J-REIT配当利回り差で読む「金利×賃料」の綱引き:割安REITを見抜くスプレッド分析

REIT

J-REIT(上場不動産投資信託)は「配当(分配金)利回りが高い商品」というイメージが強い一方で、同じJ-REITでも利回りは大きくバラつきます。この利回りの差は、単なる人気・不人気ではなく、賃料(収益力)金利(割引率・調達コスト)の綱引きがどこで起きているかを示す“市場の採点表”です。

この記事では、J-REITの配当利回り差を「何が原因で広がり、何が原因で縮むのか」という観点で分解し、割安に見える理由が“正しい”のか“誤解”なのかを判断するための具体的な見方を提示します。難しい数式は使いません。初心者でも再現できる手順に落とし込みます。

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  1. なぜ「配当利回りそのもの」より「配当利回り差」が効くのか
  2. まず押さえる基本:J-REITの分配金は何から生まれるか
    1. 見る指標:分配金、FFO、AFFO(ざっくりでOK)
  3. 利回り差を分解するフレーム:「賃料」と「金利」で二段階に切る
    1. ①賃料(NOI)側:上がる見込みがあるのに売られているのか?
    2. ②金利側:借入コストと「キャップレート(不動産利回り)」がどう動くか
  4. 「賃料上昇 × 金利上昇」が同時に起きると何が起きるか
    1. 賃料上昇の勝ち筋:短い契約・強い需要・高い更新率
    2. 金利上昇の負け筋:変動金利比率が高い・満期が偏っている
  5. 実践:利回り差を「スプレッド」として管理する
    1. ステップ1:ベンチマークを決める(2種類)
    2. ステップ2:最低限の入力項目を揃える
    3. ステップ3:スプレッドを計算する
  6. 具体例:同じ利回り5%でも「中身」が違うと評価が真逆になる
    1. A:住宅REIT(賃料改定が効きやすい)
    2. B:オフィスREIT(契約が長く反映が遅い)
  7. 利回り差が広がる局面で狙える「相対価値」戦略
    1. 1) 同セクター内で「金利耐性の差」を拾う
    2. 2) 物流 vs 住宅の“賃料反映スピード”差を使う
    3. 3) ホテルは「賃料」より「売上連動」を見て評価する
  8. チェックリスト:利回り差が「買いシグナル」になる条件/ならない条件
    1. チャンスになりやすい(誤解が入りやすい)パターン
    2. チャンスになりにくい(構造問題)パターン
  9. 初心者でもできる「利回り差トレード」実行手順(時間を味方にする)
    1. 手順A:監視リストを作り、スプレッドの“平常レンジ”を知る
    2. 手順B:スプレッドが外れたときに“原因を1つずつ潰す”
    3. 手順C:一括で入らず、分割で“平均スプレッド”を取りに行く
  10. 金利上昇局面での落とし穴:利回りの高さに隠れた「資金調達リスク」
    1. 1) 借入の満期分散(リファイナンスの集中)
    2. 2) 物件評価(NAV)とLTVの余裕
  11. まとめ:利回り差は「賃料の強さ」と「金利耐性」を同時に評価する道具
  12. もう一段深く:利回り差を「不動産の利回り(キャップレート)」に翻訳する
    1. キャップレートとは何か(超ざっくり)
    2. J-REITでは「インプライド・キャップレート」を使う
  13. 金利ショック時の“耐性”を数値で見る:REITのデュレーション発想
    1. 実務では「固定化の度合い」と「賃料改定速度」がデュレーションの代替になる
  14. セクター別に見る「賃料×金利」の優先順位
    1. 住宅:賃料の粘りと更新の速さが武器
    2. 物流:需給が最重要、金利は“二番目”に効く
    3. オフィス:金利より“稼働率と賃料下落”が先に来る
    4. ホテル:需要指標(ADR/稼働率)と金利をセットで
  15. 「割安REITを拾う」ためのミニ・テンプレ(そのまま使える)
  16. エントリーのタイミング:スプレッドは「縮み始め」より「広がり切り」を待つ
  17. よくある誤解:利回りが高い=安全、ではない

なぜ「配当利回りそのもの」より「配当利回り差」が効くのか

配当利回りは、ざっくり言えば「1年でもらえそうな分配金 ÷ いまの価格」です。単体で見ても参考になりますが、投資判断で効くのは多くの場合、比較(相対評価)です。

たとえば、AというREITが利回り5.0%、BというREITが利回り4.0%だとします。差は1.0%(100bp)。この差の背景には次のような要因が混ざっています。

  • 物件の収益力(賃料改定余地、稼働率、更新の強さ)
  • 費用構造(修繕費・原状回復・管理費など)
  • 財務(借入コスト、固定/変動比率、満期の偏り、格付け)
  • 物件ポートフォリオの質(立地、築年数、用途分散)
  • 需給(指数組入れ、投信・ETFの売買、増資の懸念)

このうち、賃料と金利は「全体に効くマクロ要因」なので、利回り差を読むうえで最も外せません。特に金利局面が変わる時期は、同じJ-REIT市場の中でも勝ち組と負け組の差が一気に広がりやすいからです。

まず押さえる基本:J-REITの分配金は何から生まれるか

J-REITのキャッシュフローの源泉は、基本的には賃料収入(NOI:ネット営業収益)です。そこから借入金利息、運営費用、信託報酬等が差し引かれ、分配金として投資家に回ります。

見る指標:分配金、FFO、AFFO(ざっくりでOK)

開示資料でよく出てくる指標を最低限だけ整理します。

  • 分配金(DPU):投資口1口あたりの分配金。いわゆる“配当”に相当。
  • FFO:会計上の減価償却などを調整し、不動産の稼ぐ力を表す目的の概念。
  • AFFO:FFOから維持更新投資などを引いて、より「手取り」に近づけた概念。

初心者の段階では、「分配金がどれだけ安定して出せる構造か」を、賃料(NOI)と借入の条件から追うだけで十分です。

利回り差を分解するフレーム:「賃料」と「金利」で二段階に切る

利回りは価格が下がれば上がります。つまり、高利回り=市場が何かを不安視している可能性が高い。そこで、利回り差を次の2つに分けます。

①賃料(NOI)側:上がる見込みがあるのに売られているのか?

賃料が上がる局面では、分配金が増えやすい。にもかかわらず利回りが高い(価格が安い)なら、市場が賃料上昇を信じていないか、別のリスク(増資・空室・修繕)が織り込まれている可能性があります。

②金利側:借入コストと「キャップレート(不動産利回り)」がどう動くか

金利が上がると、REITは二重に痛みます。

  • 借入金利の上昇:支払利息が増え、分配金を圧迫。
  • 不動産価格の調整:割引率が上がり、物件の評価(キャップレート)が上振れしやすい。

ただし痛みの大きさはREITごとに違います。ここが利回り差を作ります。

「賃料上昇 × 金利上昇」が同時に起きると何が起きるか

多くの投資家がつまずくのがここです。賃料が上がるならREITは強いはず。なのに金利が上がるとREITは弱いと言われる。結局どっち?という話になります。

結論はシンプルで、どちらが強いかはREITの“中身”で決まるです。具体的には以下。

賃料上昇の勝ち筋:短い契約・強い需要・高い更新率

賃料が上がっても、それがNOIに反映されるにはタイムラグがあります。鍵は賃料改定のスピードです。

  • 住宅:更新が早く、じわじわ反映されやすい。インフレ耐性が比較的高い。
  • 物流:供給過多や立地で差。需給が締まれば賃料改定が効くが、空室リスクも出やすい。
  • オフィス:契約期間が長めで反映が遅い。景気の影響も受けやすい。
  • ホテル:ADR(客室単価)に連動しやすく、反映が速いことがあるが、需要変動も大きい。

金利上昇の負け筋:変動金利比率が高い・満期が偏っている

同じ金利上昇でも、固定金利で長期にロックしているREITは影響が小さい。一方、変動比率が高い、または1~2年以内に借換が集中しているREITは、利息増が早く効きます。結果として市場は「利回りを上げて(価格を下げて)織り込む」ので、利回り差が拡大します。

実践:利回り差を「スプレッド」として管理する

ここからが手順です。利回り差を“なんとなく”見ず、スプレッドとして数値管理します。

ステップ1:ベンチマークを決める(2種類)

おすすめは次の2つを併用することです。

  • 無リスク金利とのスプレッド:例)10年JGB利回りとの差
  • 同セクター平均との差:例)住宅REIT平均との差、物流REIT平均との差

理由は、前者は「市場全体の割引率変化」を捉え、後者は「銘柄固有のズレ」を捉えるためです。

ステップ2:最低限の入力項目を揃える

最初は次の6項目だけで十分です。Excel/スプレッドシートに並べます。

  • 投資口価格
  • 予想分配金(年)
  • 予想分配金利回り
  • 10年国債利回り(同日)
  • 借入:固定/変動比率
  • 借入:平均残存年数(満期)

借入条件は決算説明資料にほぼ載っています。国債利回りはニュースやデータサイトで追えます。

ステップ3:スプレッドを計算する

計算は簡単です。

  • 国債スプレッド(bp)=(REIT分配金利回り − 10年JGB利回り)×100
  • セクター平均との差(bp)=(銘柄利回り − セクター平均利回り)×100

bpは0.01%単位。慣れると相場の“歪み”が見えるようになります。

具体例:同じ利回り5%でも「中身」が違うと評価が真逆になる

仮の例で考えます。A(住宅REIT)とB(オフィスREIT)がどちらも利回り5.0%。10年JGBが1.0%とすると国債スプレッドは400bpで同じです。

A:住宅REIT(賃料改定が効きやすい)

Aは固定金利比率80%、平均残存年数6年。物件の稼働率が高く、更新時に小幅でも賃料を上げやすい。もしインフレで賃料が年2%上がるなら、NOIが増え、分配金も増えやすい。一方で金利上昇の影響は緩やか。

この場合、利回り5%は「割安」になり得ます。市場が金利リスクを過大評価し、住宅の賃料耐性を十分に織り込んでいないケースがあるからです。

B:オフィスREIT(契約が長く反映が遅い)

Bは変動金利比率50%、平均残存年数2.5年。大型テナントの退去が発生し、フリーレント(賃料無料期間)を付けて埋める必要がある。金利が上がると支払利息が早く増え、空室でNOIも減る。

この場合、利回り5%は「妥当」か「まだ安くない」可能性があります。同じ利回りでも、分配金が維持できる確度が違うからです。

利回り差が広がる局面で狙える「相対価値」戦略

利回り差は市場のストレスが強い局面で拡大しやすい。逆に言えば、差が極端に広がったところは、相対価値(ペアの発想)でチャンスが出やすい。

1) 同セクター内で「金利耐性の差」を拾う

たとえば住宅REIT同士でも、固定比率・満期分散・格付けで借入コストは変わります。金利上昇局面では、弱い銘柄が先に売られ、利回りが跳ねます。しかし、売られた理由が「短期的な借換の山」だけで、物件の稼ぐ力が強いなら、借換が一巡した後に利回り差が縮む可能性があります。

2) 物流 vs 住宅の“賃料反映スピード”差を使う

物流は需給が良いと賃料上昇が効く一方、新規供給が増えると空室が出やすい。住宅は緩やかだが粘り強い。市場が一括りに「REITは金利に弱い」と売るとき、住宅のスプレッドが過大に広がることがあります。

3) ホテルは「賃料」より「売上連動」を見て評価する

ホテルは固定賃料+変動賃料(売上連動)の形が多く、景気・観光需要で収益が振れます。金利だけでなく需要指標を一緒に見る必要があります。利回り差を「需要の織り込み不足」として拾える局面がある一方、落ちるときも早いので、サイズ管理が重要です。

チェックリスト:利回り差が「買いシグナル」になる条件/ならない条件

ここが一番大事です。高利回り=チャンス、ではありません。高利回りが“理由なき誤解”のときだけがチャンスです。判断のためのチェック項目を示します。

チャンスになりやすい(誤解が入りやすい)パターン

  • 固定金利中心で、直近の借換負担が小さいのに、金利上昇局面でまとめて売られている
  • 賃料改定が効くセクター(住宅・一部ホテルなど)で、賃料上昇が進んでいるのに評価が追いついていない
  • 一時的な費用増(修繕・更新投資)が原因で利回りが上がっているが、将来の競争力が上がる内容
  • 需給イベント(指数リバランス、投信の解約、短期的な増資懸念)で歪んでいる

チャンスになりにくい(構造問題)パターン

  • 変動金利が高く、満期が近い借入が厚い(金利上昇がすぐに分配金に刺さる)
  • 賃料が下がりやすい用途で空室が増えている(オフィスでの構造的な需要減など)
  • 高LTVで、物件評価が下がると財務制約が強まる(増資・資産売却に追い込まれやすい)
  • 分配金の維持が“売却益頼み”になっている(環境が変わると継続性が落ちる)

初心者でもできる「利回り差トレード」実行手順(時間を味方にする)

短期売買のテクニックではなく、再現性の高い運用手順として整理します。やることは3つです。

手順A:監視リストを作り、スプレッドの“平常レンジ”を知る

銘柄を5~10に絞り、国債スプレッドとセクター平均との差を毎週メモします。半年もやると「この銘柄は平常時はセクター平均±30bpくらい」といった癖が見えます。

手順B:スプレッドが外れたときに“原因を1つずつ潰す”

スプレッドが急拡大したら、いきなり結論を出さず、原因を分解します。

  • 分配金予想が下がった?(決算・開示)
  • 金利が急騰した?(国債利回りの変化)
  • 増資・物件入替の噂がある?(IR・ニュース)
  • 空室・賃料のトレンドは?(稼働率、改定実績)
  • 借換の山は近い?(満期表)

ここで「金利上昇なのに、固定中心で影響が薄い」「賃料が強いのに価格だけ下がっている」など、ズレが見えれば候補になります。

手順C:一括で入らず、分割で“平均スプレッド”を取りに行く

利回り差は縮むまで時間がかかることが多い。そこで分割で入ります。毎月1回など機械的に。狙いは「底当て」ではなく、スプレッドが平常レンジへ戻る過程を拾うことです。

金利上昇局面での落とし穴:利回りの高さに隠れた「資金調達リスク」

金利局面で初心者が見落としがちなのが、分配金ではなく財務の自由度です。特に次の2点は必ず確認します。

1) 借入の満期分散(リファイナンスの集中)

平均残存年数が短いと、金利上昇がすぐ反映されます。さらに満期が集中していると、悪いタイミングで借換が必要になり、条件が急に悪化することがあります。

2) 物件評価(NAV)とLTVの余裕

キャップレートが上がると不動産価格が下がり、NAVが縮みます。LTVが高いと「財務制約に近づく→増資の可能性→価格が先に下がる」という負の連鎖が起きやすい。利回りが高い理由がここにあるなら、スプレッドは簡単に縮みません。

まとめ:利回り差は「賃料の強さ」と「金利耐性」を同時に評価する道具

J-REITの配当利回り差は、賃料上昇(NOI成長)と金利上昇(調達コスト・割引率)のどちらが優勢かを映す指標です。重要なのは、利回りの高さを“魅力”として見る前に、なぜ高いのかを分解すること。

国債スプレッドとセクター平均との差を定点観測し、固定/変動比率・満期分散・LTV・賃料改定スピードをセットで確認すれば、利回り差が「ただの危険信号」なのか「誤解が生んだ歪み」なのかを切り分けられます。

最終的に狙うべきは、スプレッドが極端に広がった局面で、中身が強いのにまとめて売られた銘柄を分割で拾い、平常レンジへの回帰を取りにいく運用です。派手さはありませんが、再現性が高く、初心者でも手順化しやすいアプローチです。

もう一段深く:利回り差を「不動産の利回り(キャップレート)」に翻訳する

配当利回りは株価(投資口価格)に対する利回りですが、REITの中身は不動産です。不動産は本来、キャップレート(物件の利回り)で値付けされます。ここを意識すると、利回り差の理解が一気にクリアになります。

キャップレートとは何か(超ざっくり)

キャップレートは「その物件が生むNOI ÷ その物件価格」です。利回りが高いほど(キャップレートが高いほど)物件価格は安い。金利が上がると投資家はより高い利回りを要求し、キャップレートが上がりやすい=不動産価格が下がりやすい、という関係になります。

J-REITでは「インプライド・キャップレート」を使う

個別物件のキャップレートを正確に当てるのは大変です。そこで投資家は、REIT全体をひとつの不動産会社とみなして、価格から逆算したインプライド・キャップレート(含みのキャップレート)を眺めます。

厳密な計算は複雑ですが、初心者向けに使うなら次の発想で十分です。

  • REIT価格が下がる(利回りが上がる)=市場が「キャップレート上昇(不動産価格下落)」を織り込んでいる
  • しかし同時にNOIが伸びる局面(賃料上昇)なら、キャップレート上昇を相殺しうる

つまり、利回り差は「キャップレート上昇をどれくらい織り込んだか」と「NOI成長をどれくらい信じているか」の差でもあります。

金利ショック時の“耐性”を数値で見る:REITのデュレーション発想

債券にはデュレーション(価格が金利変化にどれだけ敏感か)があります。REITも似た発想が使えます。ポイントは、REITが持つキャッシュフローの多くが将来にわたって続くため、割引率(=金利)の上昇に価格が反応しやすいことです。

実務では「固定化の度合い」と「賃料改定速度」がデュレーションの代替になる

REITの金利感応度を、初心者でも扱える形に落とすと次の2軸です。

  • 負債側の固定化:固定金利比率が高い、借入期間が長い、ヘッジが効いている
  • 資産側の改定速度:賃料がどれくらいの速さで上げられる(または下げられる)か

この2つが揃うほど、金利上昇のダメージを吸収でき、スプレッドが縮みやすい。逆に、どちらも弱いとスプレッドは広がりやすい。利回り差の“理由”がここにあるかを必ず確認します。

セクター別に見る「賃料×金利」の優先順位

同じJ-REITでも、見ているリスクが違います。利回り差の解釈を間違えると、割安に見えて落とし穴になります。セクター別の優先順位を整理します。

住宅:賃料の粘りと更新の速さが武器

住宅は景気変動の影響が比較的マイルドで、賃料も小刻みに改定されやすい。金利上昇局面で一緒に売られたときは、固定化された負債+賃料改定の実績が揃っているかを確認します。強い物件立地(都心・駅近)ほど、利回り差が過大になりやすいことがあります。

物流:需給が最重要、金利は“二番目”に効く

物流は供給が出ると一気に空室が増えます。金利より先に「空室リスク」が利回り差を作ることが多い。つまり、高利回りの理由が金利なのか需給なのかを分ける必要があります。決算資料で新規供給の多いエリア比率テナント分散契約更新の状況を確認します。

オフィス:金利より“稼働率と賃料下落”が先に来る

オフィスは契約が長い一方、景気後退局面では退去・減額が起きると戻りが遅い。金利上昇に加え、賃料が下がると二重苦です。高利回りは正当化されやすいので、割安判断は慎重に。主要テナントの集中リーシング(入替)計画を必ず見ます。

ホテル:需要指標(ADR/稼働率)と金利をセットで

ホテルは売上連動で収益が動くため、賃料というより「需要」。金利上昇局面でも需要が強ければ分配金が伸び、利回り差が縮むことがあります。ただし需要が崩れると逆回転も速い。繁忙期と閑散期のブレ外部環境(為替・インバウンド)の依存度を確認します。

「割安REITを拾う」ためのミニ・テンプレ(そのまま使える)

最後に、あなたが実際に銘柄を調べるときのテンプレを置きます。これをメモ帳やスプレッドシートに貼って埋めるだけで、利回り差の“理由”が整理できます。

  • 1. 現状の利回り:◯◯%(前年差:+/-◯◯bp)
  • 2. 国債スプレッド:◯◯bp(10年JGB:◯◯%)
  • 3. セクター平均との差:+/-◯◯bp(平均との差の乖離理由は?)
  • 4. 賃料トレンド:稼働率◯◯%、改定は上げ/横ばい/下げ、契約更新の多い時期は?
  • 5. 財務:固定/変動◯◯/◯◯、平均残存◯◯年、満期集中はある?
  • 6. LTVとNAV:LTV◯◯%、NAVプレミアム/ディスカウントは?
  • 7. 需給イベント:増資懸念、指数、売買の偏り、スポンサー動向
  • 8. 自分の仮説:利回り差は「金利の誤解」or「賃料悪化」or「財務制約」or「需給」?
  • 9. 監視ポイント:次の決算で見る数字、空室の改善、借換の発表、賃料改定の実績

このテンプレで「利回り差の原因が1~2個に絞れる」状態になれば、投資判断の質が一段上がります。情報を集めすぎて混乱する初心者ほど、原因を絞り込むことが重要です。

エントリーのタイミング:スプレッドは「縮み始め」より「広がり切り」を待つ

利回り差の取引で一番多い失敗は、スプレッドが広がり始めた段階で「もう十分安い」と判断してしまうことです。スプレッドはショック局面で段階的に広がります。そこで、次の“確認サイン”を待つと、無駄なナンピンを減らせます。

  • 金利の急騰が落ち着く:国債利回りの上昇が鈍る、レンジに入る
  • 分配金の下方修正が出尽くす:悪材料が決算で一巡する
  • 借換の条件が確認できる:想定より悪くない金利でロールできた、満期分散が進んだ
  • 賃料・稼働率の底打ちが見える:月次開示で悪化が止まる

逆に、これらが揃わないうちは「高利回りは高リスクの対価」である可能性が高い。焦らず、スプレッドの変化とファンダメンタルの整合を取りにいくのが堅い運用です。

よくある誤解:利回りが高い=安全、ではない

分配金は債券のクーポンのように固定ではありません。景気や賃料、資金調達環境で変わります。利回り差を見る目的は、利回りの高さに飛びつくことではなく、「市場が織り込んだ悲観が行き過ぎか」を検証することです。ここを勘違いすると、利回り“罠”に入ります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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