本記事は、前篇で解説した「仲値フロー戦略」をさらに実運用レベルに昇華するための統合ガイドです。
テーマは実売買ログ分析・戦略ポートフォリオ構築・資金曲線のリスク管理。個別戦略の優位性検証に留まらず、複数戦略を組み合わせて安定した資産成長を目指す方法を解説します。
1. 実売買ログの収集と分析
バックテストではなく、実際の売買ログを記録・分析することが再現性の鍵です。MT5やブローカーAPIを活用して以下を取得します。
- 約定時間、価格、数量、手数料、スリッページ
- エントリー理由(シグナル値や条件)
- エグジット理由(時間決済・SL・TPなど)
ログ収集例(Python, MT5 API)
import MetaTrader5 as mt5
import pandas as pd
def fetch_deals(symbol="USDJPY"):
deals = mt5.history_deals_get(None, None, group=symbol)
df = pd.DataFrame(list(deals), columns=deals[0]._asdict().keys())
return df[["time", "symbol", "price", "profit", "volume", "comment"]]
分析手法
- 曜日別勝率、時間帯別損益のヒートマップ化
- スリッページ平均値・標準偏差をモニタリング
- 勝ち負け分布(プロフィットファクター・損益比率)
- エッジ劣化検知:直近30トレードと全期間を比較
2. エッジ劣化の統計的モニタリング
戦略の優位性は永遠ではありません。以下の指標を定期的に確認し、劣化を早期に発見します。
- 移動平均勝率:過去30, 60, 90トレードで算出
- 累積損益曲線の傾き(線形回帰の傾きがマイナス化)
- ウォークフォワードテストによる直近データ適応性
- カイ二乗検定で曜日別分布の変化をチェック
3. 戦略ポートフォリオ化
仲値フロー単体では市場環境に依存しやすいため、他の時間帯や戦略と組み合わせてポートフォリオを構築します。
例:時間軸分散
- 東京9:55 仲値フロー戦略
- ロンドン16:00 フィックス戦略
- NYオープン ブレイク戦略
例:戦略タイプ分散
- トレンドフォロー(ブレイクアウト)
- レンジ逆張り(フェード)
- イベントドリブン(指標発表モメンタム)
4. 資金曲線とリスク管理
資金曲線を安定させるには、ポジションサイズ調整とドローダウン制御が重要です。
リスク管理手法
- リスク割合固定:1トレードで資産の0.25〜0.5%をリスクに設定
- ドローダウン監視:最大DDが10%を超えたら停止ルール
- モンテカルロシミュレーションで資金曲線の破綻確率を推定
資金曲線の統計評価
- シャープレシオ・カルマーバ比率を定期算出
- 連敗確率を二項分布で推定
- 資産成長曲線の回帰分析でトレンドを数値化
5. 実運用体制の設計
- 取引VPSの導入(東京ロケーション, 低遅延)
- 日次で自動ログ収集・Slack/メール通知
- 週次でリスク指標ダッシュボードを生成
- 異常検知アラート:スリッページ急増、勝率急低下
まとめ
仲値フロー戦略は短時間の需給偏りを利用した「ミクロ構造戦略」の典型です。
しかし実運用では、ログ分析・エッジ監視・ポートフォリオ構築・資金曲線リスク管理を組み合わせて初めて安定収益化が可能です。
本記事を参考に、自身のトレードログから「戦略ポートフォリオ」を作り上げ、統計的に管理された資産成長を目指してください。
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