リバランスは、値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う作業だと思われがちです。しかし本当の目的は、相場を当てることではなく、最初に決めたリスクの範囲へポートフォリオを戻すことにあります。
今回の解説役は、真夏のテラスで資産配分を見直すカナさんです。「上がったものを売るのが嫌なら、まず目標比率から何%ずれたら確認するかを決めておくと、感情を減らせます」と話します。

リバランスで管理するのは「金額」より「リスク」
株式が上昇すると、当初50%だった株式比率が70%になることがあります。資産が増えているため嬉しい状態ですが、同時に株価下落の影響も大きくなっています。反対に株式が下落して比率が30%になれば、値動きは小さくなる一方、長期の成長資産が少なくなります。
目標配分は年齢だけで決める必要はありません。生活防衛資金、収入の安定性、使う予定の時期、下落時に何%まで耐えられるかを合わせて考えます。
最初に作るべきは「目標配分表」
| 資産 | 目標比率 | 許容範囲 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 国内外株式 | 50% | 40〜60% | 長期の成長 |
| 債券 | 25% | 20〜30% | 値動きの緩衝材 |
| 現金 | 20% | 15〜25% | 生活・予定支出 |
| その他資産 | 5% | 0〜10% | 分散・検証枠 |
例えば投資資産が1,000万円で、株式500万円、債券250万円、現金200万円、その他50万円なら目標通りです。株式だけが700万円へ増え、他が変わらなければ株式比率は約62.5%になります。許容範囲を60%までと決めているなら、慌てて全売却するのではなく、次の積立先を債券へ寄せる方法を検討できます。
3つのリバランス方法と使い分け
1. 積立先を変える
最も実行しやすい方法です。株式比率が高くなったら、数か月間は債券や現金の積立を増やします。売却益や税金を発生させずに比率を戻せる可能性があります。新NISAなど制度上の枠や商品ごとの売買条件は、実際の口座で確認します。
2. 配当や利息の行き先を変える
分配金や利息を、比率の低い資産へ回す方法です。売却を避けられる一方、分配金の時期や金額は変動します。自動再投資にしている場合は、設定変更の手順と反映日を確認してください。
3. 売却と購入を同時に行う
許容範囲を大きく超えたときや、投資目的が変わったときに使います。課税口座では売却益への課税、投資信託では約定日や受渡日、海外資産では為替の影響を確認します。売る資産だけでなく、買う資産のリスクも同時に点検します。
「5%ずれたら確認」のルールを作る
リバランスの頻度を毎月にすると、短期の値動きに反応しすぎることがあります。そこで、年1回の定期確認と、目標比率から5ポイントずれたときの臨時確認を組み合わせます。
- 現在の時価を資産分類ごとに集計する。
- 各資産の比率を「時価÷総資産」で計算する。
- 目標比率との差をポイントで記録する。
- 許容範囲を超えた資産だけ、積立・配当・売却の順で調整する。
- 変更理由と次回確認日をメモする。
株式50%が65%になった場合、「株価が高いから売る」のではなく、「目標から15ポイント離れ、許容範囲を超えたから戻す」と説明できる状態が理想です。
実例:下落時に売りたくなったとき
株式50%、債券30%、現金20%の配分で始め、株式が30%下落したとします。単純化すると株式の評価額は35%分、債券と現金を合わせて50%分となり、株式比率は約41.2%まで低下します。
ここで機械的に目標へ戻すなら、株式を追加購入する選択肢があります。ただし、生活防衛資金や近い将来の支出資金を使ってはいけません。投資待機資金として別に確保した範囲だけで行い、数回に分ける方法もあります。
リバランスでやってはいけないこと
- ニュースを見て目標比率を毎回変える。
- 含み損を取り戻すため、株式比率を一気に高める。
- 税金や手数料を確認せずに頻繁に売買する。
- 資産分類を都合よく変えて、ずれを見えなくする。
- 現金を生活費と投資用に分けず、下落時に取り崩す。
特に、リバランスを相場予想に変えてしまうのは危険です。目標配分そのものを変えたいなら、収入や支出、家族構成、投資期間が変わったかを理由にします。直近の値動きだけを理由に目標比率を動かすと、上昇局面で買い増し、下落局面で売る行動になりやすくなります。
年1回の点検シート
確認項目は次の5つで十分です。①生活防衛資金は確保できているか、②3年以内に使うお金を価格変動資産へ置いていないか、③各資産の比率は許容範囲内か、④手数料・税金・為替コストを把握しているか、⑤目標配分は現在の自分に合っているか。
カナさんは「リバランスは、上がった資産を嫌いになるためでも、下がった資産を無理に好きになるためでもありません。決めた配分を守れる仕組みにすることが、長く続けるコツです」とまとめます。


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