指値を少し安く置くと、約定した取引の平均買値はよく見えます。しかし、その指値まで戻らずに上昇した候補が記録から消えていたら、注文方法全体の評価はできません。買えたものだけを数えることと、売買の仕組みを検証することは違います。
一方、買えなかった上昇をすべて取り逃した利益として損益から引くのも誤りです。実際には取っていないポジションだからです。この記事では実損益を変えずに、未約定が成績へ与える偏りを調べる方法を説明します。
候補、発注、約定を三段階へ分ける
最初に、入口条件へ合った候補を何件見たかを数えます。次に実際に注文した件数、最後に一部でも成立した件数を数えます。画面を眺めていた銘柄全てを候補へ含めず、採用条件を先に定義します。
たとえば条件成立が10件、発注が8件、約定が4件なら、発注に対する約定率は50%です。条件成立に対する参加率は40%になります。同じ四件でも、分母によって答えている問いが異なります。
残り二件を発注しなかった理由も分けます。余力不足、同時保有制限、見送り条件などです。注文しなかったものを未約定と呼ぶと、指値の成立しやすさと自分の選別が混ざってしまいます。
全件へ同じ指値を試した例
比較を簡単にするため、条件が成立した10件すべてへ同じ方法で指値を出したとします。期限までに4件が全量成立し、6件は成立しませんでした。成立した4件の費用控除後損益を、プラス2,000円、プラス1,000円、マイナス1,000円、マイナス2,000円とします。
合計はゼロ、約定取引一件当たりもゼロです。条件成立一件当たりの実現損益も、ゼロを10で割るためゼロです。分母を増やせば必ず悪くなるという説明ではなく、何を数えているかの違いです。
未約定6件は、実際の口座損益ではゼロです。そのうち値上がりした例を後から見つけても、架空の利益を実績へ足しません。ただし注文が成立した群としなかった群で、その後の経路に違いがあるかは調べられます。

安い指値が下落を選びやすい場合
買い指値を現在値より下へ置くと、その価格まで下がった候補で成立します。強く上がって戻らなかった候補は成立しません。この構造から、買えた群に弱い経路が偏る可能性があります。
これは、下へ置く指値が必ず不利という結論ではありません。押し目を待つ方法では、下落後の反発を意図している場合があります。重要なのは、安く買えたという入口の改善と、その対象がどう選ばれたかを分けることです。
「上がった銘柄にも同じ安値で買えたはず」と考えると、この選別が消えてしまいます。指値へ来なかったものは成立しないという条件を保ち、候補を後から入れ替えずに比較します。
別の注文方法との比較例
同じ10件を対象に、もう一つの入口方法を仮に検証します。こちらは8件成立し、費用後の合計が3,200円だったとします。成立一件当たりは400円、候補一件当たりは320円です。
元の方法は4件成立、合計ゼロなので、どちらの平均もゼロです。この例では後者の合計が大きいですが、実際に八件を同じ余力で管理できたか、同時保有を許すかという条件も必要です。
二つの方法を同時に実取引する必要はありません。比較用の仮想記録と実取引を明確に分けます。仮想約定に使った気配、数量、時刻、費用の前提が粗ければ、その結果の信頼性も限定されます。

高値に届いたら買えたとしない
買い指値と同じ価格がチャートの安値に出ても、自分の数量が成立したとは限りません。先に並ぶ注文や、その値段で成立した数量が関係します。足の高安だけから全量成立を仮定すると成績がよく見えやすくなります。
実取引では自分の約定履歴を使います。過去検証では、接触を約定とみなす簡略化なのか、注文待ちを考慮したものなのかを明記します。精密に見える小数点を増やしても、約定の前提が粗ければ精度は上がりません。
約定の可否が不明な例は、成立と不成立の両方で合計がどう変わるかを見る方法もあります。都合のよい解釈を一つだけ採用するより、結論がその不明点へどれほど依存しているかを確かめられます。
一部約定を一件へ押し込まない
200株の予定に対して100株だけ買えた場合、全量成立の取引とは負担が違います。一部でも成立した件数と、予定数量に対して成立した株数の比率を別に残すと、入口の実情が見えます。
たとえば10件すべて200株を注文し、4件で100株ずつ成立したなら、件数の約定率は40%、数量の成立率は400÷2,000で20%です。40%参加できたという表現だけでは数量が半分だったことが隠れます。
部分的に買えた後で残りを追ったなら、それは待つ指値だけの方法ではありません。追った価格と数量を含む混合ルールとして記録します。結果のよい取引だけ最初から全量買えたことにしないことです。
未約定の終了時刻を固定する
五分待って成立しなかった注文と、その日の終わりまで待った注文は同じ方法ではありません。成立率を上げるために期限を延ばすと、別の時間帯や相場状態へ参加する可能性があります。
価格が上がった候補だけ注文を追い、下がった候補だけ期限を延ばすなら、条件の変更を記録します。最初の指値が有利だったという分析へ、途中の裁量を隠して混ぜないようにします。
期限到来時は注文状態を確認します。取消依頼の後に成立する場合もあり得るため、ボタンを押した時刻ではなく、取消結果と約定結果を照合します。未約定という分類自体も、最終状態で決める必要があります。
機会損失は実損ではない
買えなかった候補が後に一万円分上がっても、口座から一万円減ったわけではありません。これを実損益へ引くと、同じ資金で全候補に参加できたかという制約も消えてしまいます。
比較用には「別の入口を使い、指定の出口で終了したなら」という条件付き損益を作れます。その際、買値だけ成行へ変えて、出口は高値で都合よく選ばないことです。入口と出口の両方を先に決めます。
実績欄、仮想比較欄、未約定後の経路欄を分けておけば、悔しさと検証を区別できます。未約定をなくすこと自体を目的にすると、価格を追い過ぎて、元の入口条件が消える恐れがあります。
候補が重なる場合の資金制約
二つの銘柄が同時に条件へ入り、一方しか持てないなら、採用順を決めます。過去検証で両方のよい結果を足し、実取引では一方しか選べなかったという比較は公平ではありません。
成立が遅い指値では、待っている間に別の機会へ余力を使えない場合もあります。実際の拘束条件は口座で確認し、同じ資金を同時に何度も使ったことにしないようにします。待機時間も注文方法の性質です。
だからといって待機時間へ一律の金額を付ける必要はありません。まず、何件見送り、どの注文が余力を使い、何時に解放されたかを残します。測れる事実と、後から付ける評価を分ける工程が先です。
一覧表の作り方
一行を一つの条件成立にします。時刻、銘柄、条件、発注したか、指値、期限、予定数量、成立数量、実損益、見送り理由を並べます。実約定がない行も消さないのが、この表の特徴です。
注文を分割した場合も候補番号を共通にして、注文件数だけが増えて候補数まで増えないようにします。同じアイデアへ三度注文を出したことと、独立した候補を三件見つけたことは違います。
月末には候補数、発注率、件数と数量の成立率、合計実損益、同時保有の制約を確認します。平均買値だけの評価から一歩進み、安く待つ方法が何を得て何を見送っているかを具体的に説明できます。
一件平均がよくても合計が小さい例
別の架空例では、方法Cが2件だけ成立して合計2,000円、方法Dが8件成立して合計4,000円だったとします。成立一件当たりはCが1,000円、Dが500円なので、平均だけならCが上です。
同じ候補10件へ適用した場合、候補一件当たりはCが200円、Dが400円です。対象を絞る方法の効率と、条件全体から得られた金額では順位が変わります。どの指標が正しいかではなく、答える問いをそろえて比較します。
ただしDは取引が多く、管理時間や同時保有も増えたかもしれません。利益だけでなく必要資金、注文回数、最大の保有負担を並べます。候補平均が高いだけで、自分へ実行可能な方法だとは限りません。
未約定後の価格は固定の時点で調べる
買えなかった候補のその後を調べる際、最も高くなった時点だけを抜き出すと、大きな機会ばかりに見えます。例えば条件成立から五分後、あるいは事前に定義した終了条件までなど、同じ区間を使います。
期限までに一度下落してから戻った経路と、指値へ戻らず上がった経路は違います。安値、高値、終了時の値、順序が分かるならそれも残します。上がったという一語だけでは、注文が成立しなかった理由は説明できません。
発注後の値動きを見て期限を延ばした候補は、元の期限の結果と変更後の結果を分けます。変更の有無を残さないと、成立率を上げた効果なのか、別の相場へ参加した効果なのかが分かりにくくなります。
原因を一つずつ変更する
指値を一円上げ、数量を減らし、期限も長くするという三つの変更を同時にすると、何が成立率へ効いたか判断しにくくなります。検証では比較したい要因以外をできるだけそろえます。
一円上げた場合の計画損失と目標利益も再計算します。成立件数が増えても、一件の採算が下がる可能性があるからです。約定率を最大にすることではなく、費用と負担を含めた全体の設計を考えるのが目的です。
新しい条件は次の観察期間へ固定して試します。過去の結果を見ながら各候補へ都合のよい指値を選ぶと、実際には使えない方法が完成します。選定に使った期間と、確認の期間を分けておきます。
実績と比較を同じ色にしない
一覧を図へする場合、実約定の利益と仮想方法の利益を同じ系列へ足しません。凡例へ実績と仮定を明示します。買えなかった候補の後日高値を、実際に残せた利益のように見せないためです。
比較の条件へ必要な数量や気配が不明なら、不明の件数も表示します。分かる例だけを集めた表が、もとの候補全体を代表するとは限りません。特に約定しにくい場面ほど情報が不足していないかを点検します。
分母にする候補の総数を固定しておけば、比較の途中で行を消したことにも気付きやすくなります。実際の損益、仮想結果、情報不足の三つを分け、空欄を都合のよいゼロや利益へ自動的に置き換えないことです。
不明な候補を残すことも、検証結果の一部です。
まとめ
指値の評価では、成立した取引だけでなく、最初にどの候補を対象にしたかを残します。未約定を損失へ置き換えるのではなく、候補、発注、約定、実損益を別々に数えることが、都合のよい成績を作らないための基本です。
指値の基本を確認する
価格優先と時間優先、指値と成行の違いは取引所の説明を参照します。本文の成立件数と利益は検証の方法を示す架空例です。


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