米ドルをSBI証券の外貨預り金に置いたままでは利息がつかず、インフレに対して実質的な価値が目減りします。本稿では、安全性・流動性・余力反映速度の3軸で、待機資金を「ほぼ現金」のまま金利を取りつつ、いつでも米国株の買付に動けるよう最適化する方法をまとめます。
結論:待機資金の中核は米ドルMMF、補助に短期債ETF
即時性が最重要であれば、米ドルMMF(外貨MMF)を中核に据えるのが最も合理的です。売却後は当日中に米ドル買付余力へ反映されるため、実務上は現金同等の機動力を確保できます。利回りは短期金利水準に連動し、無利息放置より大幅に効率的です。追加の余裕資金については、短期債ETF(BIL/SGOV/SHV)で金利収益を上乗せします。
余力反映が早い順の整理(SBI証券前提)
- 米ドル預り金(現金):即時。最速だが無利息。
- 米ドルMMF売却:当日中(即日)。実務上は数十分〜数時間で余力化。
- 短期債ETF(BIL/SGOV/SHV)売却:T+1(翌営業日)。市場受渡後に余力化。
- 米国短期国債(T-Bill)途中売却:T+1〜T+2。価格変動リスクも許容が必要。
「秒で撃つ」なら現金、「当日で十分」ならMMF、「翌日で問題ない」なら短期債ETF、「余裕資金の最適化」にはT-Bill、と使い分けます。
米ドルMMF:待機の標準解
特徴:短期国債や高格付けCPに分散投資するファンド。
利点:安全性が高く、売却代金は当日中に米ドル買付余力へ。
留意:元本保証ではないが価格変動は極小。為替は米ドルのまま継続。
基本運用フロー:
「外貨預り金 → MMFへ振替」→(買付機会)→「MMF売却 → 米国株買付」。操作は一手増えるだけで、流動性ロスは実質ゼロ。
短期債ETF(BIL/SGOV/SHV)の実務
BIL(1–3ヶ月T-Bill)、SGOV(0–3ヶ月T-Bill)、SHV(1年未満国債)といったETFは、現金同等に近い値動きで、利回りの取りこぼしを減らせます。
利点:市場時間中いつでも売買でき、高流動性・信用リスク極小(米国政府債)。
弱点:T+1での受渡しとなるため、当日中の余力化は不可。FOMCや金利サプライズ時に微小な価格変動があります。
待機資金のコアはMMFに置き、「翌日でよい余裕枠」のみ短期債ETFに配分するのが合理的です。
米国短期国債(T-Bill):余裕資金の最適化
満期保有で利回りが確定する一方、途中売却では受渡しがT+1〜T+2、かつ金利環境で価格変動リスクがあります。
結論:すぐに使う予定のないドルのみで使うべき。待機資金の中核には不向き。
推奨配分モデル(待機資金の機動性最優先)
| 資産 | 比率 | 目的 |
|---|---|---|
| 米ドルMMF | 70%〜100% | 基本待機+金利キャプチャ(当日余力化) |
| 米ドル預り金 | 0%〜30% | 「秒で撃つ」超短期弾 |
| 短期債ETF(BIL/SGOV/SHV) | 0%〜30% | 翌日で良い余裕枠の利回り底上げ |
高金利期はMMF+短期債ETFの二本立てがプロの常套。利回り最優先ならETF比率を引き上げ、イベント前はMMF比率を上げるなどの機動調整が有効です。
イベント対応:フォーメーション例
- FOMC/雇用統計/CPIの前後:MMF比率↑(即応)、ETFは据え置きまたは縮小。
- 急落狙いの待ち構え:常時MMFに最低30%キープ。ETFは基本ホールド、急落時に一部利確→株買付。
- 利下げ転換:短期債は恩恵限定。中期債(例:1–3年、SHY)シフト検討。ただし待機資金の即応性は最優先で、MMFコアは維持。
実装手順(SBI証券の操作イメージ)
- 外貨預り金の米ドルを米ドルMMFへ振替(買付)。
- 買付機会が来たらMMFを売却(当日中に米ドル買付余力へ)。
- 必要に応じてBIL/SGOV/SHVを売却(T+1受渡しで余力化後、株買付)。
このフローで、無利息放置を回避しつつ、出動タイミングを逃しません。
よくある疑問と回答
Q. MMFは本当にすぐ余力になる?
A. 当日中(即日)に米ドル買付余力へ反映。実務上は現金同等の機動性です。
Q. ETFの方が利回りは高い?
A. 政策金利が高い局面ではETFがわずかに上回ることが多いが、T+1受渡しを許容できる「余裕枠」で使い分けるのが最適。
Q. T-Billは安全なのに、なぜコアではない?
A. 途中売却に時間と価格リスクが伴うため。待機資金の「即応性」を最優先するならMMFが中核。
リスクとガバナンス(簡潔)
- MMF/ETFともに元本保証ではありません(ただし変動は極小)。
- 為替リスクは米ドル保有と同義。円転時のレートに注意。
- ETFは市場スプレッド・税務区分・分配金課税の取り扱いに留意。
まとめ
待機資金=機動力が命。結論はシンプルです。
コア:米ドルMMF(当日余力化)+サブ:短期債ETF(翌日で良い枠)。
この設計で「金利の取りこぼし」を抑えながら、チャンス到来時に即発射できます。


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