IPO3日目の押し目を狙う戦略とは何か
IPO銘柄は、通常の上場銘柄とは値動きの構造がまったく違います。決算、月次、業績予想、長期チャート、過去の支持線や抵抗線といった一般的な判断材料が少ない一方で、上場直後だけは需給の偏りが極端に出やすくなります。その中でも「IPO3日目の押し目」は、初値形成直後の過熱感が一度冷え、短期資金の入れ替わりが起きやすいタイミングです。うまく使えば、単なる初値買いよりもリスクを絞りやすく、かつ短期値幅を狙いやすい局面になります。
ここでいうIPO3日目とは、上場日を1日目として数えた3営業日目を指します。上場初日に初値が付かなかった銘柄では、初値形成日を実質的な1日目として扱った方が実践的です。たとえば上場初日は買い気配のまま値付かず、2日目に初値が付いた場合、その2日目を需給分析上の1日目と見なし、そこから3営業日目の押し目を観察します。機械的な日数よりも、「初値が形成され、短期資金が実際に売買できるようになってから何日目か」を見ることが重要です。
この戦略の本質は、IPO銘柄を企業価値だけで買うことではありません。もちろん事業内容や成長性は重要ですが、上場直後の値動きはファンダメンタルズよりも需給、注目度、浮動株、公開規模、初値倍率、出来高の減衰、板の厚み、短期資金の回転で決まる比率が高くなります。したがって、IPO3日目の押し目狙いでは「良い会社かどうか」だけでなく、「売りたい人がどの程度売り終わったか」「買いたい短期資金がまだ残っているか」「下値を買う主体がいるか」を読み解く必要があります。
なぜIPOは3日目前後に押し目が発生しやすいのか
IPO直後の値動きには、一定の行動パターンがあります。1日目は初値形成と初期の値幅取りが中心です。公募・売出で取得した投資家、初値買いの短期トレーダー、セカンダリー狙いの個人投資家、アルゴリズム売買、テーマ性に反応する資金が一気に集まります。2日目は、初日の勝者と敗者が入れ替わります。初日に大きく上昇した銘柄では利益確定が出やすく、初日に弱かった銘柄では見切り売りが出やすくなります。そして3日目になると、初日の熱狂に乗った短期資金の一部が抜け、出来高が急減するか、逆に下げ止まりを確認した資金が再流入するかの分岐点になります。
3日目が重要なのは、初日や2日目よりも「本当の買い需要」が見えやすくなるからです。上場初日は話題性だけで買われることが多く、板も値幅も荒れます。2日目も初日の影響が強く、売買判断がノイズに振れやすい。しかし3日目になると、短期資金の一巡、初値買い勢の損益確定、公開株主の売り、テーマ性への評価が少し落ち着きます。この段階で大きく崩れず、一定の価格帯で下値を拾われる銘柄は、短期リバウンドや再上昇の候補になりやすいのです。
ただし、IPO3日目なら何でも買えばよいわけではありません。むしろ、3日目は危険な銘柄も多くなります。初値が高すぎた銘柄、公開価格から大幅に上昇しすぎた銘柄、事業内容が市場テーマと噛み合っていない銘柄、売上規模に対して時価総額が過大な銘柄は、3日目以降に買い手不在となって急落することがあります。押し目に見えても、実際には需給崩壊の序盤であるケースもあります。ここを見極めるために、価格だけでなく出来高と値動きの質を見る必要があります。
最初に確認すべきIPO銘柄の基本条件
IPO3日目の押し目を狙う前に、まず銘柄の基本条件を確認します。第一に公開規模です。公開規模が小さい銘柄は需給が軽く、短期的に大きく動きやすい反面、板が薄く、損切りが遅れると想定以上に滑ることがあります。公開規模が大きい銘柄は値動きが安定しやすい一方、初動の爆発力は弱くなりがちです。短期売買で値幅を狙うなら、公開規模が大きすぎず、かつ売買代金が十分にある銘柄が扱いやすくなります。
第二に吸収金額と時価総額のバランスです。吸収金額が小さいのに上場後の時価総額が急膨張している銘柄は、短期的には強く見えますが、需給の反転も激しくなります。特に公開価格から初値が2倍、3倍と大きく上昇した銘柄では、上場後3日目の押し目が単なる調整ではなく、過熱修正の始まりになることがあります。一方、初値倍率が極端に高くなく、かつ出来高を伴って上値を試している銘柄は、3日目の押し目が買い場になる可能性があります。
第三にロックアップ条件です。大株主のロックアップ解除価格、解除倍率、ベンチャーキャピタルの保有比率は必ず確認します。たとえば公開価格の1.5倍でロックアップ解除となる条件があり、初値や上場後の株価がその水準を大きく超えている場合、潜在的な売り圧力が意識されます。3日目の押し目を買うとしても、ロックアップ解除水準の上で重くなっている銘柄は慎重に見るべきです。逆に、ロックアップ条件が堅く、売り出し圧力が限定的な銘柄は、需給面で優位になりやすいです。
第四に事業テーマの鮮度です。AI、半導体、宇宙、サイバーセキュリティ、DX、データセンター、省人化、医療テックなど、市場が注目しているテーマと結びつくIPOは短期資金が入りやすくなります。ただし、テーマ性が強いほど過熱もしやすいため、押し目で買う場合は「テーマが強いから買う」のではなく、「テーマが強いにもかかわらず売りが一巡し、下値で買いが入っているから買う」という順序で考える必要があります。
IPO3日目に見るべきチャートの形
理想形は初値高値をすぐに奪回しない押し目
IPO3日目の押し目で最も扱いやすいのは、初値形成後に一度上昇し、その後に短期の利益確定で下げるものの、初値付近または上場後VWAP付近で下げ止まる形です。初値を大きく割り込まず、出来高を減らしながら調整している場合、売り圧力が弱まっている可能性があります。逆に、初値を明確に割り込み、戻りも弱く、陰線が連続している場合は、初値買い勢の含み損が重しになり、戻り売りが出やすくなります。
ここで重要なのは、押し目が浅すぎても深すぎても扱いにくいという点です。浅すぎる押し目は買い場が来ないまま上昇することがありますが、無理に追いかけると高値掴みになりやすい。深すぎる押し目は一見割安に見えますが、需給が崩れている可能性があります。実践上は、初値からの下落率、上場後高値からの下落率、当日のVWAPとの位置関係を組み合わせて判断します。
出来高が急減している押し目は候補になる
3日目の押し目で注目したいのは、価格が下げているのに出来高が急増していないパターンです。大きな売りが出ている下落ではなく、買い手が一時的に様子見をしているために下げている場合、少しの買い戻しで反発しやすくなります。たとえば初日出来高が非常に大きく、2日目にやや減少し、3日目の前場でさらに出来高が細りながら小幅安で推移している銘柄は、後場に買いが戻ると短期反発が起きることがあります。
反対に、3日目に出来高を伴って大陰線を引く銘柄は危険です。これは単なる押し目ではなく、初値買い勢や短期資金が一斉に撤退している可能性があります。特に安値引けに近い形で終わった場合、翌営業日も売りが続きやすくなります。IPOでは下値支持線が未成熟なため、一度売りが優勢になると、一般的な大型株よりも下落スピードが速くなります。
長い下ヒゲとVWAP回復は短期反発のサイン
3日目のザラ場で一度売り込まれた後、長い下ヒゲを形成し、終値または後場の値動きでVWAPを回復する形は、短期反発狙いの候補になります。VWAPはその日の平均売買価格に近い指標であり、短期資金にとって損益分岐点として意識されやすいラインです。下に振らされた後にVWAPを回復するということは、安値圏で売らされた投資家がいる一方で、買い戻しや新規買いが優勢になってきたことを示します。
ただし、下ヒゲだけで判断するのは不十分です。下ヒゲが出ても、終値が安値圏に沈んでいる場合は反発力が弱いと考えます。理想は、前場に売られて下ヒゲを作り、後場にかけてVWAPを回復し、終値が当日レンジの上半分で終わる形です。この場合、翌営業日の寄り付きから短期資金が再流入しやすくなります。
エントリー条件を具体化する
IPO3日目の押し目狙いでは、曖昧な感覚で買うと失敗します。実践では、エントリー条件を事前に数値化しておくべきです。たとえば、初値形成日を1日目として、3日目に上場後VWAPまたは初値から大きく乖離しすぎていないこと、上場後高値からの調整幅が一定範囲内に収まっていること、出来高が初日より減少していること、かつ下値で反発の形が見えることを条件にします。
具体例として、初値1,500円、上場後高値1,950円、3日目の前場安値1,620円、VWAP1,700円の銘柄を考えます。この銘柄が前場に1,620円まで押した後、後場に1,700円を回復し、出来高を伴って1,740円付近で推移しているなら、短期反発狙いの候補になります。買いの第一候補はVWAP回復後の押し、第二候補は前場高値の突破、第三候補は終値で強さを確認した翌日の押し目です。
一方、初値1,500円、上場後高値2,400円、3日目安値1,550円という銘柄は、下落率が大きく、ボラティリティが極端です。初値近辺で止まっているように見えても、高値買い勢の戻り売りが大量に残っている可能性があります。この場合は、すぐに買うのではなく、1,700円台まで戻した後に再度押して下値を切り上げるかを見る方が安全です。IPOは一度大きく崩れると、反発しても上値が重くなりやすいため、初回の下げだけを見て飛びつくのは危険です。
買ってよい押し目と買ってはいけない押し目
買ってよい押し目
買ってよい押し目にはいくつか共通点があります。第一に、下落しているにもかかわらず出来高が過度に膨らんでいないことです。これは売りが殺到しているのではなく、短期的な買い手不在で下げている可能性を示します。第二に、初値または上場後VWAPを大きく割り込んでいないことです。初値を守れている銘柄は、初値買い勢の心理が壊れていないため、反発時に買いが入りやすくなります。
第三に、安値を切り下げ続けていないことです。3日目の前場に一度安値を付けた後、後場にかけて安値を切り上げる動きが見られる場合、売り圧力が弱まっている可能性があります。第四に、同じ日に上場した他のIPOや直近IPO群と比較して相対的に強いことです。IPO市場全体が弱い日に単独で強い銘柄は、個別に資金が入っている可能性があります。
買ってはいけない押し目
買ってはいけない押し目は、見た目だけ安くなったように見える局面です。たとえば、初値を大きく下回り、戻りも弱く、出来高が増えながら下落している銘柄は危険です。これは売りたい投資家がまだ多く、買い手が受け止めきれていない状態です。また、前日安値を簡単に割り込み、すぐに戻せない銘柄も避けるべきです。IPOでは前日安値が短期トレーダーの損切りラインになりやすく、割り込むと機械的な売りが出やすくなります。
さらに、材料性だけで買われた銘柄が3日目に急失速している場合も注意が必要です。たとえば「AI関連」として注目されたものの、実際の売上規模が小さく、収益性も低く、初値だけが過剰に上がった銘柄は、短期資金が抜けた後に急落することがあります。テーマ性は買い材料になりますが、過熱しすぎたテーマ性は売り材料にもなります。押し目買いでは、期待の強さだけでなく、期待が剥がれたときの下落余地を考える必要があります。
時間帯別の実践判断
IPO3日目の押し目を狙う場合、時間帯ごとの判断が重要です。寄り付き直後は値動きが荒く、前日からの成行注文や短期資金の仕掛けが集中します。ここで急落したからといってすぐに買うと、さらに下に振らされることがあります。寄り付きから最初の15分から30分は、原則として観察時間と考えた方がよいです。特にIPO銘柄は板が薄いため、寄り付き直後の値動きだけで方向性を判断するのは危険です。
前場中盤では、寄り付き後の安値を守れるかを確認します。寄り付き直後に売られた後、安値を切り上げながらVWAPへ接近する動きがあれば、反発候補になります。逆に、寄り付き後に一度戻してもVWAPに届かず再び安値を割る場合、買いは見送ります。短期売買では「安いから買う」のではなく、「売りが止まり、買いが優勢になり始めたから買う」という順序が重要です。
後場は、短期資金が再び入りやすい時間帯です。前場で売りをこなし、後場にVWAPを回復し、引けにかけて強さを維持する銘柄は、翌日への期待が残ります。特に終値が当日レンジの上半分で終わる場合、翌営業日のギャップアップや続伸を狙う短期資金が入りやすくなります。ただし、引け直前だけ急騰して出来高が不自然に膨らむ場合は、翌日寄り天になることもあるため、引け成りで飛びつくのは避けた方が無難です。
損切りラインと利確ラインの決め方
IPO3日目の押し目狙いで最も重要なのは、損切りを明確にすることです。IPO銘柄は値幅が大きく、判断が遅れると数分で損失が広がることがあります。損切りラインは、エントリー根拠が崩れる位置に置きます。たとえばVWAP回復を根拠に買ったなら、VWAPを明確に割り込み、再回復できない場合は撤退候補です。前場安値反発を根拠に買ったなら、前場安値を割った時点で撤退を検討します。
損切り幅は、銘柄のボラティリティに応じて調整します。大型株のように1%や2%で細かく損切りすると、IPOではノイズで刈られやすくなります。一方で、10%以上の損切りを許容すると、短期売買としてのリスクリワードが崩れます。実践上は、エントリー位置から3%から6%程度の範囲で、チャート上の節目と組み合わせて設定するケースが多くなります。ただし、板が薄い銘柄では逆指値が滑る可能性もあるため、ポジションサイズを小さくすることが前提です。
利確ラインは、上場後高値、前日高値、当日高値、心理的節目を基準にします。たとえば1,700円で買い、上場後高値が1,950円なら、1,900円台では一部利確を検討します。IPOは上値を抜けると一気に走ることがありますが、反対に高値手前で失速すると急落することもあります。すべてを天井まで引っ張るのではなく、半分を節目で利確し、残りをトレールする方法が現実的です。
ポジションサイズは通常株より小さくする
IPO3日目の押し目狙いでは、ポジションサイズを通常の短期売買より小さくするべきです。理由は、値動きの荒さ、板の薄さ、情報の少なさ、下値支持線の未成熟さです。普段100万円分のポジションを取る投資家でも、IPOでは30万円から50万円程度に抑えるなど、最初からリスクを制限する考え方が必要です。勝てる可能性がある局面でも、1回の失敗で大きな損失を出してしまうと戦略として継続できません。
また、分割エントリーも有効です。最初の反発確認で予定数量の半分だけ買い、VWAP維持や高値突破を確認して残りを追加する方法です。これにより、最初の判断が外れた場合の損失を抑えつつ、強い動きが出た場合にはポジションを増やせます。IPOでは一瞬の判断で全量を入れるより、複数の確認ポイントを使って段階的に入る方が安定しやすくなります。
ナンピンは原則として避けるべきです。押し目狙いとナンピンは似ているようで別物です。押し目狙いは、反発の兆候を確認してから買う行為です。ナンピンは、下がったから平均単価を下げる行為です。IPO銘柄で需給が崩れた場合、下落がどこで止まるか分かりません。反発確認のないナンピンは、短期売買ではなく希望的観測になりやすいです。
スクリーニングの具体的な手順
IPO3日目の押し目を狙うには、事前準備が不可欠です。まず、直近IPO銘柄の一覧を作り、上場日、公開価格、初値、初値騰落率、公開規模、吸収金額、時価総額、主幹事、ロックアップ条件、事業テーマを整理します。これにより、単に値動きだけを見るのではなく、需給の軽さと過熱度を比較できます。
次に、初値形成後の1日目と2日目の高値、安値、終値、出来高、売買代金を記録します。3日目に見るべきポイントは、前日比の値動きだけではありません。初日出来高に対して3日目の出来高がどの程度残っているか、前日安値を守っているか、初値を上回っているか、VWAPを回復できているかを確認します。これらを表にしておくと、感覚ではなく条件で判断できます。
実践的なスクリーニング条件の例は次の通りです。初値形成から3営業日以内、売買代金が一定以上、初値を終値で大きく割り込んでいない、前日安値を明確に割っていない、3日目の下落時出来高が初日より大きく減少している、後場にVWAPを回復している、事業テーマに市場の関心がある。この条件をすべて満たす必要はありませんが、複数がそろうほど勝負しやすくなります。
具体例で見る売買シナリオ
仮に、あるIPO銘柄の公開価格が1,000円、初値が1,600円、初日高値が1,850円、初日終値が1,720円だったとします。2日目は高値1,780円、安値1,610円、終値1,660円で、出来高は初日の60%まで減少しました。3日目の寄り付きは1,640円、前場に1,590円まで下げたものの、初値1,600円近辺で下げ止まり、後場に1,680円まで戻してVWAPを回復しました。
この場合、買いを検討できるポイントは、後場のVWAP回復後に1,660円から1,680円付近で押した場面です。損切りは前場安値1,590円割れ、または初値1,600円を明確に下回って戻せない場合に設定します。利確候補は2日目高値1,780円、初日高値1,850円です。仮に1,670円で買い、1,590円割れで損切りならリスクは約80円、1,830円で半分利確できればリターンは約160円となり、リスクリワードは悪くありません。
一方、別のIPO銘柄が公開価格1,000円、初値2,800円、初日高値3,200円、2日目終値2,300円、3日目に2,000円を割り込んだとします。この場合、初値倍率が高すぎ、上場後高値からの下落も大きく、初値買い勢の含み損が重くなっています。たとえ3日目に一時的な下ヒゲが出ても、戻り売り圧力が強い可能性があります。このような銘柄は、最初の押し目で買うより、数日後に下値固めが確認されるまで待つ方が合理的です。
IPO市場全体の地合いを読む
IPO3日目の押し目戦略は、個別銘柄だけでなくIPO市場全体の地合いに大きく左右されます。直近IPOが連続して初値割れしている時期、上場後に陰線が続く銘柄が多い時期、グロース市場全体が弱い時期は、3日目の押し目がそのまま下落継続になりやすくなります。逆に、直近IPOに資金が集まり、複数銘柄が上場後に高値を更新している時期は、押し目買いが機能しやすくなります。
地合いを見るには、直近1ヶ月のIPO銘柄をリストアップし、初値に対する現在値、上場後高値更新の有無、出来高の推移を確認します。多くの銘柄が初値を上回って推移しているなら、IPO市場にリスクマネーが入っています。反対に、多くの銘柄が初値を割り込み、出来高も急減しているなら、新規IPOへの買い意欲は弱いと判断します。この状態で3日目の押し目を買う場合、成功確率は下がります。
また、同日に複数のIPOがある場合は資金分散にも注意します。個人投資家の短期資金は限られているため、注目度の高いIPOが複数あると、資金が一部の銘柄に集中し、他の銘柄は売買代金が細ることがあります。3日目の押し目を狙うなら、同時期のIPOの中で最も資金が残っている銘柄を選ぶべきです。単に下がっている銘柄ではなく、下がっても売買代金が残っている銘柄を選ぶことが重要です。
ファンダメンタルズをどこまで見るべきか
短期売買とはいえ、IPO銘柄のファンダメンタルズを無視してよいわけではありません。特に、赤字上場、売上成長の鈍化、利益率の低さ、顧客集中、競争優位性の弱さ、上場時点でのバリュエーションの高さは確認すべきです。3日目の押し目では、短期需給が主役ですが、ファンダメンタルズが弱い銘柄は買いが続きにくく、反発しても短命になりやすいです。
見るべきポイントは複雑ではありません。売上が伸びているか、営業利益が黒字か、赤字の場合は赤字縮小傾向があるか、上場時の想定時価総額が売上や利益に対して過大でないか、事業テーマに継続性があるかを確認します。PERやPSRなどの指標も参考になりますが、上場直後は市場評価が安定していないため、絶対値だけで判断するより、同業他社との比較が有効です。
ただし、ファンダメンタルズが良いからといって、3日目に無条件で買ってよいわけではありません。良い会社でも初値が高すぎれば短期的には下がります。逆に、事業内容が平凡でも需給が軽く、短期資金が集中すれば上がることがあります。IPO3日目戦略では、ファンダメンタルズは「買ってはいけない銘柄を除外するフィルター」として使い、最終的な売買判断は需給とチャートで行うのが現実的です。
失敗しやすいパターン
最も多い失敗は、初値から大きく下がっただけで割安だと判断することです。IPOの初値は需給で大きく歪むため、初値から20%下がったから安いとは限りません。初値自体が過大評価だった場合、20%下がってもまだ高いことがあります。上場直後の銘柄には長期チャートがないため、過去の支持線を根拠にできません。だからこそ、出来高、VWAP、初値、前日安値など、限られた需給ポイントを丁寧に見る必要があります。
次に多い失敗は、損切りできずに中長期保有へ逃げることです。短期の押し目狙いで買ったにもかかわらず、下がった後に「成長企業だから長期で持てばよい」と理由を変えてしまうケースです。これは戦略のすり替えです。中長期投資として買うなら、決算、成長率、競争優位性、バリュエーションを別途検証すべきです。短期売買の根拠が崩れたなら、いったん撤退するのが原則です。
もう一つの失敗は、板の薄さを軽視することです。IPO銘柄は表示されている板が薄く、成行注文や大口注文で価格が一気に動くことがあります。特に小型IPOでは、見えている買い板が消えることも珍しくありません。損切り注文を入れていても、想定価格より大きく下で約定する可能性があります。だからこそ、ポジションサイズを小さくし、流動性の低い銘柄では無理に参加しない判断が必要です。
実践用チェックリスト
IPO3日目の押し目を狙う前に、以下の項目を確認すると判断のブレを減らせます。まず、初値倍率が高すぎないか。次に、初値を大きく割り込んでいないか。上場後高値からの下落が大きすぎないか。出来高が初日から自然に減少しているか。売買代金は十分に残っているか。前日安値を守っているか。3日目のザラ場でVWAPを回復しているか。下ヒゲや陽線など反発の形があるか。ロックアップ解除水準が近くにないか。直近IPO市場の地合いが悪すぎないか。
このチェックリストのうち、特に重視すべきは「初値」「出来高」「VWAP」「前日安値」です。初値は上場直後の基準価格、出来高は需給の熱量、VWAPは当日の損益分岐点、前日安値は短期勢の防衛ラインです。この4つを同時に見るだけでも、単純な値ごろ感による失敗を大きく減らせます。
チェック項目が多いと感じる場合は、最低限のルールとして「初値を大きく割った銘柄は買わない」「出来高急増の大陰線は買わない」「VWAPを回復できない銘柄は買わない」「損切り位置を決めずに買わない」の4つだけでも守るべきです。IPOは利益機会も大きいですが、ルールなしで入ると損失も大きくなります。
翌日持ち越しの判断
IPO3日目の押し目で買ったポジションを翌日に持ち越すかどうかは、終値の位置で判断します。終値が当日高値圏で、VWAPを上回り、出来高も適度に残っている場合は、翌日への期待が残ります。特に、上場後高値や前日高値に近い位置で引けた場合、翌日の高値更新を狙う資金が入りやすくなります。
一方、後場に反発したものの、引けにかけて売られ、終値がVWAPを下回った場合は、持ち越しの優位性が低下します。含み益があっても、翌日寄り付きで売られる可能性があります。短期売買では、含み益を伸ばすことも大切ですが、弱い形で持ち越さないことも同じくらい重要です。特にIPO銘柄は翌日のギャップダウンが大きくなることがあるため、終値の弱さは軽視できません。
持ち越す場合でも、全量ではなく一部にする方法が現実的です。たとえば当日中に半分を利確し、残りを翌日高値更新狙いで持つ。これにより、翌日急落した場合でも利益を残しやすくなります。IPOの短期売買では、勝ったときに欲張りすぎず、負けたときに小さく切ることが長期的な成績に直結します。
この戦略に向いている投資家・向いていない投資家
IPO3日目の押し目狙いに向いているのは、ザラ場を確認でき、事前にルールを決め、損切りを機械的に実行できる投資家です。値動きが速いため、日中に株価を見られない人には難易度が高くなります。また、短期売買の記録を残し、勝ちパターンと負けパターンを検証できる人ほど、この戦略を改善しやすくなります。
向いていないのは、損切りが苦手な投資家、値ごろ感で買ってしまう投資家、急落時に冷静に判断できない投資家です。IPO銘柄は短時間で大きく動くため、感情的な売買をすると損失が膨らみやすくなります。また、中長期投資のつもりでIPOを買いたい人は、3日目の押し目という短期需給戦略ではなく、決算発表後に業績の進捗を確認してから投資する方が適しています。
まとめ
IPO3日目の押し目を狙う戦略は、上場直後の熱狂が一巡し、短期資金の本当の需給が見え始めるタイミングを利用する方法です。初日や2日目の勢いだけで飛びつくより、3日目に売りが一巡した銘柄を選ぶことで、リスクを絞った短期売買が可能になります。ただし、IPOは値動きが荒く、押し目に見えても需給崩壊の始まりであることがあります。
実践では、初値、上場後VWAP、出来高、前日安値、ロックアップ条件、直近IPO市場の地合いを総合的に確認します。買ってよいのは、売りが一巡し、出来高が落ち着き、VWAPを回復し、初値や前日安値を守っている銘柄です。買ってはいけないのは、出来高を伴って大きく崩れ、初値を割り込み、戻りの弱い銘柄です。
この戦略で重要なのは、銘柄選び以上に売買ルールです。エントリー前に損切り位置を決める。ポジションサイズを小さくする。分割エントリーを使う。利確候補を事前に設定する。弱い形では持ち越さない。これらを徹底することで、IPO特有の大きな値幅を狙いながら、致命的な損失を避けやすくなります。IPO3日目の押し目は、単なる値ごろ感ではなく、需給の変化を読んで参加する短期戦略として扱うべきです。


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