先物が現物より高いのは強気だから?ベーシスとキャリーの分解方法

現物価格と先物価格のベーシスを表す市場概念イラスト。AI生成。 先物

株価指数先物が現物指数より30ポイント高い。「先物トレーダーが強気だから」と説明するのは早い。満期までの資金調達費用と、現物を持つことで受け取れる配当の差でも、先物と現物には理論的な価格差が生じる。

先物価格から現物価格を引いた差を、ここではベーシスと呼ぶ。商品の種類によって保管費、利息、配当、便益などの要因が違うため、プラスかマイナスかだけで方向感を判断しない。

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指数先物の簡略計算

現物指数4,000、満期まで90日、年率の資金調達費用4%、同期間に相当する配当利回り2%とする。単利の簡略例なら、純キャリーは4,000×(4%−2%)×90÷365≒19.73ポイント。理論先物は約4,019.73となる。

実際には金利や配当の期間構造、配当落ち日、複利、税、取引費用などを合わせる。ここで重要なのは、先物が現物より約20ポイント高くても、直ちに割高や強気とは言えないことだ。

現物4000に資金調達費用を足し配当を引いて理論先物4019.73を求める図
指数先物の簡略例。資金調達費用と配当の差がベーシスを作る。

観測ベーシスから理論キャリーを引く

市場の先物が4,025なら観測ベーシスは25。簡略理論ベーシス19.73との差は約5.27ポイントである。この差を見て裁定を考える前に、現物バスケットの売買スプレッド、先物手数料、借株、追随誤差、証拠金資金を加える。

往復費用等が合計7ポイントなら、5.27ポイントの差は利益にならない。理論価格を一点で表示しても、実務では売買可能価格から作る上限と下限があり、その帯の中では裁定余地がないことが多い。

満期が近づけば時間価値は縮む

他の条件が同じで残存30日なら、簡略キャリーは4,000×2%×30÷365≒6.58ポイントとなる。90日の19.73から小さくなり、満期では現物と先物の決済基準へ収束する。

ただし、現物指数の公表値と先物の最終決済値の算出方法が違えば、日中の画面で完全に同じ数字になるとは限らない。収束という理論と、どの時刻のどの指数を使うかを分ける。

残存90日では19.73ポイント、30日では6.58ポイントへ理論ベーシスが縮む比較図
同じ金利差でも満期までの日数が短いほど、時間価値による差は小さくなる。

商品先物では保管費と便益が加わる

金属やエネルギーの現物を保有するには倉庫料、保険、品質管理などが必要になる。これらは先物を現物より高くする要因になり得る。一方、現物在庫を持つことで生産を止めずに済む便益は、単純な金融費用とは逆方向に働く。

商品の先物曲線が右上がりだから将来価格の予想が上昇という意味ではない。保管と資金の条件を反映した価格でもある。受渡場所や品質が違う現物価格を先物と比べると、輸送差までベーシスへ混ざる。

FX先物では二通貨の金利を見る

通貨先物では、一方の通貨を保有して得る金利と、もう一方を調達する費用の差が価格へ入る。どちらを基準通貨とする表示かで、プレミアムとディスカウントの見え方も逆転し得る。

スポットが1ドル当たり何円か、先物が1円当たり何ドルかを混ぜて差し引かない。必要なら逆数へ直し、同じ受渡日・同じ表示方向へ合わせてからベーシスを計算する。

ロール収益と現物の値動きを分ける

期近4,000から期先4,040へ乗り換えると、40ポイント高く買い直す。この差を直ちに40ポイントの損失とするのも単純化しすぎである。二つの限月は残存期間が違い、翌日から別のキャリーを持つ。

運用成績は、先物価格そのものの変化、ロール時の限月差、担保収益、費用へ分解する。同じ現物指数が横ばいでも、先物曲線とロール規則で結果は変わる。

実務チェック

同じ指数でも限月が違えばベーシスは違う。期近4,010、期先4,035、現物4,000なら、各ベーシスは10と35である。期先が25ポイント高いことを上昇予想と決めず、二つの満期までの追加日数に対応するキャリーと比較する。ロールではこの限月差を継続的に記録する。

配当予想が年率2%から3%へ上がれば、他条件一定で理論先物は低くなる。市場先物が動かなくても、モデル上の割高・割安は変わる。したがって理論差の履歴には、使った金利と配当予想の版を保存し、後日修正値で過去の判断を書き換えない。

現物を指数値どおりに買えるとは限らない。構成銘柄の売買単位、税、配当の受取時期、リバランス、貸株制約がある。表示上5ポイントの裁定差でも、実際のバスケットを組めない投資家には、単なる価格差である。

ベーシスを記録するときは、現物価格の時刻、先物限月、残存日数、金利、予想配当、乗数、通貨を一行に置く。別時刻の価格を引くと、市場変動をベーシスと誤認する。

理論との差を売買する前に、実際に現物を組成・借入・保管・決済できるかを確認する。ベーシスは「先物が強気か」の一語ではなく、資金と受渡しの条件を価格へ翻訳した数字である。

参考:CME Group:株価指数先物のベーシス、CME Group:FXの現物・先物価格。

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お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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