「窓埋め(ギャップフィル)」は、テクニカル分析の中でも短期で再現性を作りやすいテーマです。ただし、窓は“埋まることもあれば埋まらないこともある”ため、単に「窓が開いたら逆張り」では期待値が安定しません。
本記事では、窓を発生理由(ニュース/需給/時間帯)で分類し、埋まりやすい窓・埋まりにくい窓を見分けるためのチェックポイント、そして株・FX・暗号資産で使える具体的なエントリー設計(損切り・利確・サイズ調整まで)を体系化します。
窓(ギャップ)とは何か:価格の「非連続」が意味するもの
窓とは、チャート上で前日終値(あるいは直近足の終値)と、次の始値が離れて形成される価格の空白領域です。株は取引時間が区切られるため窓が出やすく、FXや暗号資産でも週明け・指標・流動性低下のタイミングで“擬似的な窓”が出ます。
重要なのは、窓は「市場参加者のポジションが、その価格帯にほとんど存在しない」ことを示す点です。つまり窓は需給の薄い領域であり、そこへ価格が戻るときは戻りが速いことが多い。一方で、窓が“戻らない”ときは、その窓が新しいバリュエーション(評価水準)の合意形成として機能している可能性があります。
窓を4つに分類する:埋まりやすさは「理由」で決まる
1)ニュース窓:決算・不祥事・規制などの「情報ショック」
材料(情報)が市場の見積りを上書きするタイプの窓です。たとえば決算の大幅ビート&ガイダンス上方修正で上に窓、粉飾疑惑や行政処分で下に窓、のようにファンダメンタルの前提が変わる局面では窓は埋まりにくくなります。
このタイプは「窓埋め」よりも、窓を起点にしたトレンド継続(ギャップ&ゴー)に分があります。窓埋め狙いをするなら、材料が“誤解”や“短期の過剰反応”である確度が必要です。
2)需給窓:指数リバランス・ロスカット・需給イベント
指数入れ替え、信用整理、先物のロール、オプション満期など、情報ではなくフロー(注文)が価格を動かすタイプです。需給窓は、イベントが一巡すると反転しやすく、結果として窓が埋まりやすい傾向があります。
ただし「誰が投げているか」が重要で、投げの主体が追証・ロスカットのような強制フローの場合、いったん底を打つとリバウンドが鋭く、窓埋めが速い一方、下落途中で逆張りすると簡単に刈られます。
3)時間帯窓:流動性の薄さが作る“飛び”
プレマーケット/アフター、休日明け、アジア早朝など、板が薄い時間帯に発生する窓です。FXや暗号資産では週末→週明けが典型で、ストップ狩りで飛んだあとに戻りやすいことがあります。
このタイプは「埋まるかどうか」よりも、スプレッド・約定品質が勝敗を決めます。想定より不利約定になると、理論上の優位性が消えます。
4)トレンド窓:上昇(下落)の勢いが作る“置いていく窓”
強いトレンド中に、押し目を待っていた参加者が置いていかれ、寄り付きから一気に走るタイプです。上昇トレンドなら上窓、下落トレンドなら下窓。これは埋まりにくい代表格で、窓埋め狙いは不利になりがちです。
窓埋めが起きるメカニズム:なぜ「戻る」ことがあるのか
窓埋めの根本は、未約定の需要・供給が窓の中に残っていることです。具体的には次の3つがよく起点になります。
- 利確の連鎖:窓で一気に含み益が出た短期勢が利益確定し、戻りを作る
- 見直し買い/買い戻し:過剰反応と判断した勢力が、窓の起点(前日終値付近)を目安に仕掛ける
- ストップ狩り後の反転:薄い時間帯で飛んだ後、流動性が戻ると逆流が起きる
一方、窓が埋まらないときは、窓が新しい均衡点になっていることが多い。材料の本質が強い(ニュース窓)か、上位足のトレンドが強い(トレンド窓)ときです。
「埋まりやすい窓」を見分けるチェックリスト
チェック1:窓の大きさが「通常変動」を超えているか
窓が小さいとノイズで利幅が出ません。逆に大きすぎる窓は材料が強い可能性があります。目安は、株なら直近20日ATRに対して窓幅が0.6~1.5ATR程度。FX・暗号資産は直近の平均レンジに対して相対評価します。
チェック2:出来高(株)/ティック量(FX)/出来高と建玉(暗号資産)が“異常”か
窓直後の出来高が平均の2倍、3倍なら、短期の投げ(または飛び乗り)が混在しています。この場合、窓の中に戻りを作りやすい一方、初動は荒れます。最初の反発(反落)を待つのが重要です。
チェック3:背景が「一過性の需給」か
指数の一時的フロー、追証の投げ、週末の薄商いでの飛びなど、背景が“時間が経てば消える”なら窓埋め狙いの候補です。逆に恒常的に評価を変えるニュースは埋まりにくい。
チェック4:上位足トレンドに逆らい過ぎていないか
窓埋めは逆張りの側面があるため、上位足トレンドが強いと負けやすい。上昇トレンド中の下窓は“押し目”になりやすく、下窓埋め(戻り売り)は不利になりがちです。
窓埋めの基本セットアップ:3つの型
型A:過剰反応の「戻り」狙い
「材料はあるが、市場が誇張して動いた」ケース。典型は、好決算なのにガイダンスが弱くて売られ過ぎた、あるいは悪材料だが致命傷ではないのに投げが連鎖した、などです。
寄りで逆張りせず、窓方向に一度走ったあと反対方向への初回の戻りを拾います。戻りの合図として、株なら5分足の安値切り上げ/高値切り下げ、FXならロンドン勢参入後の反転、暗号資産なら建玉減少(清算一巡)を使います。
型B:強制フロー一巡の「リバウンド」狙い
追証・ロスカット・ETFの機械的売買など。ここは“底打ちを当てる”のではなく、下げの加速が止まった後に入るのが原則です。出来高ピーク、急落後の下ヒゲ、安値更新停止などを条件化します。
型C:時間帯の薄さで飛んだ「回帰」狙い
週末→週明け、アジア早朝、プレマーケットなど。入るなら、スプレッドが通常水準に戻ったことを必ず確認します。スプレッドが広いなら見送りが正解です。
具体例:株式の窓埋め(寄り付きギャップ)
例1:好決算で上窓→伸びずに押し戻し(上窓埋め)
決算で上窓寄り付き後、5分足で高値更新が止まり、寄りで出来高がピーク。これは「買いが寄りで一巡し、利確が優勢」になっている可能性があります。
エントリー:寄り直後は見送り、最初の戻り高値を作った後、5分足の直近安値割れでショート(または個別ロング縮小+指数ヘッジ)。損切りは戻り高値上。利確は窓のミッド→前日終値手前の二段階。フルフィルに固執しないのがコツです。
例2:悪材料で下窓→投げ一巡→窓の半分まで回帰(下窓埋め)
下窓で寄り、急落後に下ヒゲを付け出来高がピーク。ここで即買いは危険です。5分足で安値切り上げを2回確認し、VWAP上抜けや戻り高値更新など“買いの継続”が出たらロングを検討します。
損切りは直近安値割れ。利確は窓のミッド、次に前日終値手前。材料が重いとフルフィルしにくいので、ミッドで部分利確が現実的です。
具体例:FXの擬似ギャップ(週明け・指標)
例3:週明けギャップは「埋まる」より「埋めに来る参加者」を読む
週末ニュースで飛んだレートは、東京時間の流動性が限定的です。ロンドン以降に本格評価が始まるため、週明け直後の逆張りは危険。狙うなら、飛びが止まり、スプレッドが正常化し、短期MAがフラット化するなど“落ち着き”が出てから回帰を取ります。
具体例:暗号資産の“窓”は清算フローとセット
例4:清算で急落→建玉減少→反発で回帰が速い
急落でOI(建玉)が急減し清算が一巡した形跡があると、売り圧力が急に弱まります。反発が出るとショートの利確買い戻しも重なり戻りが速い。利確目標は「急落前の起点」ではなく、清算が集中した価格帯の上限(ミッド相当)に置くと現実的です。
損切りとサイズ:窓の中に損切りを置かない
窓の中は需給が薄く、ちょっとした振れで刈られます。基本は窓の先端(極値)、または少し外側を無効化ラインにします。損切り幅が広い局面は枚数を落とし、1回のトレードあたりのリスク(例:資金の0.5%)を一定にします。
利確の現実解:フルフィル信仰を捨てる
窓はミッドで反転することが多い。利確は二段階が有効です。
- 第一利確:窓のミッド(50%戻し)で一部利確
- 第二利確:前日終値付近(フルフィル)または重要レジスタンス/サポート
負けパターン:これをやると窓埋めは破綻する
- 寄りで逆張りしてトレンド窓に轢かれる
- 材料が重い窓に固執してナンピンする
- スプレッド・滑りで期待値が消えているのに取引を続ける
検証のやり方:初心者がハマる罠を避ける
- 終値だけで判定せず、寄り~ザラ場の執行前提で検証する
- 低流動性銘柄は滑りが大きいので除外する
- 窓幅(ATR比)/出来高倍率/上位足トレンド/材料種類でタグ付けして優位性を抽出する
勝率よりも、平均利益/平均損失、最大逆行(MAE)を見て、想定損切りで生き残れるかを確認してください。
まとめ:窓埋めは「背景」と「無効化ライン」で勝つ
窓埋めを安定させる鍵は、窓を発生理由で分類し、需給窓・時間帯窓のような“背景が一過性”のケースに絞ることです。寄りで飛びつかず、初動の荒れが止まった合図を待ち、損切りは極値外に置き、利確はミッドを軸に現実的に積み上げる。これで窓埋めは、運任せの逆張りから条件付きの期待値トレードに変わります。


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