M2と投資: マネーサプライから読む相場サイクルと資産バブル

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M2と投資: マネーサプライから読む相場サイクルと資産バブル

M2という言葉はニュースでよく耳にしますが、「難しそう」「自分の投資には関係なさそう」と感じている個人投資家の方は多いです。しかし実際には、M2は株式、債券、不動産、暗号資産など、ほぼすべてのリスク資産の「背景」でゆっくりと効いてくる重要な指標です。この記事では、専門用語をできるだけかみ砕きながら、M2を投資判断にどう活かすかを具体的に解説します。

M2とは何か ― 初心者でも理解できるマネーサプライの基本

まずはM2の正体を整理します。マネーサプライとは、経済全体にどれだけお金(通貨)が出回っているかを示す指標です。その中でM2は「現金+預金」のかなり広い範囲をカバーした代表的な指標です。

ざっくり言うと、M2が増える=世の中に出回るお金が増える、M2の伸びが鈍る=お金の流れが細くなる、とイメージできます。この「お金の量の増減」が、長い時間軸で株価や不動産価格、暗号資産の相場と結びついていきます。

ポイントは、M2は日中の短期トレード用の指標ではなく、「数か月~数年の相場環境」を読むためのバックグラウンド情報だということです。

M2がなぜ資産価格に効いてくるのか

投資家にとって重要なのは、「M2が増えるとなぜ株やビットコイン、REITなどが上がりやすくなるのか」というメカニズムです。シンプルな流れは次のようになります。

1. 中央銀行や銀行システムを通じて、経済に出回るお金(M2)が増える。
2. 企業や個人の銀行預金が厚くなる。
3. 預金の一部が「余裕資金」として投資に回る。
4. 株式・不動産・債券・暗号資産などへの資金流入が増え、価格が押し上げられやすくなる。

逆に、M2の伸びが鈍化したり、お金の供給が絞られたりすると、投資に回る余裕資金が減り、リスク資産から資金が引き上げられやすくなります。これが「流動性相場」と呼ばれるものの背景です。

M2の「伸び率」を見るのが実務的

M2を見るときに重要なのは「絶対額」ではなく「伸び率(前年同月比など)」です。絶対額は長期的に右肩上がりになりやすいため、伸び率の変化を見ないと意味がありません。

一般的には、以下のようなイメージを持つと分かりやすいです(あくまで例示です)。

  • M2伸び率が低く安定(例: 年率2〜4%程度): 景気は落ち着いており、過度なバブルでも深刻なデフレでもない状態。
  • M2伸び率が急加速(例: 二桁近い伸び): コロナ期のように大量のマネーが供給され、株や暗号資産が一斉に急騰しやすい環境。
  • M2伸び率が急減速・マイナス: 金融引き締め局面で、リスク資産からお金が抜けやすくなる局面。

チャートを見る際は、「伸び率がどの水準か」よりも「伸び率のトレンドが変化しているか」に注目すると実務的です。例えば、伸び率がピークアウトして下がり始めたタイミングは、中長期的なリスク資産の天井圏と重なることが多いです。

歴史的なM2とバブル・暴落の例

M2がどのように相場と関係してきたか、代表的な例を簡単に整理します。

1. バブル経済期の日本

1980年代後半、日本では地価と株価が歴史的なバブルとなりました。その背景には、低金利政策と銀行融資拡大によるマネー供給の増加がありました。M2は拡大を続け、資金が株式や不動産に流れ込みました。

この局面では、「景気が良いから株が上がっている」と見えますが、実態としては「お金がジャブジャブだったから資産が上がっていた」という側面が大きかったと言えます。その後、金融引き締めとともにマネーの伸びが鈍化し、バブル崩壊につながりました。

2. リーマンショック後と量的緩和

リーマンショック後、各国の中央銀行は大規模な量的緩和(QE)を実施しました。中央銀行のバランスシート拡大とともに、マネーサプライも増加し、株式市場はリーマンショック後から長期上昇トレンドに入りました。

この局面でM2だけを見て売買するのは現実的ではありませんが、「大規模なマネー供給が長期の株高を支えている」という構造を理解している投資家は、短期の調整局面でも過度に悲観せず、長期の上昇トレンドを取りに行く判断がしやすかったはずです。

3. コロナショック後のリスク資産高騰

コロナショック後、世界的に財政出動と金融緩和が同時に実施され、家計や企業の預金残高が急増しました。M2の伸び率が歴史的な高水準になり、株式、暗号資産、不動産など多くの資産が短期間で大きく上昇しました。

このときも、「テクノロジーの時代だから株が上がっている」というストーリーだけでは実態を説明しきれません。背後に「マネー供給の急増」という共通要因があったことをM2は教えてくれます。

M2を個人投資家のポートフォリオにどう組み込むか

では、実際に個人投資家がどのようにM2を使えばよいのでしょうか。具体的な活用ステップの一例を紹介します。

ステップ1: 月に一度、M2の伸び率チャートを確認する習慣をつける

最初のステップは非常にシンプルです。月に一回程度、M2の前年同月比伸び率のチャートを確認する習慣をつけます。難しい分析をする必要はなく、「伸び率が上昇トレンドか、横ばいか、減速トレンドか」をざっくり把握するだけで十分です。

ステップ2: リスク資産比率の調整イメージを決めておく

M2の伸びが強く、かつトレンドとして加速している局面では、「リスク資産比率をやや高めにしてもよい環境」と考えることができます。具体的には、株式比率やリスクの高いETF、暗号資産などの配分を、自分の許容範囲内でやや増やしておくというイメージです。

逆に、M2の伸び率がピークアウトし、減速トレンドに入っていると判断できる局面では、「徐々にリスク資産比率を落としていく」という方針を事前に決めておくと、暴落局面で慌てにくくなります。

ステップ3: 他の指標と組み合わせて総合判断をする

M2だけで相場の天井や底を当てようとするのは現実的ではありません。実務的には、以下のような他の指標と組み合わせることで精度が高まります。

  • 政策金利の方向性(利上げ局面か、利下げ局面か)
  • 長短金利差(イールドカーブの形状)
  • 株価指数のトレンド(S&P500、NASDAQ、TOPIXなどの中長期トレンド)
  • ボラティリティ指標(VIXなど)

例えば、「M2の伸び率が減速+利上げ局面+株価指数が長期移動平均線を割り込み始めている」といったシグナルが重なってきた場合、リスクを軽くしておく判断に説得力が出てきます。

具体例: M2の変化をトリガーにした運用イメージ

ここでは、ごくシンプルな「M2ベースの運用イメージ」を一例として示します。あくまで考え方の例であり、実際の運用では自分のリスク許容度や投資期間に合わせて調整する必要があります。

ケース1: M2伸び率が上昇トレンドに入ったとき

例えば、M2の前年同月比が3%前後で推移していたところから、4%、5%とじわじわと伸び率が高まっている局面を考えます。このとき、次のような運用イメージが考えられます。

  • 積立投資の金額を維持しつつ、追加でスポット買いを検討する。
  • 現金比率が高すぎる場合は、段階的に株式やETF、REITなどに振り向ける。
  • 暗号資産などボラティリティの高い資産への配分も、許容範囲内で少し増やす。

この局面では、相場全体を押し上げる「マネーの追い風」が吹いている可能性があるため、過度に悲観してフルキャッシュにしてしまうよりも、「流れに乗る」という視点が重要になります。

ケース2: M2伸び率がピークアウトして減速し始めたとき

一方で、M2の伸び率が急上昇した後、明確にピークアウトし、数か月かけて減速している局面では、徐々に警戒感を高めることができます。

  • レバレッジを使ったポジション(信用取引、レバレッジETF、証拠金取引など)を縮小する。
  • 含み益のあるポジションを一部利確し、現金比率を高める。
  • ディフェンシブな銘柄や債券など、景気敏感度の低い資産の比率を増やす。

このように、「M2伸び率のトレンド変化」をトリガーとして、ポートフォリオ全体のリスク量を調整するイメージを持つと、感情に振り回されにくくなります。

M2活用時の注意点 ― 盲信しないためのチェックポイント

M2は強力なマクロ指標ですが、いくつかの注意点があります。

  • タイムラグが大きい: M2の変化が実際の株価や不動産価格に反映されるまでには時間がかかることが多いです。短期売買のタイミングを当てるツールには向きません。
  • 構造変化に弱い: キャッシュレス化や金融商品構成の変化などにより、過去のM2と現在のM2を単純に比較できない場合があります。
  • 国ごとに定義や金融構造が違う: 同じM2でも、日本、米国、欧州などで定義や金融慣行が異なります。国をまたいで単純比較するのは避けた方が無難です。
  • 一つの指標に依存しすぎない: M2だけで相場を説明しようとせず、金利や企業利益、需給要因なども合わせて見ることが重要です。

これらを踏まえたうえで、M2を「大きな相場の流れを確認するための背景指標」として位置づけると、過度な期待も失望も避けることができます。

投資初心者が今日からできるM2チェック習慣

最後に、投資初心者でも今日から実践できるシンプルなM2活用ステップをまとめます。

  • 月に一度、M2の前年同月比伸び率チャートを確認する。
  • 「伸び率が上昇トレンドか、減速トレンドか」をメモしておく。
  • 自分のポートフォリオのリスク資産比率を、M2のトレンドと照らし合わせて点検する。
  • リスクを上げる・下げる判断は、M2だけでなく金利や株価トレンド、ボラティリティなども合わせて総合的に行う。

この程度でも、何も知らずにニュースの見出しだけで一喜一憂する状態からは一歩前進です。M2は派手な指標ではありませんが、「今はお金が増えている環境なのか、それとも絞られつつあるのか」を教えてくれる、長期投資の羅針盤のような存在です。

日々の値動きに振り回されず、マネーサプライという大きな流れを押さえながら、自分のリスク許容度に合ったポートフォリオをじっくり育てていく。そのための一つのツールとして、M2を活用してみてください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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