮を実戦で使うなら、チャートを眺めるだけでは不十分です。銘柄数が多い日本株では、目視だけで良い候補を探すと時間がかかりすぎます。そこで使いたいのがバンド幅率です。計算式はシンプルで、上バンドから下バンドを引き、それを中心線で割ります。

たとえば、20日移動平均線が1,000円、上バンドが1,050円、下バンドが950円なら、バンド幅は100円です。これを中心線1,000円で割ると10%になります。別の銘柄で中心線が5,000円、上バンドが5,150円、下バンドが4,850円なら、バンド幅は300円ですが、バンド幅率は6%です。単純な値幅ではなく、株価水準に対する割合で見ることで、異なる価格帯の銘柄を比較できます。

実務では、バンド幅率が過去一定期間の下位水準にある銘柄を探します。絶対値で「5%以下」と決める方法もありますが、業種や銘柄の値動きのクセによって適正値は異なります。普段から激しく動く小型グロース株の5%と、大型ディフェンシブ株の5%では意味が違います。そのため、より有効なのは「過去120営業日の中でバンド幅率が下位10%以内」など、銘柄自身の過去と比べる方法です。

ここで大事なのは、収縮が極端すぎる銘柄ほど良いとは限らないことです。長期間まったく動かない銘柄は、単に市場から忘れられているだけの場合もあります。急騰候補としては、収縮しているが、完全に死んだようなチャートではない銘柄が理想です。具体的には、株価が20日線や60日線の近くにあり、出来高がゼロに近い日が続かず、過去に一定の値動きがあった銘柄を優先します。

実践スクリーニングの基本条件

ボリンジャーバンド収縮後の急騰を狙う場合、最初から買い銘柄を探すのではなく、監視リストを作る感覚が重要です。収縮は準備段階であり、買い判断はブレイク後です。スクリーニングの基本条件は、次のように組み立てます。

第一に、20日ボリンジャーバンドのバンド幅率が過去120営業日の下位10%以内であること。これにより、通常より明らかに値動きが縮んでいる銘柄を抽出できます。第二に、株価が60日移動平均線を大きく下回っていないこと。下落トレンド中の収縮は、単なる下落途中の小休止である可能性が高いためです。目安としては、終値が60日線のマイナス5%以内、できれば60日線以上にある銘柄を優先します。

第三に、直近20営業日の平均売買代金が最低でも5,000万円以上あることです。あまりに売買代金が小さい銘柄は、理論上は急騰しても実際に売買しにくく、スプレッドも広がります。個人投資家であっても、売りたいときに売れない銘柄はリスクが高くなります。資金量が小さいうちは最低ラインを3,000万円程度に下げることも可能ですが、板の薄さを許容できるかどうかは慎重に判断すべきです。

第四に、直近の決算で大幅な赤字拡大や継続企業の前提に関する注記がないことです。テクニカルだけで急騰候補を探すと、財務リスクの高い銘柄が混ざります。短期トレードであっても、悪材料で突然大きく下がる銘柄を避けるために、最低限の業績チェックは必要です。売上が横ばいでも営業利益が改善している、赤字でも赤字幅が縮小している、自己資本比率が極端に低くない、といった基礎確認を行います。

買いの合図は「終値」と「出来高」で確認する

ボリンジャーバンドの上バンドを一瞬だけ超えたからといって、すぐに買う必要はありません。特に前場の勢いだけで飛びつくと、後場に失速して長い上ヒゲをつけることがあります。実戦で重視したいのは終値です。終値で上バンドを超え、さらに直近の小さな抵抗線も超えているかを確認します。

たとえば、ある銘柄が1,000円から1,050円の狭い範囲で3週間横ばいだったとします。バンド幅率は過去半年で最低水準まで低下し、出来高も細っています。この銘柄がある日、終値1,075円で引け、出来高が20日平均の2.5倍に増えたとします。この場合、単なる収縮ではなく、上方向へのブレイクが発生したと判断できます。

出来高の確認は非常に重要です。価格だけが上に抜けても、出来高が伴わない場合は信頼度が落ちます。少人数の買いで一時的に上がっただけかもしれないからです。目安としては、ブレイク日の出来高が20日平均の1.5倍以上、理想は2倍以上です。さらに、売買代金が前日比で増えていることも確認します。出来高は株数ベースなので、株価が高い銘柄と低い銘柄では意味が変わります。実際の資金流入を見るには売買代金も併用します。

もう一つの確認ポイントは、終値がその日の高値に近いかどうかです。高値引けに近い陽線は、引けにかけても買いが続いたことを示します。反対に、上バンドを超えたものの長い上ヒゲで終わった場合は、上値で売りが強かった可能性があります。急騰初動を狙うなら、ブレイクした事実だけでなく、ブレイク後に買いが持続したかを見るべきです。

だましを避けるための三つのフィルター

ボリンジャーバンド収縮後のブレイクには、だましがあります。だましを完全に避けることはできませんが、質の低いブレイクを減らすことはできます。実務で使いやすいフィルターは三つあります。

直近高値を終値で超えているか

上バンドを超えていても、直近高値を超えていなければ、まだレンジ内の動きにすぎないことがあります。特に横ばい上限に何度も跳ね返されている銘柄では、その上限を終値で抜けるかが重要です。たとえば、過去1か月の高値が1,050円で、上バンドが1,045円だった場合、終値1,048円ではまだ弱いと考えます。終値1,060円以上で引け、出来高も増えて初めて候補にする、という基準のほうが実戦的です。

移動平均線の向きが悪すぎないか

20日線、60日線、120日線がすべて下向きで、株価が長期的な下降トレンドにある場合、収縮後の上抜けは戻り売りに押されやすくなります。もちろん下降トレンドからの反転初動を取れるケースもありますが、難易度は上がります。初心者が最初に狙うなら、60日線が横ばいから上向き、または20日線が60日線を上回り始めている銘柄が扱いやすいです。

ブレイク前に不自然な急騰をしていないか

収縮後のブレイクに見えても、実は数日前にすでに材料で大きく上がり、その後に一時的に落ち着いただけというケースがあります。これは初動ではなく、二段目や三段目の可能性があります。もちろん二段上げを狙う戦略もありますが、初動狙いとは管理方法が異なります。この記事で扱う戦略では、ブレイク前の20営業日にすでに30%以上上昇している銘柄は原則として除外します。過熱した後のスクイーズは、上にも下にも振れやすく、損切り幅が広がりやすいためです。

具体例で見る銘柄選定の流れ

仮に、ある中小型の製造業銘柄Aを想定します。株価は半年間800円から1,050円の範囲で推移していました。直近1か月は980円から1,030円の狭いレンジに入り、20日ボリンジャーバンドの幅率は過去120営業日で最も低い水準まで低下しています。60日移動平均線はほぼ横ばい、120日線は緩やかに上向きです。業績を見ると、売上は微増ですが営業利益率が改善し、会社予想も保守的に見えます。

この段階ではまだ買いません。監視リストに入れるだけです。買いの条件は、終値で1,050円を超えること、出来高が20日平均の2倍以上になること、そして終値が上バンドの外側にあることです。数日後、株価は寄り付きから上昇し、終値1,085円で引けました。出来高は20日平均の2.8倍、売買代金も大きく増えています。この時点で、収縮から拡散へ移行した可能性が高まります。

ただし、ここで全力買いはしません。買うとしても、最初は予定資金の半分程度にとどめます。翌日以降に1,050円付近まで押し戻されず、出来高を伴って1,100円台に定着するなら追加を検討します。反対に、翌日すぐ1,050円を割り込み、ブレイクが失敗した場合は損切り候補です。このように、エントリーを一回で完結させず、ブレイクの質を見ながら段階的に判断します。

エントリーは三パターンに分ける

ボリンジャーバンド収縮後の急騰狙いでは、エントリー方法をあらかじめ決めておくことが重要です。勢いに任せて買うと、期待値よりも感情が勝ちます。実戦では、終値確認型、押し目確認型、分割型の三つに分けると整理しやすくなります。

終値確認型

終値確認型は、ブレイク日の大引け付近または翌営業日に買う方法です。メリットは、ブレイク初動に近い位置で入れることです。急騰がそのまま続いた場合、最も利益を伸ばしやすくなります。デメリットは、だましに遭いやすいことです。上に抜けた直後は短期資金も集まりやすく、翌日に反落することがあります。

終値確認型を使うなら、損切りラインを明確にします。代表的なのは、ブレイクしたレンジ上限を終値で割り込んだら撤退する方法です。先ほどの例でレンジ上限が1,050円なら、終値で1,050円を割った時点でブレイク失敗と見なします。ザラ場の一時的な割り込みではなく終値で見ることで、ノイズによる損切りを減らせます。

押し目確認型

押し目確認型は、ブレイク後に一度下げるのを待ち、上抜けた水準が支持線として機能するか確認してから買う方法です。メリットは、だましを減らしやすいことです。デメリットは、強い銘柄ほど押し目を作らず上がってしまい、買えないことです。

この方法では、上抜けた価格帯に株価が戻ってきたときの出来高を見ます。下げる局面で出来高が細り、再び陽線で反発するなら、売り圧力が限定的と判断できます。逆に、押し目のつもりで待っていたら大陰線で出来高が急増した場合は、支持線が機能していない可能性が高いです。押し目確認型は、焦らず選別する投資家に向いています。

分割型

分割型は、ブレイク時に一部買い、押し目または続伸確認で追加する方法です。実務上、最も扱いやすいのはこの型です。最初に半分だけ入ることで、急騰に置いていかれるリスクを減らしつつ、だましだった場合の損失も抑えられます。残りの半分は、ブレイクラインを維持した場合や、5日移動平均線を割らずに推移した場合に追加します。

分割型のポイントは、追加買いを平均単価の引き下げ目的で行わないことです。追加するのは、想定どおり強い値動きが続いたときです。下がったからナンピンするのではなく、上がる理由が確認できたから増やす。この違いを明確にしておくと、負けトレードを大きくしにくくなります。

損切りラインはチャートの構造で決める

この戦略で最も重要なのは、買い方よりも損切りです。ボリンジャーバンド収縮後のブレイクは、当たれば大きい一方、外れたときは素早く撤退しなければいけません。ブレイクが失敗した銘柄は、買い方の失望売りが出やすく、短期間で元のレンジ下限まで戻ることがあります。

損切りラインの第一候補は、ブレイク前のレンジ上限です。株価が1,000円から1,050円のレンジを上に抜けたなら、1,050円を明確に下回った時点で前提が崩れます。第二候補は20日移動平均線です。ブレイク後に一時的な押しが入っても、20日線を維持している間は上昇基調が残っていると判断できます。第三候補はブレイク日の安値です。短期トレードであれば、ブレイク日の安値を割った時点で撤退する方法も有効です。

損切り幅は、買値から何%下かではなく、チャート上の意味がある価格で決めるべきです。ただし、結果として損切り幅が大きすぎる場合は、その銘柄は見送ります。たとえば買値1,100円、ブレイクライン1,000円なら、損切り幅は約9%です。短期戦略としてはやや大きくなります。この場合は、押し目を待つか、ポジションサイズを小さくします。

リスク管理では、1回の取引で許容する損失額を先に決めます。たとえば運用資金300万円で、1回の損失許容額を1%の3万円に設定します。買値1,100円、損切り1,050円なら1株あたりのリスクは50円です。3万円を50円で割ると600株です。つまり、この条件では600株までが理論上の上限になります。株価の勢いではなく、損失額から株数を逆算することで、トレードの質が安定します。

利確は一括ではなく「伸ばす部分」を残す

急騰銘柄で難しいのは利確です。少し上がっただけで売ると大化けを逃し、欲張りすぎると往復します。ボリンジャーバンド収縮後のブレイクでは、利確を二段階に分けると実践しやすくなります。

第一段階は、リスクに対して一定の利益が出たところで一部を売る方法です。たとえば損切り幅が5%なら、株価が10%上昇した時点で半分を利確します。これはリスクリワード2倍の地点です。半分を売ることで心理的な余裕が生まれ、残りを伸ばしやすくなります。

第二段階は、トレンドが続く限り保有する方法です。具体的には、5日移動平均線を終値で割るまで持つ、10日線を割るまで持つ、または前日安値を終値で割るまで持つなどのルールがあります。短期の急騰狙いなら5日線、数週間の上昇を狙うなら10日線が使いやすいです。どちらを使うかは、銘柄の値動きの荒さと自分の売買スタイルで決めます。

注意したいのは、ボリンジャーバンドの上バンドに沿って上昇するバンドウォークです。強い銘柄は、上バンドを超えたからといってすぐに反落するわけではありません。むしろ上バンド付近を歩くように上昇を続けることがあります。この局面で「上バンドを超えたから割高」と早合点して売ると、最もおいしい部分を逃します。上バンド超えは過熱サインであると同時に、強いトレンドの証拠でもあります。

日足だけでなく週足で位置を確認する

日足でボリンジャーバンドが収縮していても、週足で見ると長期下降トレンドの途中ということがあります。これを無視すると、短期的な上抜けに見えても上値の重い局面を買ってしまいます。日足で候補を見つけたら、必ず週足を確認します。

週足で見たいのは、株価が26週移動平均線を上回っているか、または上回りそうかです。26週線は中期の投資家が意識しやすいラインです。日足でブレイクしても、すぐ上に下向きの26週線があると、そこで売りが出やすくなります。反対に、週足でも横ばいから上向きに変化し、過去数か月の抵抗帯を上に抜けている銘柄は、日足のブレイクが中期上昇に発展しやすくなります。

また、月足で長期の上値抵抗を確認することも有効です。過去に何度も跳ね返された価格帯がすぐ上にある場合、短期の値幅は限定されるかもしれません。急騰狙いでは、上に空白地帯がある銘柄ほど魅力的です。過去の出来高が少ない価格帯は、戻り売りが少なく、株価が軽くなりやすいからです。

ファンダメンタルズを最低限組み合わせる

テクニカル戦略であっても、ファンダメンタルズを完全に無視する必要はありません。むしろ、ボリンジャーバンド収縮後のブレイクに業績改善が重なると、値動きの持続性が高まります。短期資金だけでなく、中期の投資家も参加しやすくなるからです。

最低限チェックしたいのは、売上成長、営業利益率、会社予想の修正余地、自己資本比率、営業キャッシュフローです。すべて完璧である必要はありませんが、少なくとも株価上昇を正当化する材料がある銘柄を優先します。たとえば、売上は横ばいでも原価率改善で営業利益率が上がっている企業、値上げ効果がこれから反映される企業、新製品や新サービスの収益化が始まった企業などです。

逆に、避けたいのは赤字拡大、継続的な営業キャッシュフロー赤字、短期借入依存、希薄化リスクの高い新株予約権発行企業です。こうした銘柄は短期で急騰することもありますが、急落も激しくなります。ボリンジャーバンドの収縮は値動きの前兆であって、企業価値の改善を保証するものではありません。だからこそ、チャートの形だけでなく、最低限の財務安全性を確認します。

監視リストの作り方

この戦略を継続するには、毎日ゼロから銘柄を探すのではなく、監視リストを育てることが重要です。おすすめは三段階のリスト管理です。第一リストは「収縮候補」、第二リストは「ブレイク待ち」、第三リストは「エントリー検討」です。

収縮候補には、バンド幅率が過去120営業日の下位10%以内に入った銘柄を入れます。この段階では数が多くても構いません。次に、株価が60日線以上、売買代金が一定以上、財務リスクが低い銘柄だけをブレイク待ちに移します。最後に、終値で直近高値を超え、出来高が増えた銘柄をエントリー検討に移します。

このリスト運用の利点は、急騰してから慌てて探さなくて済むことです。急騰銘柄は、上がった後にニュースで知ると高値づかみしやすくなります。しかし、収縮段階から監視していれば、ブレイクの意味を事前に理解できます。どこを超えたら強いのか、どこを割ったら失敗なのか、あらかじめ決められます。

具体的には、毎週末に収縮候補を更新し、平日はブレイク待ちリストだけを確認する運用が現実的です。日中にずっと板を見られない投資家でも、終値ベースで判断すれば十分に対応できます。むしろ、ザラ場の細かい値動きに振り回されない分、終値判断のほうが安定する場合もあります。

Pythonで自動化する場合の考え方

銘柄数が多い場合、Pythonでスクリーニングを自動化すると効率が大きく上がります。必要なデータは、日付、始値、高値、安値、終値、出来高です。ここから20日移動平均、20日標準偏差、上バンド、下バンド、バンド幅率、過去120営業日におけるバンド幅率の順位を計算します。

ロジックは複雑ではありません。まず、終値の20日移動平均を計算します。次に、同じ20日間の標準偏差を計算し、上バンドを移動平均プラス標準偏差2倍、下バンドを移動平均マイナス標準偏差2倍とします。その後、バンド幅率を「上バンドマイナス下バンド、割る移動平均」で計算します。最後に、直近のバンド幅率が過去120営業日の中でどの程度低いかを判定します。

抽出条件の例としては、バンド幅率が過去120営業日の下位10%以内、終値が60日移動平均線以上、20日平均売買代金が5,000万円以上、直近高値までの距離が5%以内、という組み合わせが考えられます。ここで直近高値までの距離を入れる理由は、すでに上値抵抗に近づいている銘柄を監視しやすくするためです。収縮していても、ブレイクラインまで遠い銘柄はすぐには動かない可能性があります。

自動化で注意すべき点は、データの調整です。株式分割や併合があると、過去価格との連続性が崩れる場合があります。調整後株価を使う、出来高の異常値を確認する、上場直後でデータ期間が短い銘柄を除外する、といった処理が必要です。また、スクリーニング結果をそのまま買うのではなく、最後はチャートと決算資料で確認する運用にします。自動化は候補を減らす道具であり、判断を丸投げする道具ではありません。

失敗しやすいパターン

この戦略で失敗しやすいのは、収縮を見つけただけで先回り買いをしてしまうケースです。たしかに、ブレイク前に買えれば利益は大きくなります。しかし、収縮期間がさらに長引いたり、下方向に抜けたりするリスクがあります。先回りをするなら、業績材料や需給材料など、上方向に動く根拠が別に必要です。原則は、収縮を見つけたら監視し、上に抜けてから買うことです。

次に多い失敗は、出来高を確認しないことです。薄い出来高で上バンドを超えた銘柄は、少し売りが出ただけで戻されます。特に小型株では、板が薄い時間帯に一部の買いで価格が跳ねることがあります。終値と出来高を確認せずに買うと、翌日に簡単に含み損になります。

三つ目は、損切りを遅らせることです。ブレイク失敗は明確な撤退サインです。それにもかかわらず、「また上がるかもしれない」と保有を続けると、レンジ下限まで戻されることがあります。急騰狙いの戦略では、上がらなかった銘柄に長く資金を拘束すること自体が機会損失です。失敗したら早く切り、次の収縮候補を待つほうが合理的です。

四つ目は、材料株の高値圏で同じロジックを使うことです。すでに数倍になった銘柄が一時的にバンド収縮した場合、それは新しい初動ではなく、天井圏の持ち合いかもしれません。高値圏のスクイーズは上下どちらにも大きく動きます。過去数か月で株価が大きく上がっている銘柄では、初動狙いではなく別の戦略として扱うべきです。

この戦略に向いている相場環境

ボリンジャーバンド収縮後の急騰狙いは、すべての相場で同じように機能するわけではありません。向いているのは、個別株物色が活発で、テーマや業績に資金が回っている相場です。指数が横ばいでも、物色意欲がある相場では、収縮していた個別株が次々と上に放れることがあります。

反対に、指数全体が強い下落トレンドにあるときは成功率が下がります。地合いが悪いと、良い形でブレイクしても翌日に市場全体の売りに巻き込まれます。こうした局面では、買い条件を厳しくする、ポジションサイズを小さくする、利確を早めるなどの調整が必要です。

また、決算シーズン前後は特に注意が必要です。決算前にバンドが収縮している銘柄は、決算発表で上下に大きく動く可能性があります。好決算なら上に飛びますが、期待外れなら大きく下がります。決算をまたぐかどうかは、短期トレードでは重要な判断です。決算内容を読めない状態で持ち越すより、決算後に方向が出てから参加するほうが安定します。

実戦で使うチェックリスト

最後に、ボリンジャーバンド収縮後の急騰銘柄を狙うためのチェックリストを整理します。まず、20日ボリンジャーバンドのバンド幅率が過去120営業日の下位水準にあること。次に、株価が60日線を大きく下回っていないこと。さらに、直近の売買代金が一定以上あり、売買しやすいこと。これらは監視リスト入りの条件です。

次に、買い候補に昇格する条件です。終値で上バンドを超えていること。直近高値またはレンジ上限を終値で超えていること。出来高が20日平均の1.5倍以上、できれば2倍以上に増えていること。日足だけでなく週足でも上値余地があること。財務や業績に明確な危険信号がないこと。ここまで確認して初めて、エントリーを検討します。

そして、買う前に損切りラインと株数を決めます。ブレイクラインを割ったら撤退するのか、20日線割れで撤退するのか、ブレイク日の安値割れで撤退するのかを事前に決めます。許容損失額から株数を逆算し、想定より損切り幅が広い場合は見送ります。急騰しそうだから買うのではなく、外れたときの損失が管理できるから買う。この順番が重要です。

ボリンジャーバンド収縮は「予兆」であって「答え」ではない

ボリンジャーバンド収縮後の急騰狙いは、個人投資家にとって使いやすい戦略です。理由は、複雑な情報端末がなくても、価格、出来高、移動平均線、ボリンジャーバンドという基本データで候補を探せるからです。また、収縮段階から監視できるため、急騰してから慌てて飛びつくよりも冷静に判断できます。

ただし、ボリンジャーバンドの収縮は予兆であり、答えではありません。上に行くか下に行くかは、ブレイクの方向、出来高、地合い、業績、需給を組み合わせて判断する必要があります。収縮を見つけた段階では監視、終値で上に抜けて出来高が増えた段階で検討、損切りラインが明確な場合だけ実行。この三段階を守ることで、感情的な売買を減らせます。

急騰銘柄を取るために必要なのは、未来を当てる能力ではありません。値動きが小さくなった銘柄を事前に見つけ、上に放れた事実を確認し、外れたときの損失を限定する仕組みです。ボリンジャーバンド収縮は、その仕組みを作るための優れた入口になります。派手な材料を追いかけるのではなく、静かなチャートの中に蓄積されたエネルギーを探す。この視点を持てると、急騰銘柄への向き合い方は大きく変わります。

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