出来高で攻める仮想通貨トレード:OBV・出来高プロファイル・Anchored VWAPの統合設計

テクニカル分析

価格だけを追うトレードは、群集の足跡を無視してチャートの表面だけを見る行為に近いです。出来高はその足跡です。本稿では、ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄からアルトコインまで横断して機能する「出来高中核型」の設計思想を、OBV(On-Balance Volume)出来高プロファイル(Volume Profile)Anchored VWAP(アンカードVWAP)の三点で統合し、具体的な売買ルール・検証手順・失敗回避まで徹底的に落とし込みます。

スポンサーリンク
【DMM FX】入金

出来高の本質:なぜ“量”が価格の信頼度を左右するのか

出来高は「どれだけの参加者がその価格帯で合意したか」を示します。出来高の伴わない上昇は砂上の楼閣になりがちで、逆に出来高を伴う推進は継続しやすい傾向があります。暗号資産では取引所ごとに出来高の偏りがあるため、同一取引ペアでも取引所を跨いで相対比較する癖を付けると精度が上がります。

初学者が混同しやすい点として、暗号資産の出来高は株のような“取引所一本化”ではありません。従って、自分が執行する取引所の出来高と、相場の指標として用いる総合的な出来高(アグリゲータや出来高の大きい取引所)を分けて観察するのが実務的です。

出来高が効く局面:トレンドとレンジの見極め

出来高が増えつつ高値・安値を更新する局面はトレンド継続の確率が高くなります。一方、価格が停滞しているのに出来高だけが増える場合は、吸収(大口の静かな仕込み/手仕舞い)を疑います。逆に価格のボラティリティが高いのに出来高が伸びないときは、だましの可能性が高まります。

指標①:OBV(On-Balance Volume)の実装と読み方

OBVは「上昇日は出来高を加算、下落日は減算」して累積したラインです。価格が横ばいでもOBVが切り上がる強気ダイバージェンスは先行シグナルとして機能しやすく、逆も然りです。

OBVを使った基本ルール

(1)価格がレジスタンス直下で横ばい、OBVが上向き傾斜→上抜け先行シグナル。(2)価格が高値更新でもOBVが更新できない→上げ一服または反落警戒。(3)日足と4時間足でマルチタイムに整合する場面のみ執行精度が上がります。

指標②:出来高プロファイル(Volume Profile)—HVN/LVNの使い分け

出来高プロファイルは「価格帯ごとの出来高分布」を可視化します。山(HVN: High Volume Node)は多くの約定が集中した合意の価格、谷(LVN: Low Volume Node)は合意が少ない通過点です。

実務での使い方

(A)押し目はHVNの上端で待つ:支持帯として機能しやすい。(B)ブレイクはLVNで加速:価格が“軽い”ため、ストップを近くに置いて短期で取りに行く。(C)トレンド転換の初動はHVN割れ/回復で判定。

指標③:Anchored VWAP(アンカードVWAP)—イベントに基点を打つ

VWAPは「出来高加重平均価格」。アンカードは任意の起点(高値・安値・イベント日)からのVWAPを引き直す手法です。半減期、ハードフォーク、主要アップグレード、重要ニュース後の高安など、「市場参加者の簿価が揃いやすい点」にアンカーを打つと、市場の損益分布を直感的に把握できます。

売買の原型

上昇相場:アンカードVWAPの初回タッチ+OBV上向き+LVN通過で押し目買い。下降相場:アンカードVWAPに戻りタッチ+OBV下向き+HVN下抜けで戻り売り。横ばい:HVN上端と下端をレンジに見立て、アンカードVWAPをレンジ中心線として逆張り・利確を設計。

統合ルール設計(シンプル版)

1. 市況フィルター

価格が20EMAと50EMAの上、かつOBVが直近高値を上回る→買いモード。価格が両EMAの下、かつOBVが直近安値を下回る→売りモード。それ以外は見送り

2. エントリー

買い:アンカードVWAP(直近の明確な高値/安値や重要イベント日にアンカー)にタッチし、出来高プロファイルのLVNを突破した足の終値で成行または直上に指値。売り:逆パターン。

3. ストップ

初期ストップは直近スイングの外+ATR(14)×1.2。LVN割れ/回復の失敗が出たら即撤退。

4. 目標利益

第一利確は直上/直下のHVN端。第二利確はアンカードVWAPからの乖離がATR×2.0を超えたら半分。

5. ポジションサイズ

口座資金の1%を一回のトレードで最大損失に設定(例:100万円なら1万円)。距離=エントリーからストップまで(円換算)で割り、枚数を算出。

検証ワークフロー(無料ツール中心)

(i)検証期間を相場サイクルが異なる2区間に分割。(ii)出来高プロファイルとアンカードVWAPを設定。(iii)エントリー根拠が3条件のうち2つ以上一致した箇所のみ採用。(iv)勝率・PF(総利益/総損失)・最大ドローダウンを記録。(v)結果が良すぎる場合は期間入替テスト(ウォークフォワード)で過学習を排除。

ケーススタディ①:BTCUSDT(日足×4時間足)

日足で半減期高安にアンカーを打ち、4時間足で押し目を精査。日足OBVが高値更新、4時間足でLVN通過の長い実体陽線が出現→その足終値で1/2エントリー、VWAP軽微割れで残り1/2。ストップは直近スイング下+ATR×1.2、第一利確は直上HVN、第二は日足アンカードVWAPからのATR×2乖離。

ケーススタディ②:ETHBTC(回転用ペア)

相関の強い二資産の強弱を出来高で判定。ETHBTCでOBVが先行上向き、出来高プロファイルのLVNを一気に通過→ETH優位シグナルと見てETH現物へ回転。ETHが日足アンカードVWAPを大きく上抜けたのち出来高が細る→回転を一部巻き戻してBTCへ。

よくある失敗と回避策

・出来高急増を常に強気と誤解:上ヒゲ大+出来高急増はしばしば分配。足の形状とセットで判断。
・プロファイルの見過ぎ:HVN/LVNは“目安”。価格行動(高安の構築)を優先。
・アンカーの乱用:イベントの重要度が低いと機能しづらい。
・時間足の矛盾:下位足だけのシグナルで突撃しない。上位足のOBV傾きと整合させる。

執行とリスク管理の実務

手数料とスリッページは期待値を直接圧縮します。出来高が薄い時間帯(週末早朝など)の成行は避け、指値+OCOで執行。ストップは成行で確実に約定させ、滑りや板厚を平時から把握。資金配分は銘柄間に相関がある前提で、総リスクが口座資金の3%以内に収まるよう同時ポジションを調整します。

運用チェックリスト

□ 上位足OBVの傾き/□ アンカーの妥当性/□ LVN通過の実体足/□ ストップ位置の論理性/□ 2段階利確の根拠/□ 手数料・滑りの想定/□ ログ記録(理由・感情・結果)。

まとめ

価格はノイズでも、出来高は嘘をつきにくい。OBV・出来高プロファイル・Anchored VWAPを骨格に、フィルター→エントリー→ストップ→利確→記録の一連をテンプレート化すれば、裁量のブレを抑えた再現性の高いトレードが可能になります。まずは1銘柄・1時間足に絞って30トレード分を記録し、勝てるセットアップだけを残していきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました