新月満月アノマリーを「儲け話」にしないための統計検証と実践ルール——カレンダー効果を武器にする方法

投資手法

「新月や満月の前後で相場が転換しやすい」という話を見たことがあると思います。結論から言うと、新月満月アノマリーは“当たることもあるが、雑に扱うと簡単に負ける”タイプのカレンダー効果です。理由は単純で、ルールが曖昧になりやすく、検証を省いたまま“それっぽい日”にポジションを持ってしまうからです。

この記事では、新月満月アノマリーをオカルトとして消費せず、統計で潰し込み、実行可能な売買ルールに落とすための手順を、初心者でも理解できるレベルから、実務的な検証の落とし穴まで含めて徹底的に解説します。個別銘柄よりも指数やETFで扱う前提にして、再現性を高めます。

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  1. 新月満月アノマリーとは何か:定義を曖昧にしない
    1. まず固定すべき3つの定義
  2. なぜ起きると考えられているか:理屈は「行動」寄り
  3. 検証の前提:個別銘柄ではなく指数(ETF)から始める
  4. 実務的バックテスト手順:これだけは外すな
    1. ステップ1:ルールを先に文章で固定する
    2. ステップ2:サンプル期間を十分に取る(最低10年、できれば20年)
    3. ステップ3:コスト控除とスリッページを先に入れる
    4. ステップ4:アウト・オブ・サンプル(分割検証)をやる
  5. 「よくある勝ち方」の型:3つの実装パターン
    1. パターンA:月齢は“エントリー日フィルター”として使う(最も堅い)
    2. パターンB:月齢で“リスク量”を変える(攻守のスイッチ)
    3. パターンC:月齢×ボラティリティで“逆張り”を組む(難易度高)
  6. 具体例:指数ETFで作る「新月フィルター押し目買い」
    1. ルール例(S&P500連動ETF想定)
    2. このルールが初心者に向く理由
  7. 月齢アノマリーの落とし穴:ここで大半が死ぬ
    1. 落とし穴1:後出しの期間調整(データスヌーピング)
    2. 落とし穴2:相場環境の変化を無視する
    3. 落とし穴3:個別銘柄に横展開して破綻する
    4. 落とし穴4:取引回数の増加でコスト死する
  8. 勝率より重要:期待値とドローダウン管理
  9. 実運用の設計:最小構成のチェックリスト
    1. ①対象を1つに固定する
    2. ②ルールを紙に書いてから注文する
    3. ③記録を残す(理由・条件・感情)
    4. ④月次で“壊れていないか”を点検する
  10. まとめ:月齢は「当てに行く」ほど負ける

新月満月アノマリーとは何か:定義を曖昧にしない

新月満月アノマリーは、月齢(新月・満月)を境に、株価が上昇・下落しやすい、あるいは転換しやすいという仮説です。ここで重要なのは、「前後」や「転換」の定義を最初に固定することです。これを曖昧にすると、後から都合よく期間を動かして“当たったことにする”検証になり、再現性が消えます。

まず固定すべき3つの定義

①イベント日(新月/満月)の取り扱い:当日を0日として、前後何営業日をウィンドウにするか。例:±2営業日、±3営業日、±5営業日。

②エントリーのタイミング:イベント日の寄りで入るのか、前日引けで入るのか、イベント翌日寄りで入るのか。日本株なら寄り・引けのギャップが効くため、ここを固定しないと結果が変わります。

③エグジットのルール:固定保有日数(例:3営業日)なのか、逆イベント(新月→満月)で手仕舞うのか、テクニカル(移動平均割れ等)で手仕舞うのか。

なぜ起きると考えられているか:理屈は「行動」寄り

月齢が企業業績を変えるわけではありません。仮に効果があるとしても、原因は投資家の行動・センチメントに近いと考えるのが自然です。例えば、睡眠や気分の変動、ニュースの受け取り方、リスク選好の微妙な揺れが集計されて、指数レベルでわずかな差として現れる、というイメージです。

ただし、ここで重要なのは「理屈がそれっぽい」ことではありません。トレードで必要なのは、(1)効果の有無、(2)コスト控除後に残るか、(3)崩れたときに致命傷を避けられるかの3点です。理屈は後回しで構いません。

検証の前提:個別銘柄ではなく指数(ETF)から始める

初心者がアノマリーを扱うときに一番危険なのは、個別銘柄で「たまたまうまくいった」経験を一般化してしまうことです。個別銘柄は材料や需給で一撃が来るので、月齢のような微弱な効果は簡単に上書きされます。

最初は以下のような「市場全体」に近いものを使います。

・日本株:TOPIX連動ETF、日経平均連動ETF
・米国株:S&P500連動ETF、NASDAQ100連動ETF
・先物:指数先物(ただし初心者はレバレッジ管理が難しいので、まずETF推奨)

実務的バックテスト手順:これだけは外すな

新月満月アノマリーは、統計的には「エッジが薄い」ケースが多いです。だからこそ、検証を雑にすると簡単に錯覚します。ここでは、個人でも再現できるレベルで、最低限の検証手順を示します。

ステップ1:ルールを先に文章で固定する

コードより前に、ルールを日本語で1枚にまとめます。例:

「新月当日の寄りで買い、3営業日後の引けで売る。満月当日の寄りで売り(または買いを避ける)、3営業日後の引けで手仕舞う。売買対象はS&P500連動ETF。手数料とスプレッドを片道0.03%として控除する。」

この段階で曖昧なら、その後の検証は全部“物語”になります。

ステップ2:サンプル期間を十分に取る(最低10年、できれば20年)

月齢イベントは月に2回程度です。10年でも約240回前後しかありません。ここからさらに「新月だけ」「満月だけ」「上昇相場だけ」などで分けると、すぐにサンプルが枯れます。サンプル不足の戦略は、たいてい実運用で破綻します。

ステップ3:コスト控除とスリッページを先に入れる

薄いエッジはコストで消えます。指数ETFでも、売買回数が増えれば無視できません。さらに、イベント日周辺は“それっぽい戦略”が混雑しやすく、指値が刺さらない・寄りが荒れることもあります。最初から悲観的にコストを見積もるのが正解です。

ステップ4:アウト・オブ・サンプル(分割検証)をやる

例えば、2006–2015年でルール候補を決め、2016–2025年で検証します。前半でよく、後半で悪いなら、それは偶然の可能性が高いです。月齢に限らず、カレンダー効果は市場構造の変化(ETF比率、アルゴ、手数料、金利環境)で崩れます。

「よくある勝ち方」の型:3つの実装パターン

ここからは、実装しやすい形に落とし込みます。重要なのは、月齢単体で勝とうとしないことです。月齢は「トリガー(仕掛けのタイミング)」として使い、方向性は別の条件で縛る方が安定しやすいです。

パターンA:月齢は“エントリー日フィルター”として使う(最も堅い)

例:あなたが普段から「押し目買い」をしたいとします。押し目の条件(例:20日移動平均近辺、RSIが30–40帯、出来高落ち着き)を満たした銘柄や指数に対して、新月の前後だけエントリーを許可します。

こうすると、月齢単体の弱さを、テクニカルの優位性で補えます。月齢は「やる日・やらない日」を決めるだけです。初心者にはこの型が一番現実的です。

パターンB:月齢で“リスク量”を変える(攻守のスイッチ)

月齢で方向を決めるのではなく、ポジションサイズを変える方法です。例えば、あなたが長期で株式(S&P500など)を積み立てているなら、新月近辺だけ買い増し比率を上げ、満月近辺は買い増しを抑える、という形です。

これなら、仮に効果が薄くても、長期のコア運用を壊しません。さらに、心理的にも「当てに行く」より「偏りを利用する」のでブレが少ないです。

パターンC:月齢×ボラティリティで“逆張り”を組む(難易度高)

相場が荒れている局面(VIX上昇、日中の実現ボラが高い)では、転換が起きやすいという前提を追加し、満月前後で恐怖がピークになりやすいなら逆張り、という考え方です。

ただしこれは難しいです。逆張りは損切りが遅れると致命傷になり、月齢の“当たり外れ”以上に、リスク管理の出来で成績が決まります。初心者は、AかBから入るべきです。

具体例:指数ETFで作る「新月フィルター押し目買い」

ここでは、具体的なルール例を提示します。これは「そのまま儲かる」ためのテンプレではなく、あなたが検証しやすい“たたき台”です。

ルール例(S&P500連動ETF想定)

前提:日足データで運用。取引は1回あたり資金の最大20%まで。
エントリー条件:
・新月日を0日として、-1〜+2営業日の間に条件を満たしたら買い
・価格が20日移動平均の±1%以内(「押し目の浅い戻り」想定)
・RSI(14)が45以下(過熱を避ける)

エグジット条件:
・エントリー後、5営業日経過で引け決済(時間で切る)
・または、終値が20日移動平均を2%下回ったら翌日寄りで損切り

狙い:押し目買いの中でも「エントリーの偏り(新月近辺)」を使って、無駄な取引回数を減らし、心理的に入りやすい日を選別します。

このルールが初心者に向く理由

ポイントは3つです。
(1) 方向性は“上昇トレンド”に寄せる(移動平均近辺での押し目)。
(2) 損切りが明確(移動平均からの乖離)。
(3) 保有期間が短く、検証しやすい(5営業日固定)。

月齢アノマリーの落とし穴:ここで大半が死ぬ

アノマリー系の戦略で、初心者が崩れるポイントを先に潰します。ここは“読み物”ではなく、損失回避のチェックリストです。

落とし穴1:後出しの期間調整(データスヌーピング)

「±2日だと弱いから±4日にする」「満月だけ反応が薄いから満月は除外する」など、結果を見て条件をいじると、どんな戦略も良く見えます。これは統計的にほぼ確実に将来成績を悪化させます。期間や条件をいじったら、必ず別期間で再検証が必要です。

落とし穴2:相場環境の変化を無視する

低金利・量的緩和の時代と、高金利・QTの時代では、リスク資産の値動きが変わります。月齢効果があったとしても、方向が逆転することすらあります。だから、単純な「新月買い・満月売り」を固定化して信仰するのは危険です。

落とし穴3:個別銘柄に横展開して破綻する

指数でうまくいったルールを、ボラの高い小型株やテーマ株に持ち込むと、月齢の微弱な効果は消えます。さらにギャップダウンで損切りが滑ることもあります。月齢は市場全体の平均的な揺れを扱うほうが理にかないます。

落とし穴4:取引回数の増加でコスト死する

月に2回のイベントでも、複数銘柄に同時に仕掛ければ売買回数は増えます。小さなエッジを狙う戦略は、コストに敏感です。「やる銘柄(または指数)を絞る」こと自体が優位性になります。

勝率より重要:期待値とドローダウン管理

初心者は「勝率」を気にしがちですが、アノマリーでは特に危険です。勝率が高くても、負ける時に大きく負ければ資金は減ります。見るべきは以下です。

・1回あたりの期待値(平均損益)
・最大ドローダウン(ピークからの最大下落)
・連敗耐性(最大連敗回数、連敗時の損失幅)
・損益分布(たまに大きく勝つ型か、コツコツ型か)

月齢アノマリーはエッジが薄い分、連敗や横ばい期間が必ず来る前提で組みます。資金の全力投入は論外です。

実運用の設計:最小構成のチェックリスト

最後に、実際に回すための「最小構成」を提示します。ここを満たせば、少なくとも“雰囲気トレード”にはなりません。

①対象を1つに固定する

最初の3か月は、指数ETFを1つだけ。新月満月でいくつも触ると、検証と改善の因果が見えません。

②ルールを紙に書いてから注文する

「今日は新月っぽいから買う」は禁止です。新月日、ウィンドウ、エントリー条件、エグジット条件、損切り、ロットが揃って初めて注文します。

③記録を残す(理由・条件・感情)

アノマリーは心理に引っ張られます。エントリー時に「なぜ入ったか」「条件は満たしたか」「迷いはあったか」を1行でいいので残すと、改善が早くなります。

④月次で“壊れていないか”を点検する

月齢効果が継続している保証はありません。月次で、期待値とドローダウンが想定内か、売買コストが増えていないか、ルール逸脱がないかを確認します。これができないなら、月齢は手を出さないほうがいいです。

まとめ:月齢は「当てに行く」ほど負ける

新月満月アノマリーを使うなら、姿勢は一つです。“小さな偏りを、ルールで拾う”。これだけです。月齢だけで方向を当てに行くと、検証不足・過剰最適化・コスト負けの三重苦になりやすい。

一方で、指数やETFを対象に、押し目買いのフィルターとして使ったり、買い増し比率を調整する用途なら、初心者でも「やり過ぎずに試す」ことができます。まずはルールを固定し、コストを入れたバックテストで現実を見てから、小さなサイズで運用してください。

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