シャープレシオは平均と標準偏差へ情報を圧縮するため、歪みや厚い尾を持つ戦略の違いを十分に表せない。オメガ比は目標収益率を境に、上側の期待超過と下側の期待不足を比較する。
勝率が高く時々大損する戦略と、低勝率で大きく勝つ戦略を分布全体から評価できる。
計算
目標0%に対し、プラス部分の平均合計が4、マイナス部分の絶対合計が2ならオメガ比は2である。1超なら上側面積が下側を上回る。
確率分布の累積関数を使う定義と、標本でmax(r-L,0)を合計する計算は対応する。
図解

閾値の意味
目標Lを0%、無リスク金利、月1%へ変えると値は大きく変わる。投資目的に合う一つを事前に決める。
異なるLの曲線を示せば、どの目標で戦略順位が逆転するか分かる。
外れ値
一度の巨大利益で分子が膨らみ、一度の暴落で分母が急増する。ブートストラップ信頼区間と、最大損益を除いた感応度を示す。
外れ値を都合よく削除せず、イベントとして説明する。
戦略比較
平均月次1%で同じでも、Aのオメガ1.8、B1.2ならAが目標超過面積で優位。ただし流動性と最大DDは別途必要である。
オメガ最大化だけでは過剰最適化になるため、期間外評価と費用控除を行う。
比較

検証
実務検証では、設計期間と評価期間を分け、未来のデータを計算条件へ混ぜない。取引費用、未約定、データ欠損を含め、利益例だけでなく失敗した期間を保存する。
運用開始後は推定値と実績の差を月次で監査する。誤差が想定の二倍を超えた場合は閾値を都合よく変えず、利用を停止して入力と前提を点検する。
データを作る手順
対象銘柄、観測頻度、調整価格、欠損処理、計算窓を分析前に固定する。現在残る銘柄だけでなく、当時の上場廃止や取引停止を含む母集団を使い、生存者バイアスを避ける。
指標の算出日と売買可能日を分け、終値で完成する値を同じ終値で取引したことにしない。翌営業日の始値または一定時間後の気配を用いる。
推定誤差を表示する
点推定だけでランキングを作らず、ブートストラップや期間分割で信頼区間を作る。値が高くても区間が広い銘柄は強い判断材料にしない。
20日、60日、250日など複数窓で符号と順位が維持されるか確認する。最も成績が良い窓だけを後から選ばない。
具体的な資金管理
資産1,000万円、一取引の損失予算を0.5%の5万円とする。ストレス時に5%逆行する可能性があるなら、理論上の建玉上限は100万円である。指標が良好でも損失予算を超えて増額しない。
複数銘柄が同じ市場要因へ反応する場合、個別上限を単純合計しない。危機時相関を高く置き、同時損失を計算する。
費用後バックテスト
手数料だけでなく、買いは売気配、売りは買気配を使い、注文参加率に応じた滑りを追加する。未約定をゼロ損益として捨てず、評価時点価格との差を機会損失にする。
費用前で有意でも、費用後期待値がスプレッド推定誤差より小さければ運用候補から外す。利益率と同時に回転率、容量、最大ドローダウンを示す。
アウトサンプル評価
前半期間で閾値と計算方法を決め、後半期間へ固定適用する。後半が悪いから条件を追加する場合、その改良はさらに次の未使用期間で評価する。
上昇相場、下落相場、高ボラ、低ボラで結果を分ける。特定局面だけで機能するなら、その局面をリアルタイムで識別できるかも検証する。
運用停止ルール
直近20回の費用後期待値がマイナス、推定誤差が想定の二倍、データ欠損が許容値超過のいずれかで新規利用を停止する。
停止中に損失を取り戻すため建玉を増やさない。再開条件は次の完全な評価期間で事前基準を満たすこととする。
確認チェックリスト
- 定義と単位を明記したか
- 利用可能時刻を守ったか
- 外れ値を恣意的に除いていないか
- 信頼区間を確認したか
- 費用と未約定を含めたか
- 停止条件を事前に決めたか


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