現金比率×リバランスの投資シミュレーション:暴落で折れない運用設計

基礎知識

投資で一番難しいのは、銘柄選びよりも「暴落時に行動がブレない仕組み」を作ることです。人は下落局面で恐怖に飲まれ、売るべきでないところで売り、買うべきでないところで買う。結果として、期待リターンが高いはずの長期投資が、本人の売買で台無しになります。

そこで本記事は、現金比率(キャッシュバッファ)とリバランスのルールを、シンプルな投資シミュレーションとして組み立てます。ポイントは「未来予測」ではなく「行動を固定する運用設計」です。市場を当てにいくのではなく、自分の手を縛る。これが、再現性の高い“儲け方の土台”になります。

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  1. なぜ現金比率とリバランスが重要なのか
  2. 今回の投資シミュレーションの設計
    1. 前提:積立投資と資産配分
    2. 3つのポートフォリオ案
  3. 暴落シナリオを具体化する
    1. パターン1:急落(3か月で-35%)
    2. パターン2:じわ下げ(12か月で-30%)
    3. パターン3:暴落+二番底(6か月で-30%→反発→さらに-20%)
  4. リバランスのルールを3種類用意する
    1. ルール1:年1回の定期リバランス
    2. ルール2:乖離幅リバランス(±5%)
    3. ルール3:下落時の追加リバランス(段階買い)
  5. シミュレーションを自作するための具体手順
    1. ステップ1:列を作る
    2. ステップ2:毎月の積立の入れ方を決める
    3. ステップ3:リバランスの判定を入れる
    4. ステップ4:実行時の売買量を決める
  6. 数字で理解する:3つの現金比率の特徴
    1. 案A(90:10):平常時は強いが、暴落耐性は最弱
    2. 案B(70:30):伸びと耐性のバランスが良い
    3. 案C(50:50):暴落で折れにくいが、平常時の機会損失が大きい
  7. 儲けるためのヒント:現金比率を“目的”で分解する
    1. 用途1:生活防衛資金(投資と切り離す)
    2. 用途2:暴落時の買い増し原資(戦略用キャッシュ)
    3. 用途3:リバランスの潤滑油(運用を滑らかにする)
  8. よくある失敗:現金比率とリバランスを“気分”でやる
  9. 現実の運用に落とす:初心者向けの推奨ルール例
  10. まとめ:勝つより、負けない仕組みを先に作る

なぜ現金比率とリバランスが重要なのか

現金比率は、単なる“待機資金”ではありません。暴落時に精神を守り、次の行動(買い増し・積立継続・生活防衛)を可能にする保険です。一方で、現金は長期で見るとインフレに弱く、機会損失を生みます。つまり、現金比率は高すぎても低すぎてもダメで、目的に応じた設計が必要です。

リバランスは、資産配分が崩れたときに元に戻す行為です。上昇局面では株式比率が増え、下落局面では減ります。放置すると、実は「高値で買い増し、安値で放置」という形になりがちです。リバランスはこれを逆転させ、「高いときに売り、安いときに買う」方向に機械的に寄せます。

結論として、現金比率とリバランスは“メンタルと売買ルール”の問題であり、投資の勝率を上げるというより、致命傷を避けるための装置です。

今回の投資シミュレーションの設計

本記事では、現実的に再現しやすい前提でシミュレーションを組みます。厳密な統計モデルより、実務(運用)で使えるルールを優先します。あなたがExcelやスプレッドシートでそのまま試せることを目的にしています。

前提:積立投資と資産配分

モデルは「株式インデックス」と「現金(無リスク資産)」の2資産です。株式はS&P500や全世界株式のような広範な指数を想定し、現金は円預金・短期国債・MMFなど価格変動が小さいものを想定します(実際には為替や金利も絡みますが、まずは構造理解が目的です)。

毎月一定額を積み立てます。積立額は例として月10万円とします(あなたの金額に置き換えてください)。運用期間は10年を想定し、途中に大きな下落局面が1回あるシナリオを含めます。

3つのポートフォリオ案

比較するのは、現金比率が異なる3つの設計です。ここでいう現金比率は「初期の目標配分(ターゲット)」です。

案A:株式90%:現金10%(攻め型)

案B:株式70%:現金30%(バランス型)

案C:株式50%:現金50%(守り型)

重要なのは、どれが正しいかではありません。自分の“続けられる設計”がどれかを見極めることです。期待リターンだけ見ればAが有利に見えますが、暴落時に投げ売りしたら最悪です。逆にCは耐性が高い一方、平常時の伸びは抑えられます。ここを数字で確認します。

暴落シナリオを具体化する

「暴落に備える」と言っても、暴落の形はさまざまです。ここでは理解しやすい形で、次の3つの下落パターンを仮定します。あなたの感覚に近いパターンを選んで検証してください。

パターン1:急落(3か月で-35%)

短期間でドンと落ちるタイプです。ニュースが連日ネガティブになり、SNSも不安で埋まります。ここで積立停止する人が多い。

パターン2:じわ下げ(12か月で-30%)

静かに下げ続けるタイプです。体感的には一番つらい。反発が少なく、希望が削られます。ここで“諦め売り”が出やすい。

パターン3:暴落+二番底(6か月で-30%→反発→さらに-20%)

最も厄介です。初動で買った人が二番底で折れ、最安値付近で投げやすい。ルールがないと最悪のタイミングで売りがちです。

リバランスのルールを3種類用意する

リバランスは「やるかやらないか」ではなく「どうやって、いつ、どのくらい」が重要です。ここでは再現しやすい3種類のルールを用意し、性格に合うものを選べるようにします。

ルール1:年1回の定期リバランス

毎年同じ月に、目標配分に戻します。手間が少なく、長期投資で定番です。欠点は、暴落が起きても次のリバランスまで待つため、機会を逃すことがある点です。

ルール2:乖離幅リバランス(±5%)

株式比率が目標から5%ずれたら戻す、というルールです。暴落や急騰に反応しやすく、売買が“価格変動の大きいとき”に集中します。欠点は、相場が荒れると回数が増えることです。

ルール3:下落時の追加リバランス(段階買い)

暴落局面で機械的に買い増すルールです。例えば「直近高値から-10%で現金の10%を株へ」「-20%でさらに10%」「-30%でさらに10%」のように段階化します。これは“裁量の誘惑”を減らします。欠点は、下落が深いときに現金が枯渇しやすい点です。

シミュレーションを自作するための具体手順

ここからは、あなたが自分で検証できるように、スプレッドシート上の設計を言語化します。数式そのものより、列の意味を理解するのが重要です。

ステップ1:列を作る

日付(または月)、積立額、株式価格指数(仮の推移でOK)、株式保有額、現金保有額、総資産、株式比率、リバランス実行フラグ、リバランス後の株式額・現金額、を用意します。

ステップ2:毎月の積立の入れ方を決める

積立額を、目標配分に従って株式と現金に振り分けます。例:株式70%:現金30%なら、月10万円のうち7万円を株式、3万円を現金に入れます。これだけでも、暴落時の体感がかなり変わります。現金が積み上がると、心理的な余裕が増えるからです。

ステップ3:リバランスの判定を入れる

年1回なら「特定の月なら実行」。乖離幅なら「株式比率が目標±5%を超えたら実行」。段階買いなら「ピークからの下落率が-10%、-20%、-30%に到達したら実行」。こうした判定を、機械的にTRUE/FALSEで出せるようにします。

ステップ4:実行時の売買量を決める

定期・乖離幅のリバランスは「総資産×目標株式比率」に株式額を合わせるだけです。現金⇄株式の移動量が自動で決まります。段階買いは、現金から一定割合を株式へ移します。重要なのは“1回で全弾撃たない”ことです。段階化することで、二番底でも弾が残ります。

数字で理解する:3つの現金比率の特徴

ここでは、結果の“見え方”を整理します。厳密な期待値は相場環境で変わりますが、構造として次が再現しやすいです。

案A(90:10):平常時は強いが、暴落耐性は最弱

上昇相場では最も伸びます。ただし暴落時は資産の下落幅が大きく、積立額が小さい初期ほどメンタルを削ります。ここで積立停止・売却をしやすいなら、数字上の期待リターンは意味がありません。案Aは「市場に居続けられる人」向けです。

案B(70:30):伸びと耐性のバランスが良い

多くの人にとって、現実的に続けやすい設計になりやすいです。暴落時に現金が“クッション”になり、下落率が緩みます。また、リバランスの弾(買い増し原資)があるため、下落局面でルール通りに株式を増やしやすい。結果として、回復局面で効いてきます。

案C(50:50):暴落で折れにくいが、平常時の機会損失が大きい

暴落耐性は高いです。総資産の値動きが小さく、精神的に最も楽です。ただし、上昇相場での伸びは抑えられます。大きな問題は、相場が強い時期に「なんで増えないんだ」と不満が出て、途中でルールを破りやすい点です。守り型は、守り切れる人に向いています。

儲けるためのヒント:現金比率を“目的”で分解する

現金比率を一つの数字で決めると失敗します。現金には性格の違う3つの用途が混ざるからです。

用途1:生活防衛資金(投資と切り離す)

これは投資の現金比率に混ぜないほうが安全です。生活費数か月〜1年など、自分の職業・家族構成・収入の安定性で決めます。ここが足りないと、相場が悪いときに生活のために売る羽目になります。

用途2:暴落時の買い増し原資(戦略用キャッシュ)

これが投資としての現金比率です。暴落時に段階的に使う設計にしておくと、恐怖の中でも“やることが決まっている”状態になります。逆に、何も決めずに現金だけ持つと「もっと下がるかも」で結局使えません。

用途3:リバランスの潤滑油(運用を滑らかにする)

定期リバランスや乖離幅リバランスを行うとき、現金があると売買がスムーズです。特に積立投資では、毎月の積立で配分を調整できるため、リバランスの頻度を減らせます。これは“手数の少なさ”として効きます。

よくある失敗:現金比率とリバランスを“気分”でやる

初心者がやりがちな失敗は、相場が上がると株比率を上げ、相場が下がると現金比率を上げることです。つまり「高値で株を増やし、安値で株を減らす」。本人の感情は正しいと感じますが、行動としては逆です。

これを避けるには、ルールを文章で固定します。例として、次のように書けるレベルまで落としてください。

「毎月10万円積立。目標配分は株70%、現金30%。乖離幅は±5%。直近高値から-10%で現金の10%を株へ、-20%でさらに10%、-30%でさらに10%。ただし生活防衛資金は別口座に置き、戦略用現金が枯渇したら段階買いは終了。年1回、12月に必ず目標配分へ戻す。」

この文章があると、暴落中でも“悩む余地”が減ります。投資は、悩む余地が減るほど強いです。

現実の運用に落とす:初心者向けの推奨ルール例

最後に、再現性が高く、破綻しにくいルール例を提示します。あなたの性格が「暴落が怖い」「損失がつらい」寄りなら、ここから始めるのが無難です。

目標配分は株70%:現金30%。積立は毎月一定額。リバランスは乖離幅±5%を基本にしつつ、暴落時は段階買いを小さく組み合わせます。段階買いは現金の全量を使わず、最大でも戦略用現金の30%までに制限します。これにより、二番底でも弾切れになりにくい。

さらに重要なコツとして、相場が好調なときほど現金比率を守ります。上昇相場で株式比率が増えたら、リバランスで少し戻す。これは“利益確定”ではなく“リスク管理”です。あなたの目的は当て物ではなく、長期で資産を増やすことです。

まとめ:勝つより、負けない仕組みを先に作る

投資で安定して資産を増やす人は、共通して「自分の行動を制御する仕組み」を持っています。現金比率とリバランスは、その中心です。

本記事の要点は、現金比率を“用途で分解”し、リバランスを“文章化されたルール”に落とすこと。これができれば、暴落局面でもやることが決まり、結果として市場に居続けられます。市場に居続けた人だけが、回復局面のリターンを受け取れます。

次にやるべきことは、あなたの金額でシートを作り、過去の暴落(急落・じわ下げ・二番底)を当てはめて、続けられる設計を選ぶことです。儲けるための最短ルートは、派手な手法ではなく、継続できる運用設計です。

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