- 新月・満月アノマリーとは何か:結論から言うと「単体では弱い」が「条件を絞ると武器になる」
- なぜ月齢が相場に影響し得るのか:合理的な仮説を3つだけ持つ
- 初心者が最初にハマる罠:検証以前にやってはいけないこと
- 使い方の基本設計:「月齢はトリガーではなく、タイミングフィルター」
- 具体例1:株価指数の「反転狙い」ではなく「押し目の拾い方」を整える
- 具体例2:暗号資産での扱い方:24時間市場は「窓」が増えるので作法が変わる
- 具体例3:FX(ドル円)の場合:介入ラインや指標とぶつかると月齢は消える
- 統計検証の最短ルート:難しい数式は不要、ただし手順は厳格に
- 「使える」判定基準:平均リターンより“崩れ方”を見る
- 実戦ルールのテンプレ:初心者が壊れにくい「3点セット」
- まとめ:月齢は「当てる道具」ではなく「待つ理由」を作る道具
新月・満月アノマリーとは何か:結論から言うと「単体では弱い」が「条件を絞ると武器になる」
新月・満月アノマリーとは、月齢(新月・満月)付近で価格が転換しやすい、あるいはリターン分布が偏る、という経験則です。占いの類ではなく、あくまで「統計で観測されることがある偏り」をどう扱うかがテーマです。
先に重要点を言い切ります。新月・満月だけで売買すると、ほとんどの場合は期待値が安定しません。理由はシンプルで、月齢イベントは頻度が高く(ほぼ月2回)シグナルの質が薄まりやすいからです。逆に言えば、市場レジーム(ボラティリティ・トレンド・需給イベント)を条件にして「いつ効きやすいか」を限定すると、エントリーのタイミング規律として使える余地があります。
なぜ月齢が相場に影響し得るのか:合理的な仮説を3つだけ持つ
アノマリーを扱うときは、完璧な因果を証明する必要はありません。ただし「検証で潰せる仮説」を持たないと、偶然に踊らされます。ここでは実務的に使える仮説を3つに絞ります。
仮説1:注意資源(アテンション)と行動の同期。月齢はカレンダーのように広く認知され、SNSやメディアで言及が増える局面があります。言及が増えると、短期勢の“同時発火”が起き、薄い需給を揺らすことがあります。
仮説2:月次サイクルと混同される。月初・月末の資金フロー、ポジション調整、オプションのガンマ、先物ロールなど、月齢とは無関係な月次要因が同時に走ることがあります。月齢効果に見えるものが、実は月次需給の反映というケースが頻発します。
仮説3:ボラティリティ状態に依存。静かな相場ではノイズに埋もれ、荒れた相場では“節目”が目立ちやすい。月齢は「転換点の候補日」を与えるだけで、実際に反転するかはボラとトレンドが決めます。
初心者が最初にハマる罠:検証以前にやってはいけないこと
アノマリー系で初心者が損を出しやすいのは、売買ルールではなく「検証の作法」を間違えるからです。ここを押さえるだけで、無駄な時間と損失が減ります。
罠1:後出しで期間を選ぶ。例えば「ここ数年は効いている」と言って期間を切り出すと、ほぼ確実に過学習です。最低でも複数レジーム(強気・弱気・レンジ)を含む長期で見ます。
罠2:新月/満月の“当日”固定。市場は先回りします。実務では「前後N営業日」をイベント窓として扱い、その中で最も安定する窓幅を固定します(例:±1日、±2日)。
罠3:リターンだけを見る。勝率より大事なのは損失の尾(テール)です。特に指数やFXは急変があり、アノマリーの平均リターンがプラスでも、数回の大損で崩壊します。最大ドローダウンと損益分布を必ず確認します。
使い方の基本設計:「月齢はトリガーではなく、タイミングフィルター」
実戦で使いやすい設計は、月齢を“売買方向を決めるスイッチ”にしないことです。月齢は「仕掛けの候補日」を絞るフィルター、方向は別のロジックで決めます。
例えば次のように分業します。
(1)方向決定:トレンド(移動平均や高値安値更新)または需給(指数リバランス、決算、金利イベント)で決める。
(2)タイミング:新月・満月の前後でのみエントリーを許可する。これで“ムダなトレード”を削り、シグナル密度を上げます。
(3)撤退:ボラティリティ基準(ATRや直近レンジ)で損切りと利確を機械化する。月齢で手仕舞いを決めない。
具体例1:株価指数の「反転狙い」ではなく「押し目の拾い方」を整える
新月・満月は「反転狙い」の誘惑が強いですが、初心者ほど逆張りで焼かれます。代わりに、上昇トレンド中の押し目拾いに寄せます。ルール例を提示します。
ルール案(指数:S&P500やTOPIX先物など)
・トレンド判定:終値が200日移動平均の上、かつ50日移動平均が上向き。
・イベント窓:新月の前後2営業日。
・エントリー条件:イベント窓の中で、終値が前日比マイナス、かつ日中安値が20日移動平均付近(乖離が小さい)で引けが下ヒゲ気味。
・損切り:エントリー価格から2ATR下。
・利確:直近高値更新で半分、残りはトレーリング。
この設計の狙いは、月齢の「節目感」を使って押し目の候補日を絞り、トレンドに逆らわないことです。新月を使うのは、心理的に“新しいサイクル”が意識され、押し目が拾われやすい局面が統計上出ることがあるためです。ただし市場によって効き方は変わるので、必ず自分の対象(日本株、米株、先物)で検証します。
具体例2:暗号資産での扱い方:24時間市場は「窓」が増えるので作法が変わる
ビットコインなどの暗号資産は24時間取引で、週末も止まりません。これは月齢アノマリーにとって重要で、イベント窓を「営業日」ではなく「24時間の時間窓」で扱う必要があります。
例えば「新月時刻±36時間」など、時刻ベースにします。さらに暗号資産はボラが高く、損切りを固定幅にすると破綻しがちです。ATRや実現ボラでポジションサイズを調整します。
ルール案(BTC)
・レジーム条件:7日実現ボラが過去120日中央値より低い(静かな局面)。
・イベント窓:満月時刻±36時間。
・エントリー:イベント窓内でボリンジャーバンドがスクイーズ→上抜けで順張り、下抜けでショート(先物が使える場合)。
・撤退:エントリー後の1日足で逆方向の包み足が出たら撤退。
ここでは満月を“反転”としてではなく、“ブレイクが起こりやすい日程”の仮説として使っています。暗号資産はニュースや清算(レバレッジのロスカット)で急変するため、月齢は単独では弱いですが、低ボラ→収縮→放れの局面に限定すれば、エントリーの「待つ理由」になります。
具体例3:FX(ドル円)の場合:介入ラインや指標とぶつかると月齢は消える
FXは金利・指標・当局の発言で動くので、月齢の優先度は低いです。だからこそ、月齢を使うなら「イベント衝突」を避けるルールを先に作ります。
例えばドル円であれば、重要指標(雇用統計、CPI、FOMC、日銀会合)前後は月齢窓を無効化します。さらに150円のような心理的節目やオプションバリアがあると、月齢よりオーダーが勝ちます。
実戦の考え方:月齢窓に入っているからと言って取引するのではなく、「他に強い材料が無い」ことを確認して初めて月齢をタイミングに採用します。
統計検証の最短ルート:難しい数式は不要、ただし手順は厳格に
初心者でもできる検証手順を、余計な理論を省いて提示します。ポイントは「同じ手順で繰り返す」ことです。
手順1:イベント日の定義を固定。新月/満月の日時を取得し、対象市場の時間足に合わせて「イベント窓」を作ります(株なら営業日ベース、暗号なら時刻ベース)。
手順2:比較対象を作る。イベント窓のリターンと、同じ長さの“非イベント窓”のリターンを比較します。イベント窓だけ見ても意味がありません。
手順3:条件で分割。トレンド有無(200MA上/下)、ボラ高低、重要イベント週(FOMC週など)を分けて、どこで差が出るかを見ます。差が出るなら、そこが“使える場所”です。
手順4:ウォークフォワード。過去で決めたパラメータ(±何日、ボラ閾値など)を未来期間で固定し、成績が維持されるか確認します。ここで崩れるなら、そのアノマリーは偶然です。
「使える」判定基準:平均リターンより“崩れ方”を見る
アノマリー系は、平均が良くても崩壊しやすいです。だから判定は次の順で行います。
(1)最大ドローダウンが現実的か(資金量に対して耐えられるか)。
(2)負けが連続した時の回復に時間がかかりすぎないか。
(3)手数料・スリッページを入れてもプラスか(短期ほど致命的)。
(4)特定の年だけで勝っていないか(1年勝ち、他負けはアウト)。
ここをクリアして初めて、月齢を“戦略の一部品”として採用します。
実戦ルールのテンプレ:初心者が壊れにくい「3点セット」
最後に、月齢を使うときの壊れにくいテンプレを提示します。これを土台に自分の市場へ合わせて調整します。
テンプレA:順張り+タイミング限定
・方向:中期トレンドに順張り(MA、ブレイクアウトなど)。
・タイミング:新月/満月の前後だけエントリー許可。
・撤退:ATR基準で損切り、利確は分割。
テンプレB:レンジ相場の平均回帰+“材料が無い週”限定
・方向:RSIダイバージェンスやレンジ上限下限で逆張り。
・タイミング:満月付近だけ(転換しやすいと仮定)。
・無効化:重要イベント週は全停止。
テンプレC:ボラ収縮からの放れ+時刻窓(暗号向け)
・方向:ブレイク方向に順張り。
・タイミング:新月/満月時刻±36時間。
・撤退:逆包み足、またはトレーリング。
まとめ:月齢は「当てる道具」ではなく「待つ理由」を作る道具
新月・満月アノマリーは、単体の売買サインとしては弱いことが多い一方、タイミング規律としては意外に役に立ちます。重要なのは、(1)使えるレジームを限定し、(2)比較対象を置いた検証で偶然を排除し、(3)撤退ルールを先に決めることです。
月齢に“物語”を求めると危険ですが、統計の一部として淡々と扱えば、トレードの再現性が上がります。まずは自分が主戦場にしている1市場・1時間足・1テンプレで、過去データから検証してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身で行ってください。


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