初心者向けFX『ラウンドナンバー×時間帯ブレイクアウト』戦略:1日30分で組めるシンプル手法と自動化入門

FX

本記事では、FX初心者でも扱いやすいシンプルな裁量+半自動のハイブリッド手法として、「ラウンドナンバー(キリ番)×時間帯ブレイクアウト」を解説します。1つの通貨ペアに対して1日1〜2回の判断で済むうえ、過度なインジケーターに頼らず、相場の構造(流動性の集中と時間帯の出来高増)を素直に利用します。具体的なエントリー・利確・損切り・検証・運用フローまで、実装できるレベルで落とし込みます。

戦略の骨子(要約)

本戦略は次の3点を合わせます。

  1. ラウンドナンバー:価格が「◯◯.00」や「◯◯.50」などのキリ番で、注文が集まりやすいという行動ファイナンス上の性質。
  2. 時間帯ブレイク:ロンドン序盤(日本時間16〜18時<冬時間16〜17時、夏時間17〜18時を中心>)は出来高が増え、値動きが加速しやすい。
  3. 事前圧縮(レンジ)フィルター:ロンドン前のアジア時間に値幅が小さいほど、その後の拡張が生じやすいという仮説。

この3つを満たす場面のブレイクに順張りで乗り、リスクリワードを明確に固定(例:1.2R〜1.5R)します。誇張せずに言えば、「毎日同じことを丁寧に繰り返す」戦略です。

対象通貨ペアと時間足

まずはスプレッドが狭く、傾向が比較的安定しやすい通貨ペアから始めます。

  • 推奨:USDJPY(ドル円)、EURUSD(ユーロドル)
  • 時間足:5分足または15分足(裁量判断+簡易自動化の両立がしやすい)

スプレッドやボラティリティを考えると、初心者は1日あたりの判断回数を絞れる15分足が扱いやすいです。

具体的ルール設計

前提定義

  • キリ番(ラウンド)レベル:価格が「.00」や「.50」の水準。USDJPYなら150.00、150.50、151.00…といった水準です。
  • ロンドン時間:日本時間で冬期16:00〜、夏期17:00〜。記事時点の一般的な目安であり、年により前後します。最初の1〜2時間を主戦場にします。
  • アジア時間レンジ:東京時間の高値−安値の値幅(例:日本時間9:00〜15:00)
  • R:1トレードあたりのリスク(円換算)。損切り幅×ロット=1R。

エントリーフィルター

  1. アジア時間の値幅が小さいこと:例として直近アジア時間の高安レンジが、直近20日のアジア時間平均レンジ(ATR代替)よりも8〜20%小さい。
  2. 直近の価格が、最も近いキリ番(.00または.50)から±10〜15pips以内で推移し、値動きが圧縮されている。
  3. 重要指標の直前直後を避ける:発表前後±30分は新規エントリーを原則回避。

トリガー(エントリー条件)

  • ロンドン序盤に、キリ番を5〜7pips超えて終値確定した15分足が出現したら、次足成行で順張り(買い抜けなら買い、割れなら売り)。
  • 同時に、直前3本の平均実体が小さい(例:平均実体≦8pips)など、圧縮→拡張の転換を確認。

損切り・利確

  • 損切り:キリ番の反対側に固定(例:買いならキリ番−12pips、売りならキリ番+12pips)。スプレッドを上乗せ。
  • 利確:固定利確1.2R〜1.5R。含み益が+0.5R到達で建値にストップ繰上げ。
  • 時間フィルター:エントリーから90分経過で未達成なら手仕舞い(ロンドン序盤の優位性に限定)。

ポジションサイズ

1トレードあたり口座残高の0.5%〜1.0%を上限目安にします。例:口座100万円、損切り幅12pips、USDJPY1pips=100円(1万通貨)なら、1R=1,200円。許容1R=5,000円なら通貨数量は約4万通貨。

数値例:ドル円150.00の買い抜け

前提:アジア時間の値幅が小さく、価格が149.90〜150.05で膠着。ロンドン序盤に15分足終値で150.07を上抜け確定。

  1. 次足成行で買いエントリー(150.08想定)。
  2. 損切り:キリ番−12pips=149.88(スプレッド込みで149.885)。損切り幅約19.5pips。
  3. 利確:1.3Rで設定→約25.4pips上=150.33付近。到達で全利確。
  4. +0.5R達成(約10pips)で建値にストップ繰上げ、以降は放置。

数字は一例です。通貨ペアや市場状況で調整します。

なぜ機能するのか(直観)

  • 注文の集積:キリ番には逆指値やOCOが溜まりやすく、ヒットした瞬間に流動性が一時的に増え、値が伸びやすい。
  • 時間帯の出来高:ロンドン勢の参入で流動性が増し、アジア時間に作られた狭いレンジが壊れやすい。
  • 期待値の源泉:「圧縮→拡張」の力学と、固定Rの損益比によるプラス期待値の積み上げ。

避けるべき場面

  • 重要指標(雇用統計、CPI、政策金利等)の前後30分〜1時間。
  • すでにロンドン前から大きくトレンドが出ており、直近に大陰陽線の連発がある。
  • スプレッドが通常より広がっている(流動性が薄い)時間帯。

検証(バックテストとリプレイ)

最小構成

  1. TradingViewの15分足でUSDJPY/EURUSDを表示。
  2. 水平線を「.00」「.50」に引き、アジア時間の高安を毎日メモ。
  3. ロンドン序盤の初回ブレイクのみ採用し、上記の固定ストップと固定利確で結果を手帳に記録。

評価指標

  • 勝率(例:45〜55%の範囲に収まるか)
  • プロフィットファクター(1.2以上を目標)
  • 最大ドローダウン(口座残高の5〜10%以内)

20〜30取引ではばらつきが大きいので、最低でも3〜6か月分(60〜120取引)を記録し、月別・曜日別も集計します。

半自動化:Pine Scriptの雛形

裁量の「指標直前回避」「当日のニュース確認」は人間が行い、条件成立の検知・通知、エントリー&ストップ設定をスクリプトに任せる形が現実的です。以下は条件検知とアラート用の簡易例です(売買は自己責任でご判断ください)。


//@version=5
indicator("RoundNumber Time Breakout (Simple)", overlay=true)
sess = time(timeframe.period, "0800-1500:1234567") // Asia approx JST 8-15
inAsia = not na(sess)

// Round levels every .50 on JPY pairs (0.5) or .005 on EURUSD-like pairs.
// Here we approximate by pip size.
pip = syminfo.mintick
roundStep = pip * 50
lvl = math.round(close / roundStep) * roundStep

// Asia range compression (use true range proxy)
asiaHi = ta.highest(high, 28)
asiaLo = ta.lowest(low, 28)
asiaRange = asiaHi - asiaLo
atr = ta.atr(28)
compress = asiaRange < atr * 0.9

// London window (approx JST 16-18 / 17-19 in DST terms; use exchange time)
london = time(timeframe.period, "0700-0900:1234567") // generic; adjust as needed
inLondon = not na(london)

// Breakout confirmation: close beyond round level by threshold
th = pip * 6
longTrig = inLondon and compress and close > lvl + th and close[1] <= lvl + th
shortTrig = inLondon and compress and close < lvl - th and close[1] >= lvl - th

plot(lvl, "Round", color=color.gray)
plotshape(longTrig, style=shape.triangleup, location=location.belowbar, text="Long")
plotshape(shortTrig, style=shape.triangledown, location=location.abovebar, text="Short")

alertcondition(longTrig, "Long Break", "Long break at {{close}}")
alertcondition(shortTrig, "Short Break", "Short break at {{close}}")
  

実運用では、ペア別の小数点仕様や時間ウィンドウの定義を調整してください。実売買の自動執行はブローカー仕様に依存します。

資金管理(ロット計算)

損切り幅(pips)×通貨数量×pips価値=金額損失が1Rです。1Rを口座の1%以内に収める設計を基本とします。


例:口座100万円、損切り幅12pips、USDJPYで1万通貨のpips価値約100円 → 1R=1,200円。
許容1R=5,000円なら「約4万通貨」まで。
  

連敗時は1Rを段階的に縮小し、月次でエクイティが回復したら基準に戻します。

デイリー運用チェックリスト

  1. 経済指標カレンダーを確認(該当ペアの重要指標の有無)。
  2. アジア時間の値幅をメモし、圧縮かどうかを判定。
  3. 最も近いキリ番に水平線を引く。
  4. ロンドン序盤は通知をオン。成立時のみ執行、未成立は見送り。
  5. エントリー後は建値繰上げと固定利確の手順を機械的に実行。

よくある失敗と対策

  • 過剰な裁量:ルール外の追い買い・ナンピンはしない。毎回の判断を記録し、逸脱を可視化します。
  • イベント軽視:指標前後のブレイクはフェイクが増えるため、回避ルールを厳守。
  • 損切りの曖昧さ:ストップは常に置く。建値繰上げもルール通りに。
  • 多通貨同時運用:最初は1ペアのみ。習熟後に拡大。

口座準備と基本コスト

国内FX口座の一般的な開設フローは次の通りです。

  1. 本人確認書類・マイナンバーの準備
  2. オンライン申込(属性・投資経験の入力)
  3. 審査通過後、ID/パスワード受領
  4. 入金方法の登録(銀行振込・即時入金)
  5. 取引ツール(Web/アプリ/MT系)のセットアップ

取引コストは主にスプレッドとスリッページです。本戦略はエントリー回数が少ないため、過度にコストの影響を受けにくい設計です。

運用の拡張アイデア

  • 利確を分割(50%固定利確+残りトレイリング)
  • アジアレンジの数値定義を厳密化(時間窓・閾値を固定)
  • 曜日別の最適化(火・木のみ執行等)
  • 複数ペアの同時監視(相関を考慮し、最大同時エントリー数を制限)

用語ミニ辞典

ラウンドナンバー
心理的節目となる価格。注文が集まりやすい。
ブレイクアウト
価格がレンジ上限・下限や重要水準を突破する現象。
R(リスク)
1回の取引で許容する損失金額の単位。
ATR
平均真の値幅。ボラティリティの指標。

まとめ

「ラウンドナンバー×時間帯ブレイクアウト」は、観察対象が明確で、手順がシンプル時間効率が良いという初心者に合った特徴を持ちます。最初の1か月は厳格に検証→次の1か月は少額で練習→3か月目からルール通りの本格運用、と段階的に進めることで、期待値がブレない運用習慣が身につきます。

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