セクター相対強度の使い方|強い業種から取引候補を絞り込む

セクター相対強度を使って取引候補を選ぶ架空の成人日本人女性アナリスト。AI生成イメージ。 日本株・短期売買

短期売買で銘柄を探すとき、全上場銘柄を一社ずつ見るより、まず資金が向かっている業種を見つけ、その中から強い銘柄へ絞る方が効率的です。セクター相対強度は、ある業種が市場全体に対して上がっているか、下がっていても相対的に耐えているかを測ります。単なる上昇率ランキングではなく、市場、業種、個別株の三層をそろえるための道具です。

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相対強度は市場平均との差を見る

ここでいう相対強度はRSIとは別物です。最も単純な計算は、業種別指数をTOPIXなどの市場指数で割る方法です。この比率が上昇していれば業種が市場より強く、低下していれば弱いと判断します。基準日を100に正規化すれば、価格水準の異なる業種も同じグラフで比較できます。

例えば基準日から業種指数が108、TOPIXが102になった場合、単純な差は6ポイントですが、相対比率は108÷102=1.0588、約5.88%の優位です。市場全体が下落していても、業種指数の下落が小さければ相対線は上向きます。したがって「強い」は必ずしも絶対価格の上昇を意味しません。買い候補では絶対価格も上昇している業種を優先します。

業種の相対強度順位が20日間で変化するスロープ図
図1:単日の首位より、複数期間で順位が改善する業種を探す。

一日の騰落率だけでは資金流入を見誤る

業種ランキング首位でも、前日に急落した反動で一日だけ戻している場合があります。短期トレーダー向けには、5日、20日、60日の相対強度を並べ、複数期間で順位が改善しているかを見る方法が実用的です。5日だけ強く60日は最下位なら短期反発、20日と60日が強く5日も再上昇なら継続トレンド候補と整理できます。

さらに業種内の騰落銘柄数を確認します。指数寄与度の大きい一社だけが上昇している場合、指数は強くても裾野が狭い状態です。構成銘柄の60%以上が20日移動平均線を上回る、値上がり銘柄数が値下がりを上回るなど、広がりを示すブレッドスを補助条件にすると、見かけだけの強さを減らせます。

市場から一銘柄まで絞る四段階

第1段階:市場の地合い

TOPIX、日経平均、先物の位置を確認します。市場が前日安値を割って下落している日に買いだけを探すなら、必要な相対強度は通常より高くなります。地合いが不安定なら株数を半分にする、現金比率を上げるというルールを先に決めます。

第2段階:セクター順位

業種ごとに20日相対リターン、5日相対リターン、20日線上銘柄比率、売買代金増加率を点数化します。例として各指標を0~3点にし、合計12点中9点以上を監視対象にします。重みを頻繁に変えず、少なくとも数十回の取引で検証します。

第3段階:業種内の銘柄順位

強い業種の中でも、すでに急騰して乖離が大きい銘柄より、高値圏で小さく持ち合い、売買代金が増えている銘柄を優先します。業種指数が高値更新しているのに個別株が安値を切り下げているなら、その銘柄固有の悪材料を疑います。業種の強さだけで弱い個別株を逆張りしません。

第4段階:注文可能な形

候補が強くても、スプレッドが広い、板が薄い、直近抵抗までの距離が短いなら見送ります。エントリー、無効化水準、利食い候補を価格で定義し、期待利益が想定損失の少なくとも1.5~2倍あるものだけを残します。

市場から業種と銘柄を経て注文候補まで絞る同心円図
図2:市場、業種、銘柄、注文条件の順に監視対象を減らす。

数値例:強い業種から株数まで決める

架空の機械セクターが20日相対強度3位、5日相対強度1位、構成銘柄の72%が20日線上、売買代金が20日平均の1.4倍だとします。その中のA社は4,100円の持ち合い上限を出来高増で突破しました。4,120円で入り、持ち合い内へ戻る4,084円を撤退水準、スリッページを4円と見込みます。

一株リスクは4,120-4,084+4=40円です。一回の許容損失9,000円なら225株ですが、100株単位では200株とし、想定損失は8,000円です。2Rの目安は4,200円です。日足の戻り高値が4,180円なら、4,180円で一部を利食いし、残りが伸びる場合だけ追随します。業種が強いという理由で損切りを遠ざけてはいけません。

セクターランキングの落とし穴

第一は、指数構成の偏りです。時価総額の大きい数社で業種指数が動く場合があります。指数、騰落銘柄数、中央値リターンを併用します。第二は、急激なローテーションです。金利、為替、商品価格、政策報道で資金が一日で移ることがあり、前週首位が今週も強いとは限りません。順位だけでなく相対線の傾きを見ます。

第三は、同一要因への集中です。同じ強いセクターから三銘柄を買うと、見た目は三社でも実質は一つの賭けです。各銘柄の許容損失が8,000円なら合計24,000円になるため、セクター単位の上限を例えば12,000円に置き、株数を配分します。

第四は、名称だけで事業を判断することです。同じ業種分類でも、海外売上比率、原材料感応度、金利感応度が異なります。決算資料で利益の源泉を確認し、セクター材料が本当に業績へつながる銘柄かを見ます。

寄り付き前と場中の運用

寄り付き前は前日終値までの5日・20日・60日順位を作り、上位3~5業種だけを監視リストへ入れます。各業種から流動性、決算予定、チャート形状で2~3銘柄へ絞れば、画面数を増やさず監視できます。気配だけで順位を大きく変えず、寄り付き後の実売買を待ちます。

場中は10時、前引け、後場寄りなど固定時刻で更新します。毎分ランキングを見ると小さな順位変動に反応して売買が増えます。強い業種が市場下落時にも前日高値付近を維持し、反発局面で先に高値を更新するなら相対強度の実体があります。逆に市場上昇でも反発しないなら候補から外します。

検証方法

取引ごとに、市場リターン、業種の5日・20日相対順位、順位の変化、業種内ブレッドス、個別株の業種内順位、相対出来高、エントリー時刻、損益Rを記録します。「上位3業種だけ」「上位10業種」「順位上昇中だけ」を比較すれば、絞り込みの効果が分かります。

結果は市場局面別にも分けます。全面高では多くの業種が上がるため相対強度の差が小さく、急落局面では防御業種の相対線が上がっても絶対価格は下落することがあります。買い戦略では、相対線上向きかつ絶対価格上向きという二条件の方が目的に合います。

実行前チェックリスト

  • 相対強度とRSIを混同していないか
  • 一日だけでなく5日・20日・60日を比較したか
  • 指数だけでなく業種内の広がりを確認したか
  • 個別株も業種内で強く、注文可能な流動性があるか
  • 市場、業種、個別株の方向がそろっているか
  • 同じセクターへの許容損失合計を制限したか
  • 損切り幅とスリッページから株数を切り下げたか

相対強度スコアを自作する

高度なソフトがなくても、表計算で業種別の終値を並べれば作れます。基準日の業種指数と市場指数をともに100へ正規化し、毎日の「業種指数÷市場指数」を計算します。5日前比、20日前比、60日前比を求め、それぞれ全業種内で順位化します。順位は数値が小さいほど強いので、合計順位が小さい業種を上位とします。

短期を重視するなら5日50%、20日30%、60日20%のように重みを付けられます。ただし相場を見て毎週重みを変更すると、結果に合わせた後付けになります。四半期ごとなど更新時期を固定し、変更前後の成績を保存します。順位が上位でも相対線の傾きが鈍化している業種は、上位維持と新規上昇を分けて表示します。

ブレッドスで「一社だけ強い」を除く

業種内の広がりは、20日移動平均線上の銘柄比率、5日騰落の中央値、新高値銘柄数などで測れます。例えば業種指数が高値でも、構成30社中20日線上が8社しかなければ、一部大型株への集中です。短期的には続くこともありますが、指数だけを見て業種全体へ資金が入ったと判断しません。

反対に指数の上昇率が中位でも、20日線上が30%から70%へ増え、中央値リターンも改善しているなら、資金流入が広がり始めた可能性があります。順位の絶対値だけでなく改善速度を見る理由です。ブレッドスのデータ取得範囲が日によって変わらないよう、売買停止銘柄や新規上場の扱いも決めます。

為替・金利・商品価格との連動を検証する

輸出比率の高い業種、借入の多い業種、原材料価格に敏感な業種では、相対強度の背景要因が異なります。ただし「円安なら輸出株」という一般論だけで即座に売買せず、実際の相対線が反応しているか確認します。為替が円安でも業種相対線が下落するなら、利益率、海外需要、すでに織り込まれた期待など別の要因があります。

説明変数は売買条件ではなく、急変時のリスク把握に使います。原油価格に敏感な二業種を同時保有する場合、分類名が違っても実質的な相関が高まります。ポートフォリオでは銘柄数だけでなく、共通ドライバーごとの想定損失を集計します。

ランキング入れ替わりへの対応

昨日1位だった業種が今日4位へ落ちても、即座に全銘柄を手仕舞う必要はありません。順位は他業種との比較なので、対象業種が上昇していても別業種がさらに上がれば低下します。保有中は個別株の価格構造を主条件とし、相対順位の低下は株数縮小や新規追加停止の補助条件にします。

具体的には、相対線が5日移動平均を割り、業種内ブレッドスが二日連続で悪化し、個別株も直近安値を割ったときに撤退するなど、複数層の悪化を確認します。一方、新規候補では順位上昇中を優先し、すでに首位で伸び切った業種への集中を避けます。

期待値と機会損失を比べる

全銘柄ブレイクを取引した80件が勝率40%、平均利益1.6R、平均損失1Rなら期待値は0.04Rです。上位5業種に限定した35件が勝率49%、平均利益1.7R、平均損失0.95Rなら期待値は約0.349Rです。絞り込みで一件当たりの質は上がっても、件数は減ります。

月間の総R、最大連敗、必要監視時間も比較します。期待値が少し高いだけで監視作業が倍になるなら、運用しにくいルールです。ランキングの価値は利益だけでなく、限られた注意力を強い場所へ配分できる点にもあります。

毎朝15分で更新する運用例

最初の5分で前日終値を取り込み、相対線と5日・20日順位を更新します。次の5分で上位業種のブレッドス、決算予定、材料を確認します。最後の5分で各業種から二銘柄だけ選び、前日高値、持ち合い上限、無効化水準をチャートへ登録します。上位業種が変わっても、候補を無制限に増やしません。

場中にランキング外の銘柄が急騰しても、事前候補と同じ基準を満たさなければ追いません。急騰理由を引け後に確認し、翌日の業種順位と広がりへ反映します。この一日の循環を続けると、ニュースに反応するだけでなく、資金移動が一社から業種全体へ波及したかを検証できます。

まとめ

セクター相対強度は、上がりそうな業種を言い当てる占いではなく、監視対象を合理的に減らすランキング装置です。市場平均との差、複数期間の順位、業種内の広がりを確認し、最後は個別株の価格構造と流動性で注文を決めます。セクター単位の損失上限まで管理すれば、資金の流れを利用しながら集中リスクを抑えられます。

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