人手不足で利益が伸びる企業を探す実践的な銘柄発掘法

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人手不足は「悪材料」ではなく、企業を選別する強力な材料になる

人手不足と聞くと、多くの投資家は「人件費が上がる」「採用できない」「店舗を増やせない」といったマイナス面を連想します。確かに、労働集約型の企業にとって人手不足は深刻な逆風です。アルバイトを集めるために時給を上げ、社員の離職を防ぐために給与を上げ、採用広告費も増える。これだけを見ると、利益率は下がりやすくなります。

しかし、株式投資で重要なのは「人手不足そのもの」ではなく、「人手不足によって業界内の利益配分がどう変わるか」です。人手不足が進むと、すべての企業が同じように苦しくなるわけではありません。むしろ、人を減らせる仕組みを持つ企業、人手不足に悩む企業へサービスを売る企業、値上げを通せる企業、採用難を競合退場のきっかけにできる企業には追い風になります。

たとえば、同じ外食企業でも、厨房工程を標準化し、券売機やモバイルオーダーを導入し、少人数で回せる店舗モデルを作った企業は、人件費上昇を吸収しやすくなります。一方、熟練スタッフに依存し、注文・会計・調理・配膳の大部分を人力で行う企業は、売上が伸びても利益が残りにくくなります。この差は、数年かけて営業利益率や店舗当たり利益に表れます。

つまり、人手不足テーマで狙うべきなのは「人が足りない業界」そのものではありません。「人が足りない状況で、他社よりも利益が残る構造を持つ企業」です。ここを取り違えると、話題性だけで買ってしまい、決算で人件費増に失望することになります。

人手不足で利益が伸びる企業には四つの型がある

人手不足を投資テーマとして扱う場合、銘柄は大きく四つの型に分類できます。この分類を使うと、ニュースや決算資料を読んだときに「これは単なる人件費増の企業なのか、それとも利益成長につながる企業なのか」を判断しやすくなります。

省人化を売る企業

第一の型は、人手不足に悩む企業へ省人化商品やサービスを提供する企業です。代表的なのは、業務ソフト、勤怠管理、予約管理、セルフレジ、券売機、ロボット、自動倉庫、物流管理、AIコールセンター、クラウド型のバックオフィス支援などです。

この型の強みは、顧客企業にとって導入理由が明確なことです。単に「便利だから買う」のではなく、「人を採れないから導入せざるを得ない」「人件費を抑えるために投資する」という需要になります。景気が多少悪くなっても、現場の人手不足が続く限り、コスト削減投資として予算が残りやすいのが特徴です。

たとえば、飲食店向けのモバイルオーダーや会計システムは、売上拡大のためだけではなく、ホールスタッフの人数を減らすために導入されます。物流倉庫向けの自動搬送ロボットは、作業員の採用難を補う目的で導入されます。医療・介護向けの記録システムは、紙作業を減らして現場スタッフの時間を確保するために導入されます。これらは「顧客の痛み」が強いため、価格交渉力が比較的高くなります。

少人数で売上を伸ばせる企業

第二の型は、自社のビジネスモデル自体が少人数運営に適している企業です。典型例は、ソフトウェア、プラットフォーム型サービス、フランチャイズ本部、EC比率の高い企業、無人店舗モデル、標準化された小型店舗などです。

この型のポイントは、売上が増えても従業員数が同じペースでは増えないことです。売上が20%増えても人員が5%しか増えないなら、固定費の伸びが抑えられ、営業利益率が改善しやすくなります。これを投資では「オペレーティングレバレッジが効く」と表現します。

たとえば、クラウドサービス企業では、利用企業数が増えても追加のサーバー費用やサポート費用は増えますが、店舗型ビジネスのように売上増に比例して大量のスタッフを雇う必要はありません。フランチャイズ本部も、実店舗の人件費を加盟店側が負担するため、本部はロイヤリティ収入を積み上げやすくなります。ただし、加盟店の採算が悪化すると出店ペースが落ちるため、本部だけを見て判断するのは危険です。

人件費上昇を価格転嫁できる企業

第三の型は、人件費が上がっても販売価格に転嫁できる企業です。人手不足下では、賃上げに耐えられない企業は利益を削られます。一方、顧客が必要性を認め、値上げを受け入れる商品やサービスを持つ企業は、売上単価を引き上げながら利益を守れます。

価格転嫁力を見るうえで重要なのは、値上げ後も数量が大きく落ちないかです。単に値上げしただけなら誰でもできます。しかし、値上げ後に客数や受注量が大きく落ちるなら、利益成長にはつながりません。決算説明資料で「単価上昇」「客数」「数量」「解約率」「受注残」の推移を確認する必要があります。

たとえば、専門性の高いBtoBサービス、保守・メンテナンス、インフラ関連、業界特化型ソフト、医療・介護周辺サービスなどは、顧客側が簡単に利用をやめにくい場合があります。こうした企業は、人件費上昇を値上げで吸収しやすく、利益率を維持しやすい傾向があります。

競合の脱落でシェアを取る企業

第四の型は、人手不足によって弱い競合が撤退し、その需要を取り込める企業です。人手不足は、規模の小さい企業や採用力の弱い企業ほど厳しくなります。給与を上げられず、シフトを埋められず、営業時間を短縮し、最終的には店舗閉鎖や事業縮小に追い込まれます。その結果、資金力・採用力・システム投資力のある企業に需要が集まることがあります。

この型は、業界全体の売上が大きく伸びていなくても、勝ち組企業だけが売上を伸ばす点が特徴です。市場規模の成長よりも、シェア移動が利益成長の源泉になります。投資家が見るべきなのは、既存店売上、拠点数、受注件数、顧客数、稼働率、地域別シェアなどです。

たとえば、地方の建設・設備工事・物流・介護・外食などでは、採用力の弱い中小企業が苦しくなる一方、教育体制やIT投資を進めた企業が案件を集めるケースがあります。ただし、この型は表面上の売上成長だけでは判断できません。無理に案件を取って現場が疲弊している企業は、後から採算悪化や品質問題が出やすいため、利益率とキャッシュフローの確認が不可欠です。

最初に見るべき指標は売上高ではなく営業利益率

人手不足テーマで失敗しやすい投資家は、売上高だけを見てしまいます。「人手不足対策需要で売上が伸びている」「省人化ニーズで受注が増えている」といった説明は魅力的ですが、投資判断としては不十分です。なぜなら、人手不足関連の企業でも、開発費、営業人員、導入支援コスト、外注費が膨らめば、売上が伸びても利益が残らないからです。

まず確認すべきは営業利益率です。営業利益率は、売上から本業にかかるコストを差し引いた後に、どれだけ利益が残るかを示します。人手不足を追い風にしている企業であれば、売上成長と同時に営業利益率が維持または改善していることが望ましいです。

具体的には、過去3年から5年の営業利益率を並べて見ます。売上が伸びているのに営業利益率が低下し続けている場合、その企業は人手不足による需要増を利益に変換できていない可能性があります。逆に、売上成長率がそこまで派手でなくても、営業利益率がじわじわ改善している企業は、業務効率化や価格転嫁が進んでいる可能性があります。

例として、売上高が100億円から120億円へ増えた企業Aがあるとします。営業利益が5億円から5.5億円に増えただけなら、営業利益率は5%から4.6%へ低下しています。売上は伸びていますが、採用費や人件費に利益を食われている状態です。一方、売上高が100億円から112億円への増加でも、営業利益が5億円から8億円へ伸びていれば、営業利益率は5%から7.1%へ改善します。投資対象として注目すべきなのは後者です。

決算資料では「人件費率」と「従業員一人当たり売上」を見る

人手不足で利益が伸びる企業を探すなら、損益計算書だけでなく、従業員数や人件費に関する情報も確認します。すべての企業が詳細な人件費を開示しているわけではありませんが、有価証券報告書、決算説明資料、統合報告書、採用ページ、月次資料などにヒントがあります。

特に使いやすいのが、従業員一人当たり売上高です。計算は単純で、売上高を従業員数で割ります。この数字が上昇している企業は、少ない人数でより多くの売上を生み出せている可能性があります。ただし、外注比率が高い企業では従業員数だけでは実態を見誤るため、外注費や業務委託費の増加も合わせて確認します。

もう一つ重要なのが、販管費に占める人件費関連コストの伸びです。売上成長率よりも人件費関連コストの伸びが高い状態が続くと、利益率は圧迫されます。反対に、売上成長率が人件費増加率を上回っていれば、利益が残りやすくなります。

たとえば、売上が前年比15%増、人件費が前年比8%増であれば、事業の効率性は改善している可能性があります。一方、売上が前年比10%増、人件費が前年比25%増であれば、成長のために無理な採用をしている可能性があります。成長企業では一時的に採用先行となることもありますが、その場合は翌期以降に利益率改善が見えるかを確認する必要があります。

また、採用人数を急拡大している企業は、短期的には期待感で株価が上がることがあります。しかし、採用した人員が売上に貢献するまでには時間差があります。営業職を増やしても、すぐに受注が増えるとは限りません。エンジニアを増やしても、すぐに新機能が収益化されるとは限りません。投資では、この時間差を理解しておくことが重要です。

スクリーニングは「成長率」と「効率性」を組み合わせる

人手不足テーマの銘柄を探すときは、単純に「省人化」「DX」「ロボット」といったキーワードだけで検索しても、質の低い銘柄が大量に混ざります。テーマ性が強くても赤字が続く企業、売上は伸びても利益が出ない企業、受注はあるが資金繰りが厳しい企業もあります。そこで、実務では財務条件を組み合わせて候補を絞ります。

まず、売上高成長率は過去3年で年平均5%以上を目安にします。急成長企業を狙うなら10%以上でも構いませんが、成熟したBtoB企業では5%成長でも十分な場合があります。次に、営業利益が黒字であることを確認します。テーマ株では赤字企業に資金が集まることもありますが、この記事で狙うのは「人手不足で利益が伸びる企業」であり、売上だけの企業ではありません。

さらに、営業利益率が横ばい以上、できれば改善傾向にあることを条件にします。営業利益率が3年前より上がっている企業は、価格転嫁、効率化、固定費吸収のいずれかが進んでいる可能性があります。加えて、営業キャッシュフローがプラスであることも重要です。会計上の利益が出ていても、売掛金が膨らみ、現金が残っていない企業は注意が必要です。

具体的な一次スクリーニング条件は、売上高が3年連続または中期で増加、営業利益が黒字、営業利益率が改善傾向、営業キャッシュフローがプラス、自己資本比率が極端に低くない、という組み合わせです。この時点ではPERやPBRで割安かどうかを厳しく見すぎる必要はありません。まずは「人手不足を利益に変換できている企業」を抽出することが優先です。

その後、二次スクリーニングとして、決算説明資料の中に「省人化」「自動化」「単価改定」「人員効率」「労働生産性」「セルフ化」「システム化」「受注残」「価格改定」といった言葉があるかを確認します。これらのキーワードが、売上や利益率の改善と結びついていれば有望です。逆に、資料で言葉だけが目立ち、数字が伴っていなければ見送ります。

具体例で考える有望企業と危険企業の違い

ここでは架空の企業を使って、実際にどのように判断するかを見ていきます。人手不足テーマでは、表面的には似た説明をしている企業でも、投資対象としての質は大きく異なります。

有望例:飲食店向け省人化システム企業

企業Bは、飲食店向けにモバイルオーダー、セルフ会計、予約管理、顧客管理を一体化したクラウドサービスを提供しています。売上は3年間で40億円から70億円へ増加し、営業利益率は8%から15%へ改善しています。導入店舗数が増えるほど月額利用料が積み上がり、サポート体制も標準化されているため、売上増に対して費用の伸びが抑えられています。

この企業の強みは、顧客の導入理由が明確なことです。飲食店は採用難に直面しており、注文と会計をセルフ化できればホール人員を減らせます。月額利用料が多少上がっても、アルバイト数時間分の削減で元が取れるなら、解約されにくくなります。さらに、顧客店舗のデータが蓄積されるため、メニュー分析やリピート施策などの追加サービスを販売できる余地もあります。

このような企業を見るときは、導入店舗数、解約率、顧客単価、営業利益率を重点的に確認します。導入店舗数が増えていても、解約率が上がっていれば競争が激化している可能性があります。顧客単価が上がっていれば、追加機能や値上げが通っている可能性があります。営業利益率が改善していれば、規模の経済が効いていると判断できます。

危険例:人手不足で売上は増えるが利益が残らない派遣企業

企業Cは、人手不足を背景に派遣需要が増え、売上を伸ばしています。一見するとテーマに合っていますが、営業利益率は3%前後で横ばい、または低下傾向です。派遣スタッフの時給上昇分を顧客へ十分に転嫁できず、採用広告費も増えています。売上高は伸びていますが、利益の伸びは鈍い状態です。

この企業を買う場合、単に「人手不足だから派遣需要がある」と考えるのは危険です。派遣業は売上が大きく見えやすい一方、スタッフ給与が原価として増えやすく、粗利率が低い場合があります。顧客企業への価格転嫁力が弱ければ、人手不足はむしろ利益圧迫要因になります。

もちろん、すべての人材関連企業が悪いわけではありません。専門職に特化し、高い紹介手数料を得られる企業、採用管理システムを持つ企業、教育・定着支援まで提供して単価を上げられる企業は別です。重要なのは、人手不足による需要増が「売上増」で止まっているのか、「利益率改善」まで進んでいるのかを分けて見ることです。

有望例:設備工事の標準化で利益率を上げる企業

企業Dは、空調・電気・通信設備の工事を行う企業です。建設業界は慢性的な人手不足ですが、この企業は案件管理システム、協力会社ネットワーク、標準施工マニュアルを整備し、現場の手戻りを減らしています。売上成長率は年8%程度と派手ではありませんが、営業利益率は5%から9%へ改善しています。

この企業のポイントは、人手不足を理由に単価を上げるだけでなく、現場効率を改善していることです。工事業では、工程遅延、再工事、移動時間、材料手配ミスが利益を削ります。ここを仕組みで減らせる企業は、同業他社よりも利益が残ります。さらに、採用難で小規模業者が案件を受けきれなくなると、信頼性の高い企業に受注が集まる可能性があります。

この型を見るときは、受注残、粗利率、協力会社数、工事損失引当金、売掛金の増加を確認します。受注残が増えていても、採算の悪い案件を大量に抱えていれば危険です。粗利率が改善しているか、現金回収に問題がないかを必ず見ます。

株価が動くタイミングは決算発表後だけではない

人手不足関連銘柄は、決算発表だけでなく、複数のタイミングで見直されます。まず重要なのは、月次売上や導入件数の発表です。外食、サービス、クラウド、店舗関連企業では、月次データが投資家の期待形成に影響します。既存店売上や顧客数が堅調で、利益率改善が想像できる場合、決算前から株価が動くことがあります。

次に、価格改定の発表です。値上げは短期的には顧客離れを心配されますが、数量が落ちずに通過すれば利益率改善への期待が高まります。特に、既存顧客への月額料金改定、保守料金改定、サービス単価引き上げは、利益へのインパクトが大きくなりやすいです。

三つ目は、中期経営計画の発表です。人手不足を背景に、省人化投資、DX投資、店舗効率化、ロボット導入、営業利益率目標などを掲げる企業は、投資家から再評価されることがあります。ただし、中期計画は絵に描いた餅になりやすいため、初年度から数字が出ているかを確認します。

四つ目は、同業他社の決算です。同業他社が人件費増で減益になったとき、逆に利益率を改善している企業は目立ちます。業界全体が厳しいなかで勝ち残る企業は、相対的な強さが評価されやすくなります。人手不足テーマでは、単独企業だけを見るのではなく、同業比較が非常に有効です。

買い判断では「テーマ性」「業績」「需給」を分けて考える

有望な企業を見つけても、すぐに買えばよいわけではありません。株価は業績だけでなく、期待値と需給で動きます。人手不足テーマでも、すでに多くの投資家が注目し、PERが高くなりすぎている銘柄は、好決算でも上値が重くなることがあります。

買い判断では、まずテーマ性を確認します。その企業が本当に人手不足を追い風にしているか、単なる説明上のキーワードではないかを見ます。次に業績を確認します。売上、営業利益、営業利益率、キャッシュフローが揃って改善しているかを確認します。最後に需給を確認します。株価が長期ボックスを上抜けたのか、出来高を伴っているのか、決算後に売られずに高値圏を維持しているのかを見ます。

実践的には、決算発表後に営業利益率改善が確認され、翌日以降も株価が崩れない銘柄を監視リストに入れる方法が使えます。好決算直後に飛びつくのではなく、数日から数週間の値動きを見て、売りを吸収しているかを確認します。強い銘柄は、好材料後に一度押しても、出来高を減らしながら下げ止まり、再び高値を試すことがあります。

一方、決算発表で一時的に急騰しても、その後に出来高が急減し、株価が発表前の水準まで戻る銘柄は注意が必要です。テーマ性だけで短期資金が入ったものの、継続的な買い手がいない可能性があります。人手不足テーマは長期性がありますが、個別銘柄の株価は短期的に過熱しやすいため、エントリー価格の管理が重要です。

避けるべき銘柄の特徴

人手不足テーマで避けたいのは、売上成長を人件費で買っている企業です。求人広告費、採用費、給与、外注費を大きく増やして売上を伸ばしているだけなら、株主に残る利益は増えません。特に、営業利益率が低い企業では、わずかなコスト増で利益が消えます。

また、「人手不足だから需要がある」と説明しているのに、営業キャッシュフローが悪化している企業も注意です。売掛金が増えすぎている場合、売上計上は進んでいても現金回収が遅れている可能性があります。成長企業では一時的な運転資金増もありますが、複数年続く場合は慎重に見るべきです。

さらに、労働集約型で差別化が弱い企業も避けたい対象です。たとえば、価格競争の激しい業界で、人件費上昇分を顧客に転嫁できない企業は、人手不足が続くほど利益が圧迫されます。人材派遣、警備、清掃、介護、物流、外食などの中にも勝ち組はありますが、業界名だけで買うのではなく、単価、利益率、離職率、採用力、システム投資を見なければなりません。

最後に、テーマ性だけで赤字が拡大している企業も危険です。省人化、AI、ロボット、DXといった言葉は投資家の注目を集めやすいですが、開発費や広告費が重く、黒字化の道筋が見えない企業は、相場環境が悪化したときに大きく売られやすくなります。テーマの魅力と企業の収益力は別物として扱う必要があります。

監視リストの作り方

人手不足テーマで成果を出すには、思いつきで銘柄を買うのではなく、監視リストを作ることが重要です。最初に、省人化を売る企業、少人数で売上を伸ばせる企業、価格転嫁できる企業、競合脱落でシェアを取る企業の四分類で候補を分けます。そして、それぞれの企業について、売上成長率、営業利益率、営業キャッシュフロー、従業員一人当たり売上、株価位置を記録します。

監視リストには、すぐ買いたい銘柄だけでなく、条件待ちの銘柄も入れます。たとえば、事業内容は魅力的だが営業利益率がまだ低い企業は、次の決算で利益率改善が確認できるまで待ちます。業績は良いが株価が高すぎる企業は、調整局面まで待ちます。テーマ性はあるがキャッシュフローが弱い企業は、現金創出力が改善するまで待ちます。

実務では、四半期決算ごとに監視リストを更新します。確認する項目は、売上成長が続いているか、営業利益率が悪化していないか、会社予想に対する進捗率が十分か、値上げや省人化投資の効果が出ているか、株価が決算後にどう反応したかです。数字が改善しているのに株価がまだ大きく反応していない銘柄は、次の候補になります。

また、同じテーマ内で複数銘柄を比較すると、より強い企業が見えます。たとえば、同じ省人化システム企業でも、A社は売上成長率20%で営業利益率5%、B社は売上成長率12%で営業利益率18%という場合があります。短期的な派手さはA社ですが、収益性と安定性ではB社が優れているかもしれません。テーマ株投資では、成長率だけでなく利益の質を比較することが重要です。

投資シナリオは三段階で組み立てる

人手不足で利益が伸びる企業に投資する場合、シナリオを三段階で組み立てると判断しやすくなります。第一段階は、需要の確認です。その企業の商品やサービスが、人手不足という現実の課題を解決しているかを見ます。顧客が導入を後回しにできないほど痛みを感じているなら、需要は強いと考えられます。

第二段階は、利益化の確認です。需要があっても、利益にならなければ投資対象としては弱いです。営業利益率、粗利率、顧客単価、解約率、キャッシュフローを見て、需要が利益に変わっているかを確認します。ここで数字が伴っていない企業は、監視に留めます。

第三段階は、株価評価の確認です。企業が良くても、高すぎる価格で買えばリターンは低下します。PER、時価総額、成長率、過去の株価レンジ、出来高、決算後の値動きを見ます。理想は、業績改善が見え始めているのに、まだ市場の評価が十分に追いついていない局面です。

たとえば、ある省人化関連企業が、数年かけて営業利益率を8%から15%へ引き上げ、さらに価格改定で来期も増益見込みだとします。しかし、株価は過去高値を超えられず、出来高も少ない。この段階では市場の注目が限定的かもしれません。その後、決算で増益が確認され、出来高を伴って高値を上抜けるなら、投資家の評価が変わり始めたサインになります。

まとめ:人手不足相場で買うべきは「忙しい会社」ではなく「儲かる仕組みを持つ会社」

人手不足は長期的な社会課題であり、多くの業界に影響します。しかし、投資対象として見る場合、単に人手不足に関係する企業を買うだけでは不十分です。重要なのは、人手不足によって売上が増えるだけでなく、営業利益率やキャッシュフローが改善する企業を選ぶことです。

狙うべき企業は、省人化を売る企業、少人数で売上を伸ばせる企業、人件費上昇を価格転嫁できる企業、競合脱落でシェアを取る企業です。これらの企業は、人手不足をコスト増ではなく、収益機会に変えられる可能性があります。

一方で、売上は伸びているが利益率が下がっている企業、採用費や外注費で利益を削られている企業、価格転嫁力が弱い企業、テーマ性だけで赤字が続く企業は慎重に見るべきです。人手不足という言葉は魅力的ですが、数字に表れていなければ投資判断の根拠にはなりません。

実践では、まず財務指標で候補を絞り、次に決算資料で省人化・価格転嫁・効率化の具体策を確認し、最後に株価と出来高で市場評価の変化を見ます。この手順を守れば、人手不足テーマを単なる流行語ではなく、実際の利益成長を捉える投資戦略として活用できます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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