MAE・MFEで損切りと利確を検証する|取引の途中経過をRで比較する方法

売買日誌と価格チャートを検証する架空のトレーダー。AI生成イメージ。 リスク管理

損切り直後に株価が戻る。利益確定した後に大きく伸びる。こうした経験を重ねると、「損切りを広げる」「利確を遅らせる」と感覚でルールを変えたくなります。しかし印象に残る数回の取引だけでは、改善したつもりで損失を増やす可能性があります。

そこで使えるのがMAEとMFEです。取引の最終損益だけでなく、保有途中にどこまで不利・有利に動いたかを記録する方法です。本記事では、単一の買い建玉を対象に、記録表の作り方から損切り案の検証までを説明します。数値はすべて架空の学習用データで、検証実績や推奨ルールではありません。

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MAEとMFEは「途中経過」の二つのものさし

MAEはMaximum Adverse Excursionの略で、保有中の最大逆行幅です。MFEはMaximum Favorable Excursionの略で、最大順行幅を指します。ここでは比較しやすいよう、どちらもゼロ以上の値で表します。例えば1,000円で買い、保有中の安値が970円、高値が1,060円なら、MAEは30円、MFEは60円です。

1,030円で売れば確定利益は30円ですが、MAE30円・MFE60円という途中経過は別に残ります。同じ30円の利益でも、最初から順調に上がった取引と、深く下げてから戻った取引では必要だった損失許容度が異なります。最大逆行の基本的な定義はFidelityの分析ツール利用ガイドにも掲載されています。

買いの場合は「MAE=最大(0、買値−保有中安値)」「MFE=最大(0、保有中高値−買値)」です。売り建てでは方向を逆にします。取引後の高値・安値は通常のMAE・MFEに含めません。決済後の経路も調べたいときは、「決済後5営業日の順行幅」など別の列として定義します。

円ではなくRに直すと、違う銘柄も比較しやすい

1株30円の逆行は、株価500円の銘柄と10,000円の銘柄で意味が異なります。そこで、エントリー前に決めた初期損失幅を1Rとして正規化します。買値1,000円、初期損切り水準960円なら1R=40円です。この定義は取引後に変更せず、実際の約定損失が40円を超えた場合も元の40円を分母にします。

先ほどの取引はMAE=30÷40=0.75R、MFE=60÷40=1.5R、確定損益=30÷40=0.75Rとなります。株数が違っても値幅の特徴を比較できます。一方、口座への損益貢献を見るには円換算した総損益も必要です。Rだけを見て大きなポジションの損失を見落とさないよう、二つを併記します。

買値1000円、安値970円、高値1060円、決済1030円を初期リスク40円でR換算する図
図1:最終利益0.75Rだけでは分からない、最大逆行0.75Rと最大順行1.5R。架空の価格経路。

同じ注文を分割約定した場合は、加重平均取得価格と数量を保存します。途中で買い増しや一部決済をすると基準が複雑になるため、最初の検証は追加売買なしの取引群で始めるのが扱いやすい方法です。複雑な取引を無理に一つのRへ押し込むより、約定単位の損益と建玉推移を別に記録します。

勝ち取引のMAEだけから、最適な損切りを決めない

架空の8取引を並べてみます。元のルールは初期ストップ1Rですが、Eはギャップ等によって−1.2Rで決済されたとします。手数料等はこの表では除外し、後で追加します。MAEとMFEは実際の保有期間内に観測した値です。

検証の考え方を説明する架空データ
取引 MAE MFE 確定損益
A 0.2R 1.8R +1.4R
B 0.4R 1.4R +1.0R
C 0.8R 2.2R +1.8R
D 1.0R 0.3R −1.0R
E 1.2R 0.2R −1.2R
F 0.6R 1.1R +0.5R
G 1.0R 0.7R −1.0R
H 0.3R 0.9R +0.6R

元の合計損益は+2.1Rです。勝ち取引だけを見ると、5件中3件は0.5R未満の逆行で済んでいます。ここでストップを0.5Rへ狭めれば良さそうに見えますが、勝ちだったCとFも途中で損切りに変わります。負け取引だけが半分になるわけではありません。

仮に0.5Rで必ず約定し、再エントリーせず、その他の決済が変わらないと仮定すると、A・B・Hの利益は合計3.0R、C・D・E・F・Gの損失は合計−2.5Rとなり、全体は+0.5Rです。元の+2.1Rより低下します。これは限定条件下の概算であり、実際にはギャップやスプレッドで0.5Rを超える損失も起こります。

損切りを0.5Rへ狭めると負け3件だけでなく勝ちのCとFも損切りとなり、合計が2.1Rから0.5Rへ下がる比較
図2:損失の縮小と取り逃す利益を同時に数える。約定を単純化した架空の試算。

日足の高値・安値では、到達順序が分からない

ある日の高値が利確ラインを超え、安値が損切りラインを下回ったとします。日足だけでは、先にどちらへ到達したか分かりません。都合よく利確が先だったと処理すると、検証成績が過大になります。より細かい足やティックで確認するか、確認できない取引を別枠にして、楽観・悲観の両方の結果を出します。

エントリーした日の安値が、買う前に付けた価格という場合もあります。その安値をMAEに含めると、実際には経験していない逆行を計上します。記録に必要なのは取引日だけでなく約定時刻です。決済足も同様に、決済後の高値をMFEへ含めないようにします。

板のある商品の場合、買い建玉を決済できる価格は通常、売却可能な気配に関係します。最終約定値だけで評価すると、売買スプレッドが広い銘柄で見かけの順行幅を大きく見積もることがあります。データが約定値か気配値かを統一し、コスト計算との二重計上にも注意します。

MFEは「全部取れる利益」ではない

高値1,060円まで上がった後、1,030円で売ったからといって、30円すべてが改善可能な取りこぼしとは限りません。高値は振り返って初めて分かる極値です。MFEの100%を取ることを目標にすると、実行できない売買を基準に自分を評価することになります。

利益の残し方を検討するなら、「1R到達後にストップをどこへ動かすか」「何本経っても伸びない場合に撤退するか」のように、当時の情報だけで実行できるルールへ翻訳します。その上で、早い撤退が減らした損失と、早い撤退が消した大きな利益を同じ表で比較します。

また、通常のMFEは元の決済時点で観測が終わります。利確を遅らせる案を検証するには、その後のデータが必要です。過去のMFEが小さいという理由だけで「保有を延ばしても無駄」とは判断できません。観測期間を変更した検証では、旧ルールの取引単位と新ルールの取引単位が異なる点も記録します。

記録表は、約定・経路・判断を分ける

最低限、銘柄、売買方向、エントリーと決済の時刻・価格、数量、初期ストップ、手数料、売買ルール名を残します。その後に保有中高値・安値、MAE・MFEのR換算、確定損益Rを追加します。最初から多くの感情項目を設けるより、再計算できる客観データを優先します。

分類は事前に決まるものを使います。例えばエントリー時点のトレンド区分、予定された決算イベントの有無、流動性の範囲などです。「結果的に強かった相場」という後付け分類で勝ち取引を集めても、次の取引の判定には使えません。分類が細かすぎて数件しか残らない場合も、結論を急がないようにします。

8件の表は計算の説明には使えますが、ルールの採用判断には不足します。取引が同じ日の同じ市場変動に依存していれば、件数が多くても独立した検証になりません。銘柄数だけでなく、期間、相場環境、取引日への偏りも確認します。日別集計を併記すると、一日の大勝だけで利益が出ているケースを見つけやすくなります。

ストップを狭めた後に株数を増やすなら、別の検証になる

先ほどの0.5Rストップ案は、株数を変えない比較です。元の1Rが40円、100株なら予定損失額は4,000円でした。ストップを20円へ狭めて100株のままなら予定損失は2,000円になります。ここで予定損失を4,000円に維持するため200株へ増やすと、値幅以外にポジション量も変更したことになります。

数量を2倍にすれば、理想化した計算では利益も損失も2倍になります。しかしギャップで40円逆行すれば、200株の損失は8,000円で、元の100株なら4,000円です。近いストップを置いたことは、寄り付きで飛び越えた場合の損失を抑える保証にはなりません。数量変更まで含めるなら、ギャップ時の約定条件も再計算します。

また、狭めた後の20円を新しい1Rとして表示すると、元の40円を1Rとする表とは尺度が変わります。比較資料では「元のRで評価」「新しい予定損失額で評価」「実際の円損益」のどれかを明記します。Rの名前が同じでも分母が違うと、成績が改善したように見える錯覚が起きます。

時間を追加すると、値幅だけでは分からない停滞が見える

同じMFE1.5Rでも、買って10分で到達した取引と、5日間待って到達した取引では資金の拘束時間が異なります。そこで「初めて+0.5Rへ到達するまでの時間」「最大順行を付けた時刻」などを追加すると、初動の速さを仮説にできます。短期売買なら分、スイングなら営業日など、ルールに合う単位へそろえます。

例えば「2営業日以内に+0.5Rへ届かなければ次の寄り付きで撤退」という案なら、2日経過時点で判定でき、約定は次の取引機会に置けます。「後から見て伸びなかったものを2日目で売る」という曖昧な処理とは違います。寄り付きでの価格飛び、休日、決算発表の時刻も条件へ含めます。

撤退によって余った資金を別の銘柄へ使うかどうかでも口座成績は変わります。一取引の改善と、資金制約を含めた戦略全体の改善を区別してください。同時保有数の上限があるなら、売買順序の変化で次のエントリーが可能になる場合もあり、取引ごとの単純合計だけでは再現できません。

費用を入れる位置を決めて、見かけの優位性を残さない

1株当たり40円を1Rとし、往復費用を1株当たり4円と仮定すれば、1取引の費用は0.1Rです。8取引で0.8Rを控除すると、元の+2.1Rは+1.3R、狭いストップ案の+0.5Rは−0.3Rになります。小さい利益しか残らない案ほど、費用の仮定に敏感です。

この4円は説明用であり、実際は商品、証券会社、時間帯、注文量によって変わります。約定価格にすでにスプレッドが反映されているデータへ同じ費用を追加しないことも重要です。費用をゼロ・通常想定・厳しめ想定で比較し、わずかな違いで成績の符号が変わるなら、十分な余裕のある改善案とは扱わない方が妥当です。

改善案は一度に一つ、検証期間を分けて試す

まず前半の期間で「ストップを狭める」「時間による撤退を追加する」など一つの仮説を作り、変更に使っていない後半の期間で再計算します。後半を見て何度も調整すると、そこも学習に使ったデータになるため、新たな確認期間が必要です。最も高い利益になった細かな数値より、近い設定でも結果が崩れないかを重視します。

評価項目は合計損益だけでなく、平均損益、最大の連続損失、取引回数、コスト控除後の成績、保有時間です。損切りを狭くして売買が増える案では、1回当たりの損失が減っても手数料やスリッページが増える場合があります。最後は小さな規模で実際の約定との差を確かめます。

MAEとMFEは、勝てるラインを自動で教える指標ではありません。「何を変えれば、どの勝ちと負けが入れ替わるのか」を数字で議論するための道具です。後悔の強い一取引を追いかけず、同じ基準で記録した取引群から、実行可能な改善案を一つずつ検証する使い方に価値があります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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