金利局面別ポートフォリオを「数字で」作る:初心者でもできる投資シミュレーション設計

投資シミュレーション
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結論:投資は「相場観」より「局面とルール」で勝ちやすくなる

投資初心者が最初につまずくのは、銘柄選びでもテクニカルでもなく「いつ買って、いつ売って、何をどれだけ持つか」を一貫して決められないことです。ニュースやSNSで気持ちが揺れ、同じ資産でも判断が日替わりになります。

そこで本記事は、金利(=お金の値段)という最も強いマクロ要因を軸に、相場を「局面」に分け、局面ごとに機械的に比率を切り替える運用を、数字で設計するやり方を解説します。ポイントは、予測で当てに行くのではなく、当たらなくても壊れにくい構造を作ることです。

なぜ「金利」が投資戦略の中心になるのか

株価は結局「将来の利益」を現在価値に割り引いたものです。割引に使われる代表が金利で、金利が上がるほど将来利益の価値は下がりやすく、逆に金利が下がるほど将来利益の価値は上がりやすくなります。これが、金利局面でグロース株が動きやすい理由です。

また債券は、金利が下がると既存債券の利回りが相対的に高く見えるため価格が上がりやすく、金利が上がると価格が下がりやすいという、株と異なる性質を持ちます。つまり、金利は株と債券の両方に同時に効いてきます。

初心者が「株が不安だから債券も」と考えた瞬間、金利上昇局面では株と債券が同時に弱くなることがあります。これが近年よくある「分散したはずなのに一緒に沈む」現象です。分散は万能ではなく、何に対して分散するのかを明確にする必要があります。

本記事のゴール:3つの局面×2つの行動を決める

本記事では相場を次の3局面に単純化します。精度よりも運用可能性を優先します。

局面A:利上げ(金融引き締め)…政策金利が上がり、長期金利も上がりやすい。現金の魅力が増え、バリュエーションが圧縮されやすい。

局面B:据え置き(高金利維持)…金利が高止まりし、景気の減速が遅れて出やすい。企業業績の「下方修正」が増えることがある。

局面C:利下げ(金融緩和)…金利が下がりやすく、債券が強くなりやすい。株は景気後退の入り口で一度荒れるが、その後回復局面が来やすい。

そして各局面で、やることは2つだけに絞ります。

(1)資産配分(株・債券・現金の比率)

(2)リスク上限(最大損失と撤退ルール)

ステップ1:初心者向けの「最小構成」ポートフォリオを作る

最小構成とは、取引回数を増やさず、商品数を増やさず、でも局面対応ができる形です。ここでは次の3資産に限定します。

株式:全世界株(または米国株)インデックス連動(ETFでも投信でも可)。

債券:中期国債(期間3〜7年程度)を中心に、過度な長期債偏重は避ける。

現金・短期:普通預金・MMF・短期国債等。金利上昇局面で「待つ力」を作る。

「暗号資産」「金」「REIT」などは魅力がありますが、最初から入れると検証軸がぶれます。まずは3資産で型を作り、後で追加するのが合理的です。

ステップ2:局面判定のルールを“誰でも再現できる”形に落とす

局面判定で重要なのは、難しい経済指標を追うことではなく、定義が明確でブレないことです。ここでは「政策金利の方向」と「10年金利のトレンド」の2条件で判定します。

判定例(シンプル版):

・直近3回の政策金利決定のうち、引き上げが2回以上 → 局面A(利上げ)寄り

・政策金利が据え置きで、10年金利が高止まり(例:過去6か月平均より上) → 局面B(高金利維持)寄り

・直近3回のうち、引き下げが1回以上、または市場金利(10年金利)が下降トレンド → 局面C(利下げ)寄り

厳密な統計モデルは不要です。実務的には「方向性が変わったか」を捉えられれば十分です。

ステップ3:局面ごとの資産配分を“数字で”決める

ここが本丸です。初心者が陥る失敗は、比率を曖昧にしてしまい、結局その場の気分で売買してしまうことです。比率は固定し、局面が変わったときだけ動かします。

提案配分(初心者向けの基準案)

局面A(利上げ):株40%/債券20%/現金40%

局面B(高金利維持):株50%/債券25%/現金25%

局面C(利下げ):株60%/債券30%/現金10%

意図は明確です。利上げ局面は「待つ比率」を増やし、利下げ局面は「取りに行く比率」を増やす。高金利維持は中間で、株比率を戻しつつも、急落の余地を残します。

なぜ「利上げで現金を増やす」のか

利上げ局面では、株のPERが縮みやすく、債券価格も下がりやすいので、両方に同時逆風が吹くことがあります。ここで現金比率を増やすと、下落時に「安く買い増せる弾」が残ります。これは精神論ではなく、リバランスの実行可能性に直結します。

ステップ4:初心者が必ず作るべき「撤退ルール」

儲けるための最大の近道は、実は「大損しない」ことです。ここでは、ポートフォリオ全体に対して撤退ルールを設定します。銘柄ごとにストップを置くより、初心者には運用しやすいです。

撤退ルールの例(運用しやすい順)

ルール1:最大ドローダウン制限…運用資産のピークから-12%に達したら、株比率を半分に落として現金へ移す。-18%なら株をさらに落として、局面が改善するまで維持。

ルール2:月次の損失上限…月次で-6%を超えたら、翌月は新規投資を停止し、リバランスのみ。

ルール3:ボラティリティ連動…株の比率を「最近の変動が大きいほど下げる」。ただし計算が難しいので初心者は後回しでよい。

重要なのは、撤退を「悪」と捉えないことです。撤退はルールに基づく資産防衛であり、再参入も同じくルールで行います。

ステップ5:簡易シミュレーションの作り方(エクセルで十分)

ここからが「実践検証」です。難しいバックテスト環境がなくても、エクセルで十分に意思決定の質は上がります。目的は精緻な未来予測ではなく、戦略の癖を知ることです。

必要な入力データ

・株式の月次リターン(例:全世界株インデックスの月次騰落)

・債券の月次リターン(例:中期国債インデックスの月次騰落)

・現金の月次利回り(短期金利に近い、ほぼ一定の値でよい)

・局面ラベル(A/B/Cを各月に付与)

計算の流れ

(1)前月末の資産残高に、当月のリターンを掛けて更新する。

(2)当月の局面に応じて目標比率を決める。

(3)リバランスは「月末に実施」と仮定し、目標比率に合わせて資産を移す。

(4)撤退ルールに抵触していたら、比率を強制的に引き下げる(例:株を半分へ)。

この一連の計算を12か月、36か月、60か月と回していくと、戦略の特性が見えます。

具体例:100万円から始める「局面別リバランス」シミュレーション

ここでは数値を入れて感覚を掴みます。あくまで例であり、実際の市場はもっと複雑です。しかし初心者に必要なのは「動き方の理解」です。

前提

開始資金:100万円。初月は局面A(利上げ)。目標配分:株40/債券20/現金40。

月次リターン(例):

・月1:株-4%、債券-2%、現金+0.3%

・月2:株-3%、債券-1%、現金+0.3%

・月3:株+2%、債券-0.5%、現金+0.3%

月1(開始→月末)

開始時:株40万/債券20万/現金40万。

月末評価:株38.4万(-4%)/債券19.6万(-2%)/現金40.12万(+0.3%)。合計98.12万円。

目標比率は同じ(局面A)なので、月末に40/20/40へ戻します。合計98.12万円の40%は39.248万円。株が不足しているので現金から株へ移します。こうして「下がった株を買う」行動が、感情ではなく自動化されます。

月2

株を買い増している状態で株がさらに下がるので、心理的にはきつい局面です。しかし現金比率が40%あるため、追証や生活資金の不安は起きにくい。結果としてルールを守りやすくなります。

月末の合計がさらに減り、ピークからの下落が-12%を超えたなら、撤退ルールに従い株比率を半分に落とします。ここで「耐える」か「逃げる」かを悩まないことが重要です。

月3

株が反発しても、撤退ルール中なら株比率は抑えたままです。初心者はここで「やっぱり戻るなら買っておけばよかった」と考えがちですが、目的は最適化ではなく破綻回避です。大きなドローダウンを避けることで、次の局面C(利下げ)でリスクを取りに行けます。

「利下げ局面の罠」:最初の利下げは株にとって必ずしも追い風ではない

初心者が誤解しやすい点をはっきり言います。利下げ=株高、ではありません。利下げは「景気が悪化してきた」サインとして出ることが多く、最初の利下げ局面では株が荒れやすい場合があります。

だから局面Cでは、株比率を上げつつも、債券30%を確保しています。債券が上がる局面でクッションを作り、株の上下に耐えます。さらに、撤退ルールは継続します。これが「当たらなくても壊れない」設計です。

初心者がやりがちな“シミュレーションの間違い”

間違い1:都合の良い期間だけ切り取る…強気相場だけで検証すると、どんな戦略でも良く見えます。最低でも上げ相場・下げ相場・横ばいの3局面を含めます。

間違い2:売買コストと税金を無視する…特に短期売買では、コストが勝率を食い潰します。初心者は売買頻度を下げる方向で設計するのが合理的です。

間違い3:リスク(最大損失)を定義しない…利益の平均だけ見ると、戦略は破綻します。ドローダウン(最大下落)を必ず確認します。

実装:毎月10分で回す「運用オペレーション」

戦略は作るより「回す」ほうが難しい。そこで、毎月の作業を10分に落とし込みます。

月末(または月初)にやることは次の3つだけです。

(1)政策金利と長期金利の方向を確認し、局面A/B/Cを付ける。

(2)目標比率に合わせてリバランスする(積立があるなら積立で近づける)。

(3)ピークからの下落率を確認し、撤退ルールに抵触していないかを見る。

これで、日々の値動きに振り回されにくくなります。初心者ほど、投資を「日課」ではなく「月次業務」にしたほうが勝ちやすいです。

応用:ETF・投信・NISAをどう使うか

実務上の選択肢として、投信(つみたて)とETF(取引)のどちらでも構いません。違いは「手間」と「注文の自由度」です。

積立中心なら投信が楽です。売買コストが見えにくい点はありますが、初心者にとって最大の敵はコストではなく“自滅”なので、手間が減ることは正義です。

ETFは、局面転換で大きく比率を動かしたいときに便利です。ただし、注文回数が増えると感情が入りやすい。ETFを使うなら、月1回だけのルールを守ることが条件です。

NISAの枠は「長期で持ちたい中核」に使い、局面対応(現金比率の増減)は課税口座でやると運用がスムーズです。全てを非課税枠で回そうとすると、撤退ルールが働きにくくなる場合があります。

よくある質問:この戦略で儲かるのか?

儲ける確率を上げる要素は2つあります。ひとつは、期待リターンがある資産(株など)を持ち続けること。もうひとつは、退場しないことです。本記事の戦略は、後者を強くします。結果として、長期での勝率が上がりやすい設計です。

「最大効率で儲ける」より「大負けしない」を優先するのが、初心者が最短距離で上達する方法です。シミュレーションで自分の許容ドローダウンを把握し、許容範囲内に収める設計を先に作ってください。

まとめ:今日やるべき3つの行動

まずは、株・債券・現金の3資産で、局面A/B/Cと比率を決めてください。次に、撤退ルール(最大下落の閾値)を数字で決めてください。最後に、過去36か月分で良いので、月次で簡易シミュレーションを回して、戦略の癖を確認してください。

投資は才能よりも運用設計です。相場の正解を当てに行くより、当てなくても続く構造を作った人が、最後に勝ちます。

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