信用取引で退場する人の特徴を分析する:レバレッジ管理と生存率を高める実践ルール

投資戦略
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信用取引は「勝てる人をさらに勝たせる道具」ではなく「弱点を拡大する装置」である

信用取引は、現物取引よりも大きな資金を動かせる便利な仕組みです。買いから入る信用買いだけでなく、売りから入る信用売りも使えるため、相場が上がる局面だけでなく下がる局面でも利益を狙えます。資金効率が高く、短期売買との相性も良いため、個人投資家にとって魅力的に見える取引手法です。

しかし、信用取引で重要なのは「利益を大きくできるか」ではありません。最初に考えるべきなのは「想定外の値動きが起きても市場に残れるか」です。信用取引で退場する人の多くは、銘柄分析がまったくできないわけではありません。むしろ、ある程度の知識があり、チャートも見ており、材料も調べています。それでも資金を大きく減らす理由は、分析力ではなく、レバレッジ、損切り、建玉管理、メンタル管理のどこかに構造的な欠陥があるからです。

信用取引は、投資家の長所だけでなく短所も拡大します。判断が早い人は機動力を得られますが、焦りやすい人は高値で飛びつきやすくなります。損切りが上手い人はリスクを限定できますが、損切りが苦手な人は追証リスクを抱えやすくなります。資金管理ができる人は信用枠を戦略的に使えますが、資金管理が甘い人は信用余力を「使えるお金」と錯覚します。

本記事では、信用取引で退場しやすい人の特徴を、単なる精神論ではなく、実際の売買行動・資金管理・需給構造・相場環境の観点から分解します。目的は、恐怖を煽ることではなく、信用取引を使うなら最低限どこを管理すべきかを明確にすることです。

信用取引で退場する人に共通する最大の特徴

信用取引で退場する人の最大の特徴は、「損失が発生した後に考え始める」ことです。勝てる投資家は、エントリー前に損失シナリオを決めています。一方で、退場しやすい投資家は、買った後に下がってから損切りラインを探し、含み損が拡大してから資金管理を考え、追証が近づいてから入金や建玉整理を検討します。

この差は非常に大きいです。相場が落ち着いている時点では、誰でも冷静にルールを作れます。しかし、実際に含み損が膨らみ、板が薄くなり、ニュースが悪化し、SNSで悲観論が増え始めると、人間の判断力は急激に低下します。信用取引では、この判断力が落ちた状態で大きな建玉を抱えていること自体が危険です。

たとえば、自己資金100万円の投資家が信用取引で250万円分の建玉を持ったとします。銘柄が10%下落すると、建玉評価額では25万円の損失です。自己資金に対しては25%のダメージになります。現物で100万円分だけ買っていれば10万円の損失で済んだところが、信用取引では損失率が一気に拡大します。さらに、下落局面では保証金維持率の低下、追証、強制決済という時間制約が加わります。

つまり、信用取引の本質は「値動きのリスク」だけではありません。「時間のリスク」もあります。現物なら数か月待てる局面でも、信用取引では待てないことがあります。この違いを理解せず、現物投資と同じ感覚で信用建玉を持つ人は、相場の急変時に一気に追い込まれます。

特徴1:信用余力を現金と同じように考えてしまう

退場しやすい人は、証券口座に表示される信用余力を「まだ買える金額」として見ます。しかし、信用余力は資産ではありません。あくまで証券会社が一定条件のもとで許容している取引可能枠です。相場が下落すれば、信用余力は急速に縮小します。保有株の評価額が下がれば、保証金としての余裕も減ります。

危険なのは、信用余力がある限り追加で買い増してしまう行動です。最初に100万円分を買い、下がったらさらに100万円、さらに下がったらもう100万円という形で建玉を増やすと、平均取得単価は下がります。しかし同時に、相場が逆行したときの損失額も増えます。ナンピン自体が常に悪いわけではありませんが、信用取引で計画のないナンピンを行うと、資金管理ではなく願望の延長になります。

実践的には、信用余力を「使える枠」ではなく「緊急時の安全余白」として扱うべきです。たとえば、口座上は300万円分まで建てられるとしても、実際に使う建玉は自己資金の1.0倍から1.5倍までに抑える、といった上限を決めます。短期売買に慣れていない段階では、信用建玉総額を自己資金以下に抑えるだけでも生存率は大きく上がります。

信用取引で長く生き残る投資家ほど、枠を余らせます。これは消極的だからではありません。相場が荒れたときに強制的に売らされないためです。強制決済は、投資家にとって最も不利なタイミングで起こりやすいです。余力を残すことは、利益機会を逃す行為ではなく、悪い局面で選択肢を残す行為です。

特徴2:損切りラインを価格ではなく感情で決める

信用取引で退場する人は、損切りラインが曖昧です。「もう少し戻るかもしれない」「ここまで下がったら反発するはず」「材料は悪くないから待てる」といった感情で判断します。しかし、相場は投資家の納得を待ってくれません。特に信用取引では、損切りの遅れが保証金維持率の悪化につながります。

損切りは、負けを認める行為ではなく、次の勝負に資金を残す行為です。重要なのは、エントリー前に「どこまで逆行したら自分の仮説が間違っていたと判断するか」を決めることです。たとえば、長期ボックス上放れを狙って買うなら、ブレイク前の上限を明確に割り込んだ時点で仮説は崩れます。決算後の上昇継続を狙うなら、決算翌日の安値を明確に割った時点で需給が変わった可能性があります。

損切りラインは、購入価格から何%下という単純な設定だけでは不十分です。銘柄のボラティリティ、出来高、材料の質、地合い、建玉サイズを考慮する必要があります。値動きの荒い小型株で3%の損切り幅を設定すると、通常のノイズで刈られる可能性があります。一方で、大型株で15%の損切り幅を許容すると、資金効率が悪化します。

実践ルールとしては、まず1回の取引で失ってよい金額を決めます。たとえば自己資金100万円なら、1回の損失許容額を1万円から2万円に設定します。次に、損切り幅から建玉サイズを逆算します。5%下で損切りするなら、建玉は20万円から40万円程度に抑えます。これなら損切りしても損失は1万円から2万円の範囲に収まります。多くの人は逆に、先に大きく買ってから損切り幅を考えるため、損切りできない金額になってしまいます。

特徴3:上昇相場の成功体験を通常運転だと誤認する

信用取引で危険なのは、最初に勝ててしまうことです。特に強い上昇相場では、多少雑なエントリーでも利益が出ます。信用買いでレバレッジをかければ、短期間で資金が増えることもあります。この成功体験が強いほど、投資家は「自分の判断が正しかった」と感じます。しかし、実際には相場環境が追い風だっただけというケースが多いです。

上昇相場では、悪材料が出ても押し目になり、決算が普通でも買われ、需給が悪くても地合いに助けられます。ところが、相場の潮目が変わると同じ手法が通用しなくなります。押し目だと思って買った場所が下落トレンドの入口になり、ナンピンした銘柄がさらに下がり、反発を待っている間に他の銘柄まで崩れます。

退場する人は、相場環境の変化を認識するのが遅れます。過去数か月の成功パターンに固執し、「前回はここで反発した」「この銘柄は強いはず」と考えます。しかし、市場全体のリスク許容度が下がると、個別銘柄の好材料も評価されにくくなります。特に小型株やグロース株は、地合い悪化時に流動性が細りやすく、信用買い残が多い銘柄ほど売りが売りを呼びます。

対策は、自分の手法がどの相場環境で機能しているのかを記録することです。日経平均やTOPIXのトレンド、グロース市場指数、売買代金、騰落レシオ、信用評価損益率などを見ながら、自分の勝ち負けが地合いに依存していないか確認します。勝っている時ほど建玉を拡大するのではなく、勝っている理由が自分の優位性なのか、単なる地合いなのかを疑う姿勢が必要です。

特徴4:材料株の初動と終盤を区別できない

信用取引で大きく負ける典型例が、材料株への飛びつきです。ニュース、SNS、掲示板、ランキングを見て急騰銘柄を買い、直後に失速するパターンです。材料株の短期売買自体は有効な局面がありますが、初動と終盤を区別できなければ、信用取引では非常に危険です。

初動の材料株は、出来高が急増し、株価が過去の抵抗帯を抜け、まだ市場参加者の認知が広がり切っていない状態です。この段階では、買いが買いを呼びやすく、短期資金の流入も続きやすいです。一方で、終盤の材料株は、すでに株価が大きく上昇し、SNSで話題化し、出来高が極端に膨らみ、板の上下が荒くなります。この段階では、初期から保有していた投資家の利確売りが出やすくなります。

退場しやすい人は、株価が大きく上がった後に「強い銘柄」と判断します。しかし、短期需給の世界では、強く見える瞬間ほどリスクが高いことがあります。特に、寄り付き直後に大きくギャップアップし、その後に高値を更新できない銘柄は注意が必要です。朝の出来高がピークになり、前場後半から売りが優勢になると、信用買いで飛びついた投資家が含み損を抱えやすくなります。

材料株を信用で扱うなら、エントリー前に「自分は初動を買っているのか、終盤の過熱を買っているのか」を判定するルールが必要です。具体的には、直近上昇率、出来高倍率、時価総額、浮動株比率、信用買い残、材料の業績インパクトを確認します。材料が一時的な話題に過ぎないのか、将来の利益に結びつく可能性があるのかも重要です。話題性だけで信用買いする行動は、投資ではなく流動性の薄い椅子取りゲームに近くなります。

特徴5:信用買い残の重さを軽視する

信用取引で退場する人は、銘柄の需給を軽視しがちです。業績や材料が良ければ株価は上がると考えます。しかし、短期から中期の株価は、業績だけでなく需給に大きく左右されます。特に信用買い残が積み上がった銘柄は、上値が重くなりやすいです。

信用買い残が多いということは、将来の売り圧力が多いということです。信用買いはいつか返済売りされます。株価が上がれば利確売りが出ますし、下がれば損切り売りや追証回避の売りが出ます。つまり、信用買い残が多い銘柄は、上昇時にも下落時にも売りが出やすい構造を持ちます。

もちろん、信用買い残が多い銘柄が必ず下がるわけではありません。強い材料があり、出来高が増え、機関投資家や大口資金が入ってくれば、信用買い残を吸収しながら上昇することもあります。しかし、材料が弱く、出来高が減少し、株価が横ばいから下落に転じると、信用買い残は重荷になります。

実践的には、信用倍率だけを見るのではなく、株価推移と信用残の変化をセットで確認します。株価が上がっているのに信用買い残が減っているなら、需給は改善している可能性があります。逆に、株価が下がっているのに信用買い残が増えているなら、含み損を抱えた買い方が増えている可能性があります。この状態で信用買いを重ねると、下落時に同じ方向へ逃げる投資家が多くなり、想定以上に値下がりすることがあります。

特徴6:空売りを簡単だと考える

信用取引では空売りもできます。株価が下がれば利益になるため、下落相場でも収益機会があります。しかし、空売りは買いよりも難しい取引です。理由は、損失が理論上大きくなりやすく、踏み上げが発生すると短期間で大きな損失につながるからです。

退場しやすい人は、「上がり過ぎだから売る」「この材料は大したことがないから売る」といった感覚で空売りします。しかし、相場では割高な銘柄がさらに上がることは珍しくありません。特に、浮動株が少なく、出来高が急増し、空売りが増えている銘柄では、買い戻しが買い戻しを呼ぶ踏み上げ相場が起こります。

空売りで危険なのは、正しい分析をしていてもタイミングが早すぎると負けることです。企業価値に対して株価が明らかに高いとしても、短期資金が集中している間は上昇が続きます。割高だから下がるのではなく、買う人がいなくなり、売る人が増えたときに下がります。この順番を間違えると、理屈では正しくても口座資金が先に尽きます。

空売りを行うなら、逆指値、建玉サイズ、貸借銘柄の需給、逆日歩リスク、日々公表銘柄や増担保規制の有無を確認する必要があります。特に短期急騰銘柄の空売りは、上級者向けです。売りで取るより、過熱が終わるまで待つ、もしくは触らないという判断の方が期待値が高いことも多いです。

特徴7:追証をイベントではなく結果としてしか見ていない

信用取引における追証は、突然発生するように見えます。しかし実際には、追証は日々の建玉管理の結果です。退場しやすい人は、追証が発生してから対応を考えます。一方で、生き残る投資家は、追証が発生する前に危険水準を設定し、建玉を減らします。

追証で最も問題なのは、心理的に不利な状態で判断を迫られることです。追加資金を入れるのか、損切りするのか、建玉を一部整理するのかを短時間で決めなければなりません。しかも、その時点では相場が悪化していることが多く、冷静な判断が難しくなります。

追証を避けるには、保証金維持率の管理をルール化する必要があります。たとえば、法定水準や証券会社の最低水準だけを基準にするのではなく、自分の中でより高い警戒ラインを設定します。保証金維持率が一定水準を下回ったら新規建てを禁止する、さらに下がったら建玉を半分にする、というルールを事前に決めます。

重要なのは、追証を「入金で解決できる問題」と考えないことです。追加資金を入れる行為は、場合によっては損失を拡大するだけになります。もちろん、一時的な急落であり、根拠のあるポジションを維持するために入金する判断が完全に間違いとは限りません。しかし、損切りできない建玉を延命するための入金は、資金管理の失敗を先送りしているだけです。

特徴8:相関の高い銘柄を分散投資だと勘違いする

信用取引でよくある失敗が、複数銘柄に分散しているつもりでも、実際には同じリスクを抱えているケースです。たとえば、半導体関連株を5銘柄、AI関連株を3銘柄、グロース株を数銘柄持っている場合、銘柄数は多く見えます。しかし、市場がグロース株売り、半導体株売りに傾いたときには、ほぼ同時に下落します。

退場しやすい人は、銘柄数だけで分散を判断します。しかし、本当に見るべきなのは相関です。同じテーマ、同じ業種、同じ指数、同じ投資家層に買われている銘柄は、下落時に同じ方向へ動きやすいです。信用取引で相関の高い建玉を積み上げると、地合い悪化時に損失が同時多発的に発生します。

実践的には、ポートフォリオを「銘柄数」ではなく「リスク要因」で分類します。グロース株リスク、金利上昇リスク、円高リスク、半導体サイクルリスク、小型株流動性リスクなど、自分の建玉がどのリスクに偏っているかを確認します。もし同じリスクに集中しているなら、建玉を減らすか、現物中心に切り替える判断が必要です。

信用取引では、分散しているつもりでも、実際にはレバレッジをかけた集中投資になっていることがあります。口座全体の建玉を見て、「同じ日に全部下がる可能性があるか」と自問するだけでも、危険な偏りに気づきやすくなります。

特徴9:勝率だけを見て期待値を見ていない

信用取引で退場する人は、勝率を重視しすぎる傾向があります。小さな利益を積み上げる売買は気分が良く、勝っている感覚を得やすいです。しかし、勝率が高くても、1回の負けが大きければ資金は減ります。

たとえば、10回中8回勝つ手法があったとします。1回の勝ちが1万円、1回の負けが8万円なら、8勝2敗でも収支はマイナス8万円です。信用取引では、損切りを遅らせることで一時的に勝率を高く見せることができます。含み損を確定しなければ負けとして記録されないからです。しかし、それは勝率ではなく、損失の先送りです。

期待値を見るには、平均利益、平均損失、勝率をセットで確認します。重要なのは、自分の売買が「小さく勝って大きく負ける構造」になっていないかです。特に信用取引では、損失側の尻尾が太くなりがちです。普段は小さく勝っていても、急落、決算ミス、悪材料、地合い悪化で一撃の損失が出ると、それまでの利益が吹き飛びます。

対策として、売買記録には必ず最大含み損、損切り理由、建玉サイズ、保有日数を記録します。利益確定した取引だけを見ると上手く見えても、最大含み損が大きすぎる場合、その手法は危険です。信用取引では、確定損益だけでなく、途中でどれだけ資金を危険にさらしたかを見る必要があります。

特徴10:売買記録を残さず、記憶で反省する

退場しやすい投資家ほど、売買記録が曖昧です。どの銘柄で、なぜ入って、どこで損切りする予定で、実際にどう行動したのかを残していません。そのため、同じ失敗を繰り返します。記憶による反省は、都合よく書き換わります。大きく負けた取引ほど「たまたま運が悪かった」と考え、小さく勝った取引ほど「自分の判断が正しかった」と感じやすいです。

信用取引では、売買記録がリスク管理そのものになります。記録すべき項目は複雑である必要はありません。銘柄名、エントリー理由、建玉金額、損切りライン、利確予定、実際の決済理由、最大含み損、反省点を残すだけで十分です。特に重要なのは、エントリー前の仮説を書くことです。

エントリー前に仮説を書いておけば、損切りすべき場面が明確になります。たとえば「決算後の上昇継続を狙う。5日移動平均線を終値で割ったら撤退」と書いていれば、5日線を割った時点で判断できます。ところが、仮説を書いていないと、株価が下がった後に別の理由を探し始めます。「長期では良い会社」「配当もある」「材料はまだ残っている」と考え、短期売買だったはずが塩漬けになります。

信用取引では、短期の失敗を長期投資に変換する行動が危険です。現物ならまだ選択肢がありますが、信用取引には期限、金利、保証金維持率があります。売買記録は、自分が最初に何を狙っていたのかを思い出すためのブレーキです。

信用取引で生き残るための実践ルール

ルール1:建玉総額に上限を設ける

信用取引を使うなら、最初に建玉総額の上限を決めます。経験が浅い段階では、信用建玉の合計を自己資金の100%以内に抑えるのが現実的です。慣れてきても、常時フルレバレッジに近い状態は避けるべきです。相場が急変したとき、余力がない投資家から順番に不利な決済を迫られます。

たとえば自己資金200万円の場合、信用建玉は最大でも200万円から300万円程度に抑えます。さらに、1銘柄あたりの建玉は口座資金の10%から20%程度に制限します。これにより、1銘柄の急落で口座全体が致命傷を負うリスクを下げられます。

ルール2:1回の損失許容額を固定する

建玉サイズは、銘柄への期待ではなく損失許容額から逆算します。自己資金200万円なら、1回の損失を1%、つまり2万円以内に抑えると決めます。損切り幅が5%なら、建玉は40万円までです。損切り幅が10%必要な銘柄なら、建玉は20万円までです。

この考え方を徹底すると、値動きの荒い銘柄ほど自然に建玉が小さくなります。多くの個人投資家は、値動きが大きい銘柄ほど大きく買いたくなります。しかし、それはリスクを二重に取る行動です。ボラティリティが高い銘柄は、建玉を小さくすることで初めて扱える対象になります。

ルール3:信用取引で長期塩漬けをしない

信用取引は、基本的に短期から中期の戦術に向いた道具です。長期で保有したい銘柄は、現物で持つ方が心理的にも資金管理上も安定します。信用取引で長期塩漬けになると、金利負担、期限、保証金維持率、機会損失が重なります。

短期狙いで入った建玉が下がったときに、「長期では期待できる」と考え始めたら危険サインです。それは投資方針の変更ではなく、損切り回避の言い訳になっている可能性があります。長期で持つ価値があるなら、いったん信用建玉を整理し、改めて現物で保有するかを判断する方が合理的です。

ルール4:地合いが悪い日は新規建てを減らす

個別銘柄のチャートが良く見えても、地合いが悪い日は成功確率が下がります。特に信用取引では、指数の下落、米国市場の急落、為替急変、金利上昇、先物主導の売りが発生している日は注意が必要です。良い銘柄でも、地合いに巻き込まれて下がることがあります。

実践的には、前日の米国市場、日経平均先物、為替、主要セクターの強弱、グロース市場の売買代金を確認します。地合いが悪い日は、勝負するよりも建玉を減らす日と位置づけます。信用取引で重要なのは、毎日利益を取りに行くことではなく、勝ちやすい日に集中し、負けやすい日に休むことです。

ルール5:決算跨ぎの建玉を制限する

決算発表は、信用取引における大きなリスクイベントです。どれだけ事前に分析しても、発表後の株価反応は予測し切れません。好決算でも材料出尽くしで下がることがありますし、悪決算でも悪材料出尽くしで上がることがあります。信用取引で大きな建玉を持ったまま決算を跨ぐと、翌日のギャップダウンで損切りラインを大きく超える可能性があります。

決算跨ぎを完全に避ける必要はありませんが、建玉サイズを通常より小さくする、含み益がある場合だけ一部残す、決算前に半分利確するなど、事前にルールを決めるべきです。決算後に方向性が出てから入る方が、リスクは低くなります。

具体例:退場しやすい売買と改善後の売買

自己資金100万円の投資家が、急騰している小型株を信用で200万円分買ったとします。買った理由は、SNSで話題になっており、出来高も急増していたからです。損切りラインは決めていません。翌日、株価は寄り付きで高く始まったものの、その後に失速し、終値で8%下落しました。この時点で損失は16万円です。自己資金に対して16%の損失です。

投資家は「材料はまだ生きている」と考え、損切りせずに保有します。さらに翌日も下落し、追加で100万円分をナンピンします。平均単価は下がりましたが、建玉総額は増えました。その後、地合い悪化でさらに下落し、保証金維持率が急低下します。ここでようやく損切りを検討しますが、損失額が大きすぎて決断できません。最終的に追証回避のために安値圏で投げることになります。

改善後の売買では、同じ銘柄を見つけても、まず損失許容額を決めます。自己資金100万円なら、1回の損失は1万円から1万5千円までです。銘柄の値動きが荒く、損切り幅を7%取る必要があるなら、建玉は15万円から20万円程度にします。さらに、直近高値を更新できずに5分足や日足で失速した場合は撤退、決算や追加材料がなければ翌日へ持ち越さない、と決めます。

この改善後の売買では、大きく勝つ可能性は下がるかもしれません。しかし、致命傷を避けられます。信用取引で重要なのは、1回の勝負で資金を倍にすることではなく、何十回、何百回と取引しても市場に残ることです。退場しなければ、相場のチャンスは何度も訪れます。

信用取引を使う前に確認すべきチェックリスト

信用取引を行う前には、毎回次の項目を確認することが有効です。第一に、なぜその銘柄を買う、または売るのかを一文で説明できるか。第二に、損切りラインはどこか。第三に、損切りした場合の損失額はいくらか。第四に、その損失額は口座資金に対して許容範囲か。第五に、同じリスクを持つ建玉をすでに抱えていないか。第六に、決算や重要イベントを跨がないか。第七に、地合いは新規建てに適しているか。

このチェックリストに答えられない場合、その取引は見送るべきです。信用取引では、見送る判断も立派な戦略です。多くの退場者は、エントリーしないリスクを恐れます。つまり、上がってしまったら悔しい、乗り遅れたくないという感情です。しかし、本当に恐れるべきなのは、資金を失って次のチャンスに参加できなくなることです。

チェックリストは、投資家の感情を抑えるための仕組みです。相場が動いている最中に完璧な判断をするのは難しいため、事前にルールを用意しておく必要があります。ルールがあるから勝てるのではなく、ルールがあるから大きく負けにくくなります。そして信用取引では、大きく負けにくいことが長期的な優位性につながります。

信用取引に向いている人と向いていない人

信用取引に向いているのは、損切りを機械的に実行できる人、建玉サイズを数字で管理できる人、相場環境が悪いときに休める人です。また、自分の間違いを早く認められる人も信用取引に向いています。信用取引では、正しさに固執するより、間違ったときに小さく撤退する能力が重要です。

一方で、信用取引に向いていないのは、含み損を見ると冷静さを失う人、損切りを先送りする人、短期間で資金を増やしたい気持ちが強すぎる人です。また、生活資金に近いお金で信用取引をする人も危険です。信用取引は、余裕資金の中でもさらにリスク許容度の高い部分で行うべきです。

信用取引を使わなくても、投資で成果を出すことは可能です。現物投資、積立投資、高配当株投資、ETF投資など、レバレッジを使わない選択肢はいくらでもあります。信用取引を使う理由が「早く儲けたい」だけなら、使わない方が良いです。明確な戦略、損失管理、撤退ルールがある場合に限って、信用取引は有効な道具になります。

まとめ:信用取引で勝つ前に、まず退場しない設計を作る

信用取引で退場する人の特徴は、銘柄選びの失敗だけではありません。信用余力を使い切る、損切りを感情で判断する、上昇相場の成功体験を過信する、材料株の終盤に飛びつく、信用買い残を軽視する、空売りを簡単に考える、追証を事前に管理しない、相関の高い建玉を分散と誤認する、勝率だけを見て期待値を見ない、売買記録を残さない。これらが重なることで、1回の失敗が致命傷になります。

信用取引は、強力な道具です。しかし、強力な道具ほど扱いを間違えたときの損害も大きくなります。大切なのは、利益を最大化する前に、損失を限定する設計を作ることです。建玉総額の上限、1回の損失許容額、損切りライン、決算跨ぎルール、地合い判断、売買記録。この基本を徹底するだけで、退場リスクは大きく下がります。

相場で長く生き残る投資家は、常に勝ち続けているわけではありません。負けるときに小さく負け、危険な相場で無理をせず、次のチャンスに資金を残しています。信用取引で目指すべきは、短期的な大勝ちではなく、長期的に市場へ参加し続けられる状態です。退場しないことは、投資における最も実践的な優位性です。

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