歩み値が急に速くなった場面は注目を集めますが、約定回数が増えただけでは上昇・下落の方向は分かりません。重要なのは、一定時間の約定量に対して価格がどれだけ進んだかです。本稿では約定速度、価格反応、板の補充を組み合わせ、加速に追随すべきか、吸収を疑うべきかを判断します。
約定速度を定義する
目視の「速い」を数値へ変えます。10秒間の約定件数、約定株数、売買代金を記録し、過去20日の同時刻中央値と比べます。通常10秒で12件・3,000株の銘柄が、40件・1万2,000株なら件数3.3倍、株数4倍です。小口注文の連打と大口約定を区別するため両方を使います。
価格効率を測る
10秒で1万株約定して価格が10円進めば、1,000株当たり1円です。同じ1万株で2円しか進まないなら反対注文に吸収されています。値動き÷約定株数を価格効率として比較します。絶対値は銘柄で違うため、直前5分や過去中央値との倍率を使います。

買い約定と売り約定
買い気配を取る約定が増え、売り板が切り上がり、価格効率も高ければ上方向の参加候補です。買い約定が多いのに価格が進まず、同価格へ売り板が補充されるなら吸収の可能性があります。約定方向だけで買わず、気配の移動を確認します。
具体例
抵抗2,500円付近で20秒に2万株の買い約定が発生し、高値2,503円、終値2,501円だったとします。通常の4倍でも維持幅は1円です。次の20秒で売り約定8,000株により2,494円まで下がるなら、買いの効率より売りの効率が高く、突破追随を停止します。
株数計算
買い2,506円、無効化2,496円、急変時の滑り3円なら実効13円です。許容損失9,000円÷13円=692株なので600株です。約定速度が高いことを理由に数量を増やさず、急変時ほど滑り見積もりを大きくします。
時間帯基準
寄り付きと大引けは平常から速いため、昼前と同じ基準を使えません。9時台、前場中盤、後場、大引け前に分けます。寄り付きの毎秒約定を昼の基準で異常と判断すると、ほぼ全てがシグナルになります。
見送り条件
スプレッド拡大、板3本累積の急減、特別気配明け、材料未確認、次の抵抗まで1R未満なら見送ります。速い市場ほど画面の表示は古くなりやすく、許容価格付きの指値や株数縮小を優先します。
速度低下を退出へ使う
エントリー後、買い約定速度が4倍から1倍へ戻り、価格も高値を更新できなければ追加を止めます。VWAPや直近押し安値を割れば退出します。速度低下だけで全量を売らず、価格構造と組み合わせます。

検証記録
時刻、10秒件数、株数、売買代金、価格変化、価格効率、スプレッド、板補充、30秒後価格を保存します。速度倍率を1未満、1〜2、2〜4、4以上に分け、価格効率との組み合わせ別に平均Rを比較します。
まとめ
約定速度は方向ではなく参加の増加を示します。件数、株数、価格効率、板の補充を分けて測り、速いのに進まない吸収と、速さに価格が応答する加速を区別します。時間帯別の基準と滑り込みの株数計算を使えば、点滅する歩み値へ反射的に飛び乗る取引を減らせます。
リアルタイム運用の手順
寄り前に候補銘柄の通常10秒約定株数、通常スプレッド、直近1分出来高をメモします。発注中に基準を調べ始めると相対評価ができません。抵抗へ近づいたら10秒窓を三つ連続で記録し、一回だけの急増か継続的な加速かを分けます。最初の窓が4倍、次が0.8倍なら一過性です。
価格効率は上昇時と下落時を別々に計算します。買い約定1万株で5円上昇した直後、売り約定4,000株で8円下落したなら、売り側の少ない数量で価格が大きく動いています。表面的な買い約定量より、板の空洞と売り効率を警戒します。方向ごとの効率比を記録すると判断が安定します。
部分約定も重要です。600株の指値に対し100株しか約定せず価格が走った場合、追い掛けて残りを成行にすると平均価格が悪化します。未約定を取消す価格、追加を許す最大価格、注文の有効秒数を発注前に決めます。機会損失を避けるために許容損失を増やさないことが大切です。
ニュース直後は約定速度が通常の十倍になり得ますが、配信遅延や特別気配で観察値が役立たない場合があります。材料の内容を確認できず、スプレッドが平常の三倍を超えたら見送るという単純な制約を設けます。速い場面ほど分析項目を増やさず、取引しない条件を明確にします。
週次レビューでは、加速を追った取引、吸収を見て見送った取引、速度低下で縮小した取引を分けます。約定後30秒・1分・5分の価格、平均滑り、最大順行幅を比べます。勝率だけでなく、速度条件を追加したことで取引回数と平均Rがどう変化したかを確認します。


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